第3話 愛の教徒イベント
そんなこんなでしばらくめそめそ過ごす事に決めた俺。
クラスでは、窓際の席をゲットしていたので、割とのんびりできた。
嬉しい。
だから、授業中はぼんやり少年だ。
すみっこの席っていいよな。
目立たないし。
ちょっと船こいでても、見つかる確率さがるし。
けど、そのせいで俺はしなくてもいい恐怖を人より長く味わう羽目になったのだった。
「んげっ!」
窓の外をぼんやり眺めていた俺は気が付いてしまった。
その害虫のような存在に。
あ、これ比喩ね。
本物がいたら、飛びのくは。
でも、連中は害虫より質が悪い。
俺の目はくぎ付けになった。
窓の外、学校の敷地に入ってこようとしている、その異様な集団に。
門の所に、真っ黒な布で顔を覆った集団が、いた。
手には武器を持っている。
あ、これ原作イベントだぁぁぁぁ!
「うおっ!」
すると、奇声を上げた俺を見て、教師が「どうした?」と尋ねてきた。
いま、数学の授業中。
神経質そうな教師が、自前の眼鏡をくいっとさせてこちらを睨んでる。
今さらだけど、数学の時間だったんだ。さぼってました。すみません。
「んなっ、なんでもありまっせん、ですにょ」
めちゃくちゃ声がうわずってしまったが、なんとか誤魔化す。
クラスメイト達に笑われてしまったが、これも我慢だ。
やべぇ、ぼんやりしてて忘れてた。
入学後すぐに始まる、やばいイベント発生だ。
もう始まるのかよ。
このイベントでは、生徒達に数名の負傷者がでる。
死者こそ出なかったものの、多くの生徒達の心に傷を残してしまうのだ。
まずいまずいまずい。
どうしようっ。
どうすればいいんだっ!
あのゲーム、乙女ゲームなのにやばいイベントがちょくちょく起こるんだよな!
はっ、そうだ。
「先生! めちゃくちゃお腹痛いんで保健室行っていいですかっ、いいですね! いってきます!」
「おっ、おい」
俺はフレオンの腕を引っ張って「付き添いよろしく」とクラスをさっさと出ていく。
彼を選んだ理由は、獣人だから強そうな気がした。それだけ。
教師が何か言いかけてたけど、ごめんよ。かまってる時間がなかったんだ。
フレオンは能天気なものだ。
「えっ、お腹いたいの? 大丈夫きみ?」
とか声をかけてくる。
基本は病んでるけど、普段はただいい奴なんだよな。
俺はフレオンを人気のない区画にひっぱって、ひそひそ話だ。
かくかくしかじか。
「ええっ怪しい奴が学校の敷地内に入ってきてる!?」
「しっ声が大きい」
「あ、ごめん」
今さらながら思うけど。
俺、何やってるんだろうな。
何かやっても無駄だって思い知ったのに。
「とにかく、二人で先生に伝えに行くぞ。一人で言うより、二人で言った方が信憑性が高いだろうし」
「うん、わかった、職員室に行こう」
悩みながらも、俺は足早に職員室へと向かう。
途中で窓からグラウンドを見ると、やっぱりいた。
怪しい連中が。
「うわぁ、ほんとにいる」
「あんまり顔だすな。相手にばれる」
「そうだね」
もうそろそろどこかのクラスが、あの集団に気が付いて騒ぎになってもおかしくないな。
俺みたいに授業聞かずに、ぼうっと外見てる奴、絶対いるだろうし。
あいつら、かなり校舎に近づいてきてるな。
どうしよう。
判断ミスったか?
職員室に連絡入れる前に、避難させた方がよかったか?
でもどうやってだよ。
絶対騒ぎになるだろ。
犯人を刺激するのは良くないだろうし。
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