第17話

 りんごさんとの一件の後、佐藤さんのおかげで元気を取り戻した。そして、テンション上げ上げでライブに来ている。 


 盛大なライト、そして声援の中、曲のイントロと共にフルーティーセブンが出てくる。


 1番初めに出てくるのは、リーダー、そして1番人気の木下りんご。


 あー、りんごさんにご飯に連れて行ってもらって楽しかったなぁ。って、まだ地味に引きずってるし。純粋にライブを楽しむぞ!


 そして、5番目に我が推し、久保みかんちゃんが手を振りながら出てくる。


「みかんちゃーーーーーん!」


 オレンジ色のサイリウムカラーのペンライトを振る。

 やべーー。みかんちゃんだ。みかんちゃん。

 本物ーー生きてるーー

 みかんちゃんの二酸化炭素吸いてーー


 そして、最後に桃田怜。

 恥ずかしそうに小さく手を胸の前で振って登場する。

 こっちを見てニコッて笑う。


 熱気に包まれた中踊る。

 イントロが終わりすぐに始まる君のソロパート。

 俺は大好きな推しを見に来たはずなのに、ただの「友達」である一人の女の子を目が追いかけてしまう。

 誰よりも練習してるキレのあるダンス。

 誰よりも練習して手に入れた沢山の歌うパート。


 スポットライトに照らされ、汗で濡れた姿が輝いて見える。


 その時、気づいてしまった。


 今まで、ただの「友達」だと偽ってきた事に。


 やはり、自分の心には嘘がつけない。



 俺は彼女が好き。


 俺、山本響は佐藤怜が好き。


 相手はアイドルなのにな。


 だから、絶対この気持ちは悟られない。


 そっと、胸の中で押し殺す。


 そう、心に決めた。

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