待ち人

雨が降る

久しぶりに

雨が降る


こんな日に限って

雨が降る


待ち人は来ない

冷たい雨


誰も喋らない

寂しい雨


灰色のビル群

隙間から吹きつける風


横殴りの雨が

ぼくに語りかける


凍える指で傘を持ち

雨の声に耳を傾ける


待ち人は来ない

待ち人は来ない

待ち人は来ない


頭を垂れる人の列

傘の上では踊る雨粒


車輪が水たまりを引き裂いた

か細い雨


街の風景は遠くなった

銀色の雨


橋の上から

空を見渡す


空と街の境界線が

わからなくなる灰色の世界


ぼくはただ

身を震わせながら

じっと待つ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る