魔王を倒したので、魔王になってみた。

@konohahlovlj

第1話 プロローグ

 勇者サマダの剣攻撃に、魔王は悶えた。第二形態の魔王も相当弱ってきてるらしく、少し俯いたポーズをしている。

 サマダの隣には魔道士のアイと大剣使いのダイがHP切れで倒れていて、後衛術師のクロもかたひざをついている。

 サマダのMPを見れば、彼の必殺技「大凶獄殺」が2度打てる。だから、アイやオノをクロの復活魔法でわざわざ助けなくても勝てる。そう確信したサマダは、クロに自身の回復だけを求めた。クロはそれにうなづいて承知した。

 サマダの必殺技は魔王の急所にヒット、魔王は体中から光線を放ち、酷い叫び声をあげながら、爆発するように消えていった。

 サマダはクロにガッツポーズをすると、クロはニコリと笑い、すぐに倒れている二人を復活させた。

 アイとオノのHPも回復したところで、4人の勇者一行は魔王の部屋で宝探しを始めた。 

 魔王の部屋は広く、畳100枚敷けるだろうか、形としては正方形になっている。シャンデリアがデカく、豪華だ。壁には無駄な蝋燭と短剣、長剣が飾られていて、一面はガラス張りの窓になっているのだが、その真逆の一面はタンスがずらっと並んでいる。

 扉のある面の逆面には、魔王の使っていたと思われるデカい机があるのだが、意外にもそこには飾り付けが全くされていない。

 タンスを中心に探す一行だが、あまり目ぼしいものがなかった。

 不死鳥の手、魔法の葉、黄色の閃光などレアアイテムもあったが、魔王を倒した今の一行には弱過ぎた。

 しかし、こういう部屋には大体トリックが仕掛けられていて、そこにとんでもないアイテムがあるものだ。サマダは引き続き、捜索の命令を下した。

 小一時間経過したところで、オノが窓面の隅っこで変な声を上げた。サマダらは皆オノへかけ寄り、状況を尋ねた。

 「ここの床変だなぁと思ったら、回るぞ!」オノはそう言いながら、小さな床のタイルを軽く押しながら、回してみせた。

 「でかした。」 サマダとクロは、オノの肩を叩いた。早速オノは、そのタイルを今度は強く押しながら、回してみた。 

 横の大きなタイルがばこっ音を立てて、上に外れた。オノは、その大きなタイルを持ち上げると、地下通路が現れた。覗くと真っ暗で深淵を感じる。

 アイの光魔法で階段を照らしながら、一行は、降りていくことにした。下には部屋があって、倉庫のような形をしていた。

 彼女の「ライティングサンシャイン」で倉庫を真っ昼間の屋根無し部屋にしたら、一行はアイテム探しを始めた。

 するとどうだ、ここにしか手に入らないレアアイテムがてんこ盛りだった。気の明るいアイやオノははしゃぎながら、満面の笑みで見つけたレアアイテムの報告を他の3人にした。

 しばらく色々と漁っていたのだが、急にクロがサマダの背中をちょんちょんと軽く突き、「サマダさん、少しいいですか?」と小声で言った。

 アイとオノに気づかれたくない事なのかと悟ったサマダは小声で「なんだ?」と返した。すると、「とんでもない物を見つけました。魔王の日記です。で、その本に穴が空いていて、そこに真っ黒な液体が入った小瓶が入ってます。これは、確信が持てませんが、魔王の血です。この小瓶から魔王そのものの魔力を感じます。」

 サマダは仰天し、クロの顔をガン見した。

「よし、わかった。これは、危険だ。俺が預かっておこう。みんなには言うなよ、俺とお前の二人だけの秘密だ。」そう言うと、サマダは、そそくさとそれを自身のポーチに入れた。

 もう十分だろと、思えるくらいに漁った一行はニンジン城へ引き上げることにした。

 帰りの道中、魔物と出会ったが、魔王死亡の知らせはテレパシーで伝わっているのか、何もしてこなかった。サマダの指示で、数度魔物と戦いはしたが、それくらいで安全に帰路にだった。

 城に着くと、大衆の歓声、ラッパの音、ノリノリの音楽に迎えられた。王が直々に門の近くまでお出迎えをしていて、一人一人と握手を交わした。

 その後、勇者一行と王族達は、城の大部屋でご馳走を頂き、幸せな時を過ごした。

 これで、世界は平和になる。そう、皆が確信していたが、地獄はここからだった。

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