STORE2 迅 壱赫(いっかく)疾風(アエーマ)

「さて、運ぶにはどうしたらいいかな〜」


 アベルは困っていた。この人の武器(たぶん刀)もあるし、薪もあるから運び方に困る。とりあえずソリを持ってきているからそれで薪を運んで、この人はおんぶすればいいかな。

「よし、そうなったら。この人を持ち上げてっと。よいしょって重!?」

 ありえないくらい重たい。薪20本よりも重いってどんだけだよ。そもそも重たい理由はなんだ?

「あ、この武器か。」

 武器というのは業物ほど重たいと聞いたことがある。となればこれはかなりな業物だと思う。でもこいつこれを持って山を登ったのか。それだけでもかなりすごいな、こいつ。

「そうなるとこいつが助けを呼んだ理由が分からないな。これを持てるほどの実力があるのに。」

 とりあえず目が覚めてから聞けばいいと思い、家に向かうこととした。色々聞かせて貰おうっと、質問大量にあるし。まずは名前からだな!(なんて当たり前のことを.....)


 その時、後方からとても強い圧をアベルはいきなり感じた。

「なるほどな、それはこいつが助けを呼ぶわけだ。」

 後ろにいたのは二等星獣のロスケロースという一角獣だった。こいつは雪山に適するために体が厚い毛皮で覆われていて、角には冷気が帯びている。見たものは恐怖よりも神々しいという感想が先に出るので「雪山の守り神」という別名も持つ。

 普段は大人しいはずなんだけど、こんなに怒っていて、この時期という所から考えるに......

「お前赤ちゃんがいるのか。」

 この冬の時期になるとこいつは赤ちゃんを産む。1頭につき1匹しか生まれないため、かなり警戒心が高くなる。特にこいつの領域内に入ると狂ったように追いかけてくる。

「つまりこの人はこいつのこの習性を知らずにこいつの領域に入ったというわけか。通りで雪崩も起きるわけだ。」

 そう結論づけたのはいいものの、こいつから逃げるのは無理だ。そうなると、こいつが自主的に逃げてもらわないと帰れないか。

 星獣は賢いもので自分よりも強いと思うと戦闘を仕掛けることはなくなり、逃げていく。そのため、威嚇のために大技を出すのが1番穏便に済ます方法と言われている。(大技を出す時点で穏便とは言い難いけどな)


「と、するならば。こっちも武器を取り出さないとな。」

 腰の鞘からバスターソードを取りだし、背中の人をソリに乗せ、遠くに置く。

 すると戦闘になるとわかったのかロスケロースも角に強い冷気を帯びて戦闘体制に入った。

「悪いが長い戦闘をするとあの人が凍えてしまうからな。早めに終わらせるぞ。」

 右足を引き体を右斜めに向け刀を右脇に取り、剣先を後ろに下げて構える。剣に体の血管の一部が通っているとイメージし、剣と体を一体化させ、集中する。


「迅 壱赫(いっかく) 疾風(アエーマ)」


 剣が緑色に光り、風よりも速いスピードで一直線にロスケロースに向かった。足の間を雪でスライドしながらくぐりぬけお腹の厚い毛を一部切り、通り抜けた。

 素早く移動し、地面の雪が少し舞った。これによってロスケロースは怖気付き、帰ってくれた。


「ふ〜。1件落着だな。ほんと、雪の守り神って言われてるなら雪山に住んでる人に攻撃しようとするなよ。」

 俺は武器持っているから何とかなったが持っていない小さい子供は危ないだろ。今度、なんか対策してもらおうかな。村の人に。

 これで危険は無くなったからソリの所に行き、人と薪、そしてとてつもないほど重い武器を運んだ。


「ほんとなんでこの人はこれを持って山を登れるんだよ!」

 また不安を言いながら家に帰った。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る