第2話 ミュクゼの原作イベントを改変



 話はそれるが、俺は庶民だ。


 家が養鶏場だから、鳥畜生と戯れるだけの、いたいけな少年だよ。


 身分が貴族だったら便利だけど、そんなもんはない。なので、あるもので何とかするしかない。


 体を張って、原作を改変するまでだ!


 というわけで、家を脱走!


 ミュクゼの過去イベントが起きる場所。


 とある森に向かって人生初(転生後)の小旅行だ。


 けれど、意気揚々と脱走したわりに、ずさんさがめだったな。


 食料がつきた。


 というわけで数日後。


 計画性が無くて行き倒れた。


 失敗した。


 前世と同じ考えで行動したのがまずかったな。


 何とか森にたどり着いたはいいが、腹減って動けなくなった。


 意識がブラックアウトしていく。


 あ、これ。あかんやつ。


「おい、大丈夫か!」


 ん?

 今、人の声が聞こえたような。







 目覚めると、誰かに介抱されていた。


 簡易テントのベッドの上に寝かされていたようだ。


 助かった。


 偶然通りがかった人……じゃなくて、ハーフエルフの少年が、俺を助けてくれたようだ。


 って、攻略対象じゃねーか。


 目の前にはミュクゼ(幼少期)がいた。


「目覚めたようだな」

「お前が助けてくれたのか、ありがとう! 死ぬとこだった!」


 死にそうな思いをしたかいがあったな!


 偶然だけど、この幸運はでかい!


 俺はそいつの腕をがしっと掴んだ。


「追手が迫っているぞ、今すぐこの辺りから逃げるんだ」


 ゴゴゴゴゴ、みたいな背景音がなりそうな真剣な顔でそう伝える。


「追手だと? 何を言ってるんだ貴様」

「森からでたお前らを追いかけている奴らがいるんだ」


 ミュクゼ達はそれで分かったらしい。

 すぐにその場を移動するよう、両親に伝えに言った。


 よし! これで、原作から外れる事ができたかな。

 これなら、ミュクゼが両親を守るために、エルフを殺す事なんてないはずだ。


 その後、俺はミュクゼ達からお礼を言われて、近くの町までおくられた。


 迎えに来た家族にはこっぴどく怒られてしまったけどな。


 すまん。


 庶民なのに、無理をさせてしまったようだ。


 あちこち探し回って、貯蓄を使わせてしまった。


 今度やる時は、置手紙してかないとな。


 でもこれで、一人の人間の明るい未来が守れたんだから、それでなんとか許してほしい。


「次脱走したら、地面に埋めてにわとりの餌にしてやるからな」


 父さん、激おこ。


 できないか。


 そっかー。


 お母さんはともかく、お父さんがマジギレだ。


 俺は数時間正座のままで説教だった。


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