恋の参考書はどこで買えますか?

裕貴

例題①

 熱気に包まれた中、アイドルグループが踊る。

 俺は大好きな推しを見に来たはずなのに、ただの「友達」である一人の女の子を目が追いかけてしまう。

 誰よりも練習してるキレのあるダンス。

 誰よりも練習して手に入れた沢山の歌うパート。


 スポットライトに照らされ、汗で濡れた姿が輝いて見える。


 その時、気づいてしまった。


 今まで、ただの「友達」だと偽ってきた事に。






 電車が動き出す。

 その時、彼が階段を上がりホームにくる。

 一瞬目があった。

 ような気がした。

 電車はガタンゴトンと彼から離れていく。

 このまま、彼とも離れて行くような錯覚に陥る。

 思わず、待っていた参考書を握りしめる。

 涙が表紙を濡らす。

 いつのまにか目頭が熱くなっている。






 やはり、自分の心には嘘がつけない。



 俺は彼女が好き。

 私は彼が好き。


 俺、山本響は佐藤怜が好き。

 私、佐藤怜は山本響が好き。


 相手はアイドルなのにな。

 私はアイドルなのにね。


 両想いになれる参考書が欲しいよ。


 恋の参考書はどこで買えますか?



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