第18話 エピローグ 

 ゴーヤが18の誕生日を迎えた。王座に座っている彼の目の前に、ピーマン王女が立っている。

 彼女の隣に、王冠が乗っている台を抱えた召使が、そっと現れた。ピーマンが、王冠を手に取ると、ゴーヤの頭に被せた。

 「これで、あなたも王ね。」ピーマンは、ほうれい線がくっきり現れた顔で微笑みかけた。

 式典が終わると、ゴーヤは裏部屋に行き、鎮座しているクロに王冠を手渡した。

 「これで、いいですか。約束は守りました。これからは、私の自由にさせて下さいください。」クロの微笑みを見ると、ゴーヤは王のマントを脱ぎ捨て、部屋を出て行った。

 自室に戻ると彼は、旅の支度を始めた。

 服3日分、剣、母のペンダント、魔法瓶、ポーション。全て、布袋に入れると、格式ばった服を脱ぎ、動きやすい服装に着替えた。

 ゴーヤは、布袋を抱えると、ピーマンの部屋にいった。

 「あら、もう行くの?寂しいわね。」ゴーヤに気づいたピーマンがそう言った。「ええ、これは僕にしかできないことですので。また、しばらくしたら戻ってきますよ。この国の王として。」そう吐き捨てると、ゴーヤは城を後にした。そして向かう先は、前魔王城。

 彼が死んでから、魔物界では、跡継ぎ争いが続いているという。サマダの死により、伝説の魔物達も復活した。一部は、ゴーヤの中にあるので、多少は弱っているが、相変わらずの強さはあるだろう。

 ゴーヤが、魔王城に着くと、多くの魔物の残骸が転がっていた。彼が歩くと、物陰で、何が逃げるような影が見えた。ゴーヤは、それを捕まえると、それは弱そうな魔物だった。

 「ひぃ、に、人間がなぜここに。」「そんなことはどうでもいい。今、魔王に最も近い魔物はどいつだ?」「私の元ボス、リヴァイアサン様です。あなたが何をされるおつもりか、知りませんが、あの方はとっても強いです。腕試しのようなことは止したほうがいいですよ。」「どこにいる?」「前魔王様のお部屋で、千手観音と闘っておられます。」「そうか。」ゴーヤは呟くと、弱そうな魔物を撫で、城の奥へと入っていった。

 彼が、魔王の部屋に着くと、千手観音がちょうど倒された時だった。リヴァイアサンは、雄叫びをあげ、勝利を誇っていた。

 ゴーヤは勝利の余韻に浸っているリヴァイアサンを鞘で、唐突にタコ殴りにした。リヴァイアサンは、「卑怯な、我が弱っているときに。このゲス人間が。殺してくれるわ。」と怒った。それに対し、ゴーヤは、「俺はサマダの息子、前魔王の力を持つもの。貴様らが負け、いいように使われていた者の力が俺にはある。お前らには勝ち目はない。大人しくしろ。」と怒鳴った。

 リヴァイアサンは、ゴーヤの風貌に既視感を覚え、横たわりながら怯え出した。

 しばらくすると、奥から、メガネをかけた頭の良さそうな魔物が姿を現した。「これはこれは、私は前魔王の秘書をやっていたものです。あなたが噂のゴーヤ様でしょうか。人間のあなたが、一体、ここに何しにきたのですか?」「ああ、そうだとも。俺様が、あの最強の人間、ゴーヤ様だ。ニンジン国の王でもある。どうやら、魔物界は、後継争いでもめに揉めているそうではないか。」「ええ、何年も揉めておりますとも。早く、私のご主人様が見つかるといいのですが。」「俺が、今日から魔王になってやる。俺様には、魔物の力もある。いわば、半分人間、半分魔物だ。問題ないだろう。」「ああ、確かに強さも申し分ない。しかし、人間界の王でもあられるお方が、魔王なんてものもするのでしょうか?」「兼業だ。どっちもやる。平和のためにな。」

 ゴーヤがそう言うと、秘書と名乗るものがテレパシーで(新たな魔王の誕生です。)と、全魔物に伝えた。 

 「城を再建し、魔物とニンジン国に同盟を結ぶ。今、サイゴウ国は、みるみる力を伸ばしてきている。悪い噂もちらほら。国を守るため、俺はやる。」ゴーヤは、独り言を呟くと、魔王の王座に座った。


 

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

魔王を倒したので、魔王になってみた。 @konohahlovlj

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る