第16話 大先輩の誕生日LIVE❷

とりあえずその個室とやらに来てみたが、予想以上に広かった。まるでホテルの一室かの様に充実した設備が整っている。


とりあえず俺は椅子に腰掛け、スマホを開く。 そういえばこの前蓮夜さんに教えて貰った切り抜き動画なるものを見てみようかな。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー回想


蓮夜『そういえばさ、和人君は切り抜き動画とか見たりするの?』


和人『切り抜き動画......? 見た事ないです。』


蓮夜『へぇ、そうなんだ。暇があったら是非見てみると良いよ。長い配信の面白いとこだったりを切り抜いて、短時間で見れる様にしてくれるから時間があまり無い人には便利だよ。』


和人『そうなんですか.... 分かりました。今度時間があれば見てみます。』


ーーーーーーーーーーーーーーー回想終了


和人『じゃその切り抜き動画とやらを見て時間を潰すとしますか。』


そこからは切り抜き動画をとりあえずおすすめに出てきたものを片っ端から見てみた。そして気づいた時にはもう19:10になっていた。


和人『はは、恐ろしいな。切り抜き動画...... ここまで時間を奪ってくるとは、、まぁ良いかとりあえずもう行こう。』


そう言って椅子から立ち、個室から出て収録場所へ向かう。


蓮夜『お、来た来た。これ付けといて。』


そう言われて渡されたのは、今では見慣れたVR機器だ。こんなので自分のアバターが自由自在に動いてくれるのだから驚きだ。そして目の前には高そうなマイク。


和人『俺の時間まで後何分です?』


蓮夜『もう、後1分後に君の出番が来るよ。心の準備や身体の準備とかしといた方がいいよ。』


和人『分かりました。』


あれ、そう言えば俺が歌う曲って何だっけ、歌詞やダンスの方はほぼ確実に出来るし歌える状態だが、肝心な曲名が思い出せない。

この後の絡みはアドリブとか言われてるし、俺だけ何か扱い適当だな。


和人『あの、すいません。俺が歌う曲の名前何でしたっけ?』


その問いに蓮夜さんの代わりにスタッフの方が答えてくれた。


スタッフB『K○NGだよ。』


和人『あ、ありがとうございます。』


そう言われて、やっと思い出した。そうだK○NGだ。ホントは椎名さんが一人で歌う筈だが、そこに俺が急遽参戦して二人で歌うという流れ..... あれ?これって裏で打ち合わせとかしてないとまずくないか?色々失敗しそうな気がするが.....


そんな考えが頭の中を過り、蓮夜さんの方を向くと何故かニコニコ笑顔でこちらをずっと見ていた。


ま、まぁいいか。何とかなるだろ。


そんな訳で20分になったのであった。


◇(※ここからは視聴者目線にて)


椎名『てことで、次の曲はKINGです!』


と、椎名は大きな声で言いながら歌おうとしてると、突如聞き覚えのある声が聞こえてきた。??『ちょっと、椎名先輩歌うの待ってください!』


[なんだ、なんだ。]

[あれ、この声は.....]

[聞き覚えある声だな]

[急になんだよ。]

[???]

[??????]


そんな声と一緒に LIVEのステージに出てきたのは最近VLIVE5期生としてデビュー男ライバーの、確かラルクとかいう奴だった筈だ。


椎名『え、え!?ラルクくん!?』


椎名はとても驚いてる様だった。打ち合わせとかしてる訳じゃないみたいだな..... てかまず何だこいつは急に割り込んできて、 何の意図も無しに乗り込んできてることは流石に無いと思うが......


ラルク『てことで、椎名先輩初めまして、V LIVE5期生としてついこの間デビューさせて貰ったラルクと申します!今回突然 LIVE中に割り込んでしまってすいません!これにはかなり深い深い訳があるのですが..... あまり時間も無いみたいですし歌いましょう!K○NG!』


椎名『え、えぇーーー!?ちょっとまって!状況に頭が追いつけn)))『てことで歌いまーす!さぁ椎名先輩!』


椎名『う、うーん。もう良いや!どうにでもなれー!てことで、ラルクくんと歌います!K○NG!聞いてください!』


[何か色々すげぇ流れだなw]

[見た感じ打ち合わせをしてるって訳じゃなさそうだし、ラルクは何してーんだ?]

[そういえば今日ラルク、配信しない代わりに何かありますってツイートしてたよな。それじゃね?]

[いやだから、これをする理由は何だよって聞いてんだよ。]

[いや、そんなん俺に聞かれてもw]

[てか、ラルク来てから同接の増え方エグすぎやろw さっきまで45万だったのに、一気に76万まで上がったぞw]

[ホントだ。えぐw]


そして曲がかかる。


その後はラルクと椎名の歌声に誕生日LIVEは凄い盛り上がりを見せるのであった。スパチャというスパチャが飛び交い、VLIVE史上一番の大盛り上がりを見せた誕生日LIVEとなった。


椎名『ところで、何で今回突然参戦してきたんですか?』


椎名がラルクの事を見つめながら聞いている。


[確かに]

[めっちゃ気になる]

[二人の歌声が素晴らしすぎて、そんなのどうでも良くなった。]

[それはある]

[マジ凄かった。]


ラルク『それはですね...... 実はこれは神崎社長のご意志でして.....』


椎名『え!?しゃ、社長の!?VLIVEの!?』


椎名はかなり慌ててる様だった。しかし社長の意志とは..... どういう事だろうか?社長がラルクにいきなり LIVEに参戦してくれと頼んだのか?どういう意図なのか全く分からない。


ラルク『そうです..... 実は社長からはこの件に関してはサプライズにしたいからと、椎名先輩には黙っておいて欲しいって言われたんですよ。だから急遽参戦って訳になったんです。とりあえずすいませんでした。いきなり割り込んで......』


そう言ってラルクは頭を下げる。


[あれ、こんな真面目キャラだったけ?w]

[お、俺は知らないぞ、こんな綺麗なラルク]

[てかラルクマジで歌上手いよな。Vtuberなんてやってないで、何か歌手とかなれば良いのに。]

[ガチそれな。]

[お前らラルクの話ばっかだか、椎名も負けてねぇぞ。普通にラルクと同じぐらい上手かったし。]

[それな。普通に椎名上手いよな。前から思ってたけど。]


椎名『い、嫌、ラルクくんが謝る必要は無いです!悪いのは社長なんですから!そ、それにラルクくんと二人で歌えて嬉しかったですし.....』


ラルク『そ、そうですかね?そう思って頂けてるなら嬉しいです!』(ニコッ)


[グハッ]

[な、なんだこのギャップは!?]

[かっこいい時との差がひどい]

[勿論いい意味でだろ?]

[当たり前じゃないか.....]

[マジでこれで何人の女堕としたんだよ。]

[男の俺でも惚れそうになったわ。]

[これはVLIVE、1の伸び率と言われても納得し得ざるを得ない。]

[VLIVEのライバーのほとんどがこの LIVEに集まってて草]

[チャット欄豪華すぎやろ笑笑]


椎名『あ、あ/// そ、それにしても!ラルクくんの3Dアバター初めて見ました!何気に私のこの誕生日 LIVEがお披露目初めてなんじゃないですか?』


和人『そういえば、そうですね。椎名先輩の誕生日 LIVEが初かもしれないです。てか3Dアバターって何か良いですね!いつもの2Dの方とは違って、何か..... 良いです!(笑)』


椎名『そこは何か言ってくださいよぉ〜(笑)』


[何も言わないんかい笑笑]

[そこは何か言えよ笑笑]

[俺ラルク見た事無かったけど、これを機に見てみようかな]

[俺も]

[俺も]

[優しい世界]

[ご都合主義の間違いやろ]

[ラルクはな○う系の主人公だった!?]


その後は軽いラルクと椎名の雑談が続き、次の歌の時間が迫ってきている為、ラルクは退場していった。


椎名『嫌ぁ〜、突如ラルクくんが参戦してきた事にはびっくりしましたねぇ〜。てことで次の歌に早速いっちゃいましょう!』


◇(和人視点に戻る)


和人『はぁ、終わった。』


蓮夜『嫌ぁ〜、和人くんお疲れ。』


そう言って、蓮夜さんが近づいてくる。


和人『もう誕生日LIVEなんて懲り懲りですよ。』


蓮夜『ホントにそう思ってるのかな?』


.....?


和人『どういう意味ですか?』


蓮夜『顔にやけてるよ。自覚ないの?』


え.....?そう言われて俺は気づく、自然と顔がにやけていたことに.....


何故俺はにやけていたんだろう......



段々と俺は..... 和人という人間は変わり初めていた。

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