第218話 陥落しました

「――で、此処に連れて来たわけかい?」


「ジュンがそいつを抱えた時はどうするのか思ったけど」


「そういう事だったんだねぇ」


「納得」


 偽リヒャルダはやはりアム達が居る部屋に運んだ。


 この部屋は身内以外居ないから丁度良かった―――


「………」


「近い近い。ピオラはん、わいの事は聞いたやろ?仲良うしようや」


 メーティス…ブラックの事は簡単に説明したがピオラはまだ恨みが消えていないらしい。


 散髪して出た髪の毛くらいでそこまで恨む?なるべく早く離れた方が良さそうだな。


「入るぞ…っと、やはり此処に連れて来ていたか」


「その女に何かあるのか?」


「「「まさかその女性が好みなのでは…」」」


 わざわざ貴賓室からアニエスさんとカタリナ、三つ子までやって来た。


 また同じ説明すんの?


「ジュン君は居るかしら」


「ああ、やはり此処でしたね」


「なんでその女、連れて来たんスか?」


「まさかジュン君…目覚めた?」


 ソフィアさん達まで来た。持場離れて平気なのかね。


 あと、俺がナニに目覚めたというんだ、ハエッタさん。


「クリスチーナ、アニエスさん達に説明を頼む。俺は彼女から話を聞く」


「わかったよ」


 さて…起こす前に霧になる能力を封じないとな。


 こいつだけ結界で封じれば問題無いか。後、手足を縛って…と。


「ジュン君がロープで女を縛ってる…」


「ドキドキしますね…」


「「「羨ましい…」」」


 イザベラ達三つ子は手遅れかもしれないなぁ…ソフィアさんとハエッタさんはそこで立ち止まってなさい。


 それ以上は進んじゃいけない。


「…よし。それじゃ起こすけど、戦えない人は離れてて。戦える人は警戒してね。外からの襲撃も、ね」


「え。なに、襲撃あるの?やだ怖い!」


「あーしが居るから大丈夫だって!」


「わふっ」


 ま、結界も張ってるし大丈夫な筈だが。さ、何時までもこうしてられないし、サッサと済まそうか。


「起き…って、起きてるな。暗殺者だけあって鍛えられてるな」


「……」


 既に目を覚まし状況を把握したらしい。それじゃ早速質問を…


「って、おい!」


「カフッ…」


 チッ!歯に毒物でも仕込んでいたか?だがしかし、無駄だ。


「俺は回復魔法も使える。一秒もあれば回復させられるから即死じゃないとどんな毒物も無意味だぞ。舌を噛み切っても同じだ」


「……」


「…一秒で死ぬって普通なら即死って言わないっスか?」


「普通ならそうですわよね…」


 細かい事言うなぁ…どうだっていいじゃん、そんな事。


「ねぇ、ジュン。もしかして拷問するの?ユウとフランちゃん、それにアイシャちゃんの教育に悪いと思うんだけど…」


「ジェーン先生…アイシャ殿下と呼ばないと…」


「ウチは気にしてないよん」


 スプラッタな拷問をするつもりは無いが…アイをちゃん付けって。


 本人は気にして無いが、他の貴族に聞かれたらヤバいぞ。


「さて…では質問する。お前の名は?勿論本当の名前だ」


「……」


「なら年齢は?」


「……」


「本物のリヒャルダはどうした?」


「……」


「何が目的でリヒャルダと入れ替わった?」


「……」


 何も答える気は無い、と。しかし、それじゃ困るわけで。


「仕方ない。お前には孤児院式拷問…じゃなく。孤児院式お仕置き術を味わってもらおうか」


「…孤児院?」


 今、ボソッと孤児院って言ったな。こいつ、自分が理解出来ない事は声に出して聞き返すのか。


「おい、ジュン…それってもしかして…」


「アレだよねぇ…アレ」


「アレは地獄…」


「アレってもしかして…アレなの?」


 孤児院式お仕置き術…またの名を悶絶擽り地獄の刑。


 孤児院で悪さをした子供はこの刑に処される。罪の重さによって罰の時間が長くなるのだ。


 因みに受けた回数クリスチーナとピオラ、ユウはゼロ。


 アム、カウラ、ファウは罰を受ける時は三人一緒なので同回数。


 一番回数が多いのはジェーン先生だったりする。罪状はつまみ食い。


 因みに、この刑を考えたのは俺だ。


「さて…今回は尋問も兼ねてるからな。二刀流で行こうか」


「ヒィィィ」


「お母さんが怯えてどうするの…」

 

 さ、裸足にしてー両手に鳥の羽根持ってー。ナニされるのか理解してない罪人の足の裏をー!


「ひ、ひゃ、ひゃうぅぅぅぅ!」


「ハハハハハハ!敏感みたいやのう!うりゃうりゃ!」


「うひゃううううう!!」


「ハハハハハハ!此処か!此処が弱いんか!」


「ひゃう!びゃうううう!」


「ハハハ!ほ〜れ早く喋った方がいいぞ〜羽根はドンドン増えるからな〜!」


「ひゃうううう!」


 ※暫く笑い声と悲鳴だけが続きます。暫くお待ち下さい。



「喋ります…何でも喋りますから…もうやめて…」


「四本まで耐えたか。中々頑張ったではないか。フハハハハハ」


「すげぇな…あたいなら二本で直ぐ様ゲロっちまうよ…」


「わたしも無理…」


「ファウなら一本」


 フフフ…久しぶりだから腕が鈍ってないか心配だったが。問題無く……ん?


「ジュンって…ドSなんだ…ウチはМじゃないからね?」


「マスター…能力の無駄遣いやで…」


「お兄ちゃん…やり過ぎ」


「ワタシは初めては普通がいいです」


 Oh…ちょっと調子に乗り過ぎたか?引かれてらっしゃる。


 いや、でも…血を流すやり方じゃないし、かなり優しい拷問だと思うんだけど…


「ノワール侯爵様…自分はどんなプレイでも受け入れるつもりですが…これはちょっと…」


「「「わ、私は頑張りますから!どんと来いです!」」」


「プレイじゃねぇし」


 これは俺の性癖を満足させるためのモノじゃない。決して!


「「「「「「「「ジー…」」」」」」」」


「ちょっ…その眼をやめろい!」


 違うったら…ち、違うんだからね!

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