第3話
「俺と父親はどうやら、とても似た性格をしているようなのですが。母親が俺を怒るときの定番の台詞がありまして……」
「知ってる、知ってる。“もう! あんたのそういうとこ、お父さんにそっくりでホント、腹が立つ!!”でしょ? で、そんなん言ってるタイミングでケンジの父ちゃんが帰ってきて。結局、父ちゃんが殴られるっていう」
ケンジが真顔のまま、唇を引き結んだ。
「ご存知で」
「ケンジの母ちゃんに散々、聞かされたからな。耳腐るくらい、散々」
「耳にタコ、ではなく」
「腐った。腐って、落ちた。これ、三番目の耳な。一年前よりひと回り小さくない?」
ケンジはゆっくりとまばたきすると、やっぱりソファに正座したまま。深々と頭を下げた。
「これは……うちの母が大変なご迷惑を」
言うまでもないけど大ボラだ。耳は腐って落ちないし、生えてこない。
でも、ケンジのやつは無表情過ぎて。冗談が通じてるんだか、通じてないんだか、さっぱりわからない。
「苦しゅうない。顔をあげよ」
まぁ、この際、どっちでもいいけど。
「……さっきから何やってんだよ、お前」
ため息混じりに尋ねると、ケンジは顔をあげて真顔のまま言った。
「結婚する前に言ってただろ。死ぬときは笑って死にたいって」
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