ホモサピエンスの皆さん、ちょっと「恋愛」を舐め過ぎじゃないですかね

「恋愛なんて面倒くさい」


「どうせ僕は私は弱者ですよ。良い相手なんて出会えないし出会えてもゲット出来ない」


「そんな事より家でアニメ見てる方が気楽」


 こんな感じのご意見を現代の日本では多く見かけるようになりました。

 恋愛や結婚に対する意識がかなり多様になったというか「コストに見合わない」といったネガティブな見方をされる方が増えた印象を受けます。


 まあ確かに恋愛も結婚も、その後の家庭を築いていくのも楽な事ではありません。

 金も時間も大きく取られますし趣味に使える時間も一人の時より遥かに少なくなるでしょう。

 ましてや我が国は年々平均所得が目減りし続けている厳しい経済状態です。

 昔と違って家庭を維持するためには二人そろって働くのが今では当たり前。

 そういった情勢も相まって恋愛や結婚に対して後ろ向きな考えを持つ方が増えたとしても、それは不思議な事では無いのかもしれません。

 ですが、その上で言わせてください。


 おい、そこのホモサピエンス共。

 お前ら万物の霊長だか何だか知らねーが、自然界の恋愛を舐め過ぎなんじゃねーの?

 口を開けばやれ「自分の時間が」とか「育児めんどくせ」とか「そこまでコスト掛けて恋愛したくねーよ」とか、お前らマジで生物としてたるみ過ぎ。脳みそメタボかよ。


 いいか?

 自然界じゃ恋愛に命張んのが当たり前なんだよ。

 蛇口ひねれば水が出て、スーパー行けば食い物買えて、エアコン付ければ冬はポカポカ夏はひんやりな寝床で暮らしてる分際で贅沢言ってんじゃねえぞこの毛の抜けたチンパンジー共が。

 ちったぁ恋に命賭けてる自然界の先達たちの背中でも見て、野生と愛を取り戻せ!


 というわけで。

 本日は文明社会に慣れ親しんで野生を忘れたサピエンス共に喝を入れるべく、自然界を生き抜く生物たちの恋愛模様をご紹介していこうかと思います。

 どうぞ皆様ご笑覧いただけましたら幸いです。

 熊としても、皆様の微笑み忘れた顔など見たくありません。


 それでは早速行きましょう!

 選手入場オオォォッッ!


ケース1、タコさん♂

『勝っても死! 負けても死! 致死率100%の恋!』


 日本国民の皆様で、タコの存在を知らない方は居ないでしょう。

 八本の足を持ち、骨の無い軟体生物で、丸みを帯びた頭……に見える胴体を持つ煮て良し、焼いて良しな軟体海鮮食品です。


 彼らの姿カタチは知っていても、彼らがどのような恋をして命を繋いでいるかは知らない方も多いのではないでしょうか。

 タコのオスは繁殖期になるとメスを巡ってバトルロワイアルを繰り広げるわけですが、その戦い方がハンパじゃありません。

 腕は千切れて当たり前。時には胴体までズタズタに千切られるデスマッチ方式です。

 そんな東京ドームの地下でやってそうな凄惨な格闘戦グラップルを制したオスがどうにかメスと交尾できるわけですが……

 交尾を終えたオスはそこで死にます。


「じゃあ交尾しなけりゃ長生きできんのか」というと、そうもいかなくて。

 哀しい事にタコの寿命はかなり短く1年から2年です。

 よってタコのオスは童貞を捨てて死ぬか、童貞のまま殺されて死ぬか、もしくは一人寂しくボッチ死するかしか道は無いのです。

 だから「どうせ死ぬなら」ってんで足や胴体ねじり切るような凄惨な殺し合いをするのかもしれません。


 人生一度きりの恋に命丸ごと全額ベットした生き様は、見事というほか無いでしょう。

 軟体生物にしておくのが惜しいぐらいに骨のある益荒男たちですね。

 脊椎動物である我々人類も、この覚悟は見習いたい所です。


ケース2、カマキリさん♂

『頭なんて飾りです』


 では次はメジャー所から。

 その愛する彼女への献身っぷりは正に昆虫界のレジェンド。

 愛に生きる漢、オスカマキリさんです。


 カマキリ。

 ご存知の通り両腕がカマのような形状をした、おしりを水につける趣味を持った肉食昆虫です。

 これもまた良く知られている事ですが、カマキリのプリンセスは動いてる物はとりあえず食っちゃう肉食系女子なので、交尾中のオスカマキリも頭の近くに寄り過ぎるとかじり殺されます。


 それだけでしたら「ただのマヌケなオス」で話は終わってしまうのですが。

 このオスカマキリ、頭全部かじられても交尾を辞めません。

 それどころか身体のほとんど食われても、というか生殖器のある尾端以外全部食われても交尾をやめないそうです。

 人間で言うならオチ〇チンだけで活動してるようなものです。

 ド根性ガエルもビックリなド根性っぷりですが、さらにこのオスカマキリ、頭をかじられると一層激しく交尾にいそしむようです。


 昔、トラックの前に飛び出して「僕は死にません! あなたが好きだから!」と叫び愛を告げるドラマがホモサピエンスの間で流行っていましたが、あんなもん生ぬるいですね。

 真に恋に生きる漢なら、たとえトラックに轢き潰されてオチ〇チンだけになっても恋を諦めてはいけません。


 このアンパンマンも思わず唸る執念、恋する男子の皆さんは是非見習ってくださいね。

 口説き文句にこんなのはいかがでしょうか。

「さあ、僕の顔をお食べ」


ケース3、トコジラミさん♀

『強制切腹プレイ』


 ここまで野郎の恋模様が続いたので、次は女の子の番です。

 大体自然界の恋愛はオスが消耗品エクスペンダブルズになってる事が多いのですが、何も命張るのはオスだけではありません。

 女の子だってしっかり身体を張ってます。

 というわけでアクション映画のスタントマンも真っ青なほどに身体張った恋愛をされてる、吸血害虫トコジラミさん♀の恋模様を見ていきましょう。


 人間からすると超絶厄介な吸血害虫トコジラミ。

 カメムシの仲間で注射針のようになっている口を突き刺して動物の血を吸い、その唾液でアレルギー反応を引き起こしてかなり激しいかゆみをもたらす迷惑極まりない虫です。

 そんなトコジラミのプリンセスはどのような愛の営みをするかというと……


 相手のオスが鋭く尖った生殖器をメスの腹に直接ぶっ刺す。

 これです。


「初めてだから、優しくしてね」なんて配慮を相手に頼むだけ無駄です。

 そもそもトコジラミのプリンセスには相手を受け入れるための器官が存在してません。

 つまりトコジラミの運命の王子様は、意中のプリンセスと出会ったらいきなり刃物で腹をブチ抜こうと襲い掛かってくるわけです。


 正にハラキリファ〇ク。

 サムライスピリッツを感じずにはいられない愛の営み方ですね。

 完全にサイコパスです。


 これは「外傷性授精」と呼ばれる交配方法らしいのですが、こんな目に遭ってか弱いプリンセスの身体が無事なわけがありません。

 この時に出来た傷が原因で死ぬメスも珍しくないそうです。

 いやほんと、体張ってますね。


 ホモサピエンスのプリンセスな皆さんも「きゃーキモーい!」なんて言って非モテをケラケラ笑ってる場合ではありません。

 隙を見せたら刃物で刺される位の危機感をもって、負の性欲を全開にして逃げ回りましょう。

「この人なら刺されても良い!」そう思える相手以外に身を任せるのはやめておく、そんなトコジラミと同じ位高い貞操観念を備えるように心掛けてくださいね。

 自分の身体は大切にしましょう!


ケース4、ヒラムシさん♂♀

『本格的♂ガチムチペニスフェンシング』


 ジェンダーフリーが叫ばれる昨今、やはりこれに触れねばダメでしょう。

 生物界においても恋愛は、異性間だけで行われるものではありません。

 そして、同性同士の恋も当然のように命がけです。


 海で岩や石の下に身を潜ませる扁平生物、ヒラムシさん。

 グニャグニャとした、カラフルなわらじのような平べったい身体をしたこの生き物は、そうです。生物界のジェンダーフリー、雌雄同体です。

 彼らの生殖方法は我々ホモサピエンスから見るとかなり斬新です。

 その方法は、互いの硬く尖ったオチ〇チンでフェンシングを行い、相手の身体に突き立てた方が父親になるというものです。

 そして突き立てられた側が母親となり産卵するという実にユニークな生殖方法を取っています。

 挿すか挿されるか、互いのせいしをかけた大一番といった所でしょうか。


 そして。

 やはりこんな生殖方法を取って無事で済むわけもなく、幾度もオチ〇チンを突き立てられた個体は寿命が削られ短くなるそうです。

 それでも彼らは求め合う事は止めません。


 恋の駆け引きはいつだって真剣♂勝負。

 命を削りひたむきに愛に殉じるその気概は気高い物といえるでしょう。


 性差によって正しい恋愛正しくない恋愛なんてものは決まりません。

 同性異性問わす、あなたのひたむきな愛情は、そのひたむきさ故に歪みねえ物なのだという気概は必ず持つべきでしょう。



 いかがでしょうか。

 自然界での恋愛は皆さん命がけで、寿命をすり減らし、骨身を削り、死を賭して行っています。

 だというのにホモサピエンス共はやれ「コスト」がどうだとか損得勘定で恋愛を図り過ぎです。


 ん?

 なんですか?

「うっせえわ。こちとら損得勘定するために大脳新皮質進化させたんだよ。脳を下半身に直結させて脊椎反射で物事決めてる虫ケラ共と一緒にすんな単細胞。べん毛でも動かしてろ」ですか。


 あー、うん。

 まあ確かに他の生物と違ってホモサピエンスの恋の方程式はミレニアム懸賞問題ばりに複雑怪奇だからなぁ。


 んじゃどうしよっか。

 とりま熊のオススメのアニメでも見る?

 いやぁ、最近「ダイの大冒険」が面白くてさぁ……


ホモサピエンスの皆さん、ちょっと「恋愛」を舐め過ぎじゃないですかね……END

執筆日、2021年11月20日



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