第3話 デビュー前

合格通知が来てから、大体2ヶ月ぐらいが経過した。それで祥子さんから聞いのだが、俺がが入るVtuber事務所の名前は【VLIVE】というらしい。俺が事務所の名前を知らない事を祥子さんは凄い驚いていた。世界に6000万人以上のファンを抱えているようで、ニュースなどにも出ている事から知らない人はあまりいないというのが祥子さんの見解の様だ。だが興味が無かったので、それ以上は適当に聞き流していた。


2ヶ月間の間はマネージャーの人と色々な打ち合わせをしたり、直接会い話すこともあった。だがこれも勿論自分から進んでやった訳でも無く、ネット上での打ち合わせの時は母が勝手に受け答えをして、通話での時は強制的にやらされた。

そして直接会う時も面接の時と同じように気づいたら車の後部座席に座らさせており、そのまま待ち合わせ場所に置いてかれるという事が沢山あった。


マネージャーの人は男の人だった。THE・陽キャって感じの人でスラリとした高身長イケメンといったところだろうか。何でVtuber事務所で働いているのか分からない。この人ならもっと良い職に就けると思うのだが。ちなみに名前は鏡蓮夜(かがみれんや)というらしい。


それで何回か直接会って打ち合わせをする時、少しだけ気になる事を聞いた。どうやら俺はVLIVE初の男性ライバーらしく、俺以外は全て女性らしい。こういう女性Vtuberしかいない事務所のライバーの視聴者層にはガチ恋勢という人達が多くを占めているらしく、スーパーチャット、いわゆる投げ銭機能というものを多くしてくれるのがその人達らしい。その人達は基本的に女性ライバーが男性ライバーと関わる事を良く思っていない様で、少しでも男性と絡む事があるとすぐ炎上するのだとか。


とここまで、長い説明をしてきた訳だが、正直何故わざわざ事務所側が人気を落とすかもしれない様な真似をして俺を採用したかだ。聞く分には今でも十分儲かってるらしく、わざわざ人気を落としてまで、俺を採用するメリットは100%ない。そこが唯一分からない点だな.....


蓮夜『っていう的な事今考えてたしょ?』


と、そのサングラスの奥にある紅い瞳で俺を見ながら聞いてくる。この人の目を見てると全てが見透かされる気がする。


まぁ俺の心の奥を覗かせる気はないが。


和人『何で、分かるんですかね。』


蓮夜『さぁ、何でだろうね?(微笑) けどさ、一つだけ覚えておいて欲しいのは、君は自分の才能に気づいた方がいい。今まで仕事で色んな子を見てきたけど、君みたいな..... 和人君みたいな子は初めてだよ。』


と、一呼吸置いてから蓮夜さんはまた話し始める。


蓮夜『欠点という欠点が無いのさ、和人君は。まぁ唯一あるといえばその無気力な性格だが、それを抜きにしても和人君は才能に満ち溢れているよ....... 人は生まれつき何か才能を持っている。無い人なんていない。何も上手くいかない人は自分の才能を上手く表に出せていないだけさ。分かりやすくいうと、例えば僕だったら人の心を読む才能って言ったところかな。まぁ君の心は残念ながら読めないけどね(笑)』


なるほど。俺は才能に満ち溢れてるか....... そんな事を俺に言ってくれる人がまだいたとはな。というか、蓮夜さん、マジで話が長いな。半分ぐらい聞いてなかったよ。って考えたらまた話し出した。まるでアニメの尺稼ぎの為にモブキャラがどうでもいい長い説明を話しているのを見ている様な感覚だ。


蓮夜『そろそろ話を長く感じてきた頃じゃないのかな?全然聞いてない様だし、正直僕ももう話すの疲れた。だから簡潔に言うよ。あまり自分を低く見るなよ。』


そう言って、お金だけ置いてカフェから出て行った。取り残された俺は最後の発言について考えていた。


自分を低く見るなよ....... か。


別に見てるつもりは無いんだけどな。俺はホントに.....


◇1週間後


今日は俺のライバーとして活動するにあたって、使用する身体が届く日だ。蓮夜さんには『適当で良いですよ』とか言ったが、どんなのがくるのだろうか。


そういえば初配信の件について、同期の人達とは初配信が終わり次第リアルの方で会うのだとか。だからまずは初配信を頑張れと言われた。俺は生憎配信経験というものがないので、どんな事をすれば良いのか分からないのだが、どうやら明日蓮夜さんに事務所の方に来て欲しいと言われた。多分そこで配信の時何をすれば良いのかなどを教えてくれるのだろう。


ピロン!!!


和人『来たか.....』


とりあえず開いてみると、片方が白銀、片方が漆黒の色をしている綺麗な髪に、目も髪同様の色をしている綺麗な目だ。だがその瞳は俺と同じく何を考えているかが分からない様な不気味な雰囲気を醸し出している。身長は意外と高めな感じだ。服はTHE・魔王という感じで、漆黒のローブを纏っていた。

下の説明文も読んでみると、どうやら種族は吸血鬼らしく、今は口を閉じていて見えないが、しっかりと特徴的な吸血鬼特有の歯があるらしい。他にも色んな設定があったが今は見る気にはなれなかった。


これが俺が使用する身体か.......



ピロン!!!



また携帯が鳴ったので、LI○Nを見てみると蓮夜さんから、『とりあえずTwitter垢で何か呟いとけ』と来ていた。この前Twitter垢は貰っていたので、とりあえず開いてみる。


アイコンはあの無駄にかっこよく仕上げられた立ち絵の顔で、名前のとこには『ラルク』と書かれていた。



ラルク/RARUKU@VLIVE5期生

@raruku_vlive

VLIVE所属。5期生

0フォロー 48000フォロワー


ふむ、このフォロワーは多いのだろうか。だがこの前蓮夜さんからは先輩方は100万フォロワーを超えている人も沢山いると聞いたし、多分少ないのだろう。ラルクという名前はこのまえ蓮夜さんにこれがいいんじゃないかなと言われたので、これにした。ラルクという名前は俺の白井和人という名前に何の関係性もないが、それでいいのだろうか。それともVtuberというのはそういうものなのだろうか。難しいところだ。


とりあえず挨拶ぐらいしとくか。


ラルク/RARUKU@VLIVE5期生@raruku_vlive

20XX/5/18

VLIVE5期生のラルクです。

だるいですが、初配信向けて頑張ります。

よろしくお願いします。


とりあえずこんなもんで良いだろう。ほかの同期達がどんな初ツイートしたかは知らないが、あまり捻っても良く無い気がする。


とりあえず眠気が襲ってきた為、寝る事にする。通知がうるさかったので、通知音を0にし、そのままベットに横たわり目を閉じる。

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