第197話 登場しました
「ハッハッハッ!では皆様!私はこれにて!ノワール侯爵!またお話ししましょう!」
「勝手にどこ行くんだコラァ!待ちやがれ!テメェはノワール侯爵と接触禁止だぁ!」
宰相を追いかけて皇帝陛下も何処かへ行ってしまった。
俺を含め招待客は唖然としてるが帝国の人間は慣れた様子。日常茶飯事?
「あの…ノワール侯爵様」
「姉と宰相が失礼を…すみません」
「あ、カサンドラお姉ちゃん、ジェノバお姉ちゃん」
騒ぎを聞きつけたかカサンドラ様とジェノバ様が近付いて来た。
この場に皇家の殆どがそろったわけだが…こうして見ると似てない姉妹だなぁ。
「ガブリエラ、此処はアタシが預かるから」
「貴女は下の娘達をお願い」
「う、うん。失礼します、ノワール侯爵様、アイシャ殿下。皆、行くよ。エジェオもおいで」
「えー…ノワール侯爵様、今度御話しを聞かせてください!」
「のわーるこうしゃくしゃま!こんどあそびましょ!」
この場ではジェノバ様の次に年長っぽいガブリエラ様が妹とエジェオ殿下を連れて退場。何故かわからんがエジェオ殿下以下、年少組に好かれたらしい。見えなくなるまで手をブンブンと振っていた。
そして残った二人が口にしたのは再度の謝罪だ。
「改めて、申し訳ありませんノワール侯爵様、アイシャ殿下」
「ですがサーラ姉さんと宰相のアレは…よくある事なので。笑って流していただけると…」
「よくある事なんだ、アレ」
「ええ、まぁ…」
よくある事なら止めさせなよ…外国からの招待客が居るような場でやる事じゃないだろ。
「アレは多分、宰相なりの気遣いなんです」
「気遣い?アレが?」
からかって遊んでるように見えましたけど?むしろそうとしか見えなかったですけど。
「サーラ姉さんは…自分で望んで皇帝になりました。妹達と姪達、国民を護るに。母と姉を地獄に落として…でも決して後悔や躊躇いが無かったわけじゃない。皇帝になってからも辛く苦しい事は続く…でもそれを表に出しちゃいけないってサーラ姉さんは考えてる。でも、それじゃあ…」
いつかパンクしてしまうから、素を出して色んなモノを吐き出せるように。その為に宰相はワザとああやって皇帝陛下を怒らせて素を出させてるのだと。
そうジェノバ様は分析してるらしい。
「姉さんを陛下って呼ばないのもそうです。皇帝という重圧が少しでも軽くなるようにって宰相なりの気遣いかと」
「いや…そうかぁ?アタシには宰相は楽しんで姉さんをイジってるようにしか見えないけど」
「……………多分、きっとそう…だと思う」
自信無くしてますやん。それが本当ならいい話だと思うけどさ。
「ま、俺…じゃない。私は気にしていないので。謝罪は不要ですよ」
「ウチも。むしろ面白いって思ったよ」
「ありがとうございます」
「ありがとうございます。それと…サーラ姉さんを始め、自分達も纏めて娶るという話も、どうか前向きに検討してください」
「あ、それ今言うんだ。ウチの前で」
宰相も言ってたけどな。どうして誰も彼も俺にそこまで拘るのか。顔と名前、噂程度の事しか知らないだろうに。
「アタシら姉妹って、人を見る目はあると思うんです」
「中でもサーラ姉さんの人を見る目は確かです。そのサーラ姉さんがノワール侯爵様と直接会話した後でも婚約に乗り気でいる。他の妹達も同じ考えだと思います」
…キレた姿はヤンキーというかチンピラというか。普段はちゃんと皇帝らしくしてるのか、妹達には信頼されているらしい。
「サーラ姉さんは皇帝になってから余り笑ってないんです」
「え。急になに?」
「仕方なしとは言え母親と姉を処刑したのですから、当然かもしれません。貴族からも国民からも不信の眼を向けられながら必死に国を立て直し…闘技大会を開いて外国から招待客を招く事が出来るまでになりました。そんなサーラ姉さんが…幸せになる機会があるなら応援したい。そう思うのはおかしな事でしょうか」
…情に訴えて来たか。
しかし一見、姉想いの優しい妹のように見えるが忘れてはいけない。
ジェノバ様も俺に求婚したという事実を。
自分が結婚したいから姉を出汁に使ってるという見方も出来るという事を。
『それが正解やろなぁ。皇家の娘やもん。強かに決まっとるわ』
だよな。だってテンパって早口になるのは治まったけど、代わりに俺の事を探るような眼になってるもん。
きっとまだまだ仕掛けてくるに違いない。
「というわけでサーラ姉さんと自分達を娶ってください。今なら帝都の一等地と屋敷、使用人がオマケで付いてきます」
「お、おぉ…よ、よろしくお願いします!」
帝都の一等地に屋敷と使用人て。それハーレムって言わない?それはもう王都にあるし、要らないてす。
管理出来そうにないし。
『王都の屋敷ってハーレム認識やったんや…その割に誰にも手ぇ出してへんのは何で?』
手を出したら止まらなくなるからだよ。俺じゃなくて女性陣が。
「あのさ。ずっと思ってたんだけど、それって総意なの?」
「総意、ですか?」
「妹さん達の様子からして満更では無さそうだったけどさー一番ちっちゃい娘なんか結婚とか恋とかよくわかってないでしょ?なのに今から結婚相手なんて決めちゃっていいの?」
「それは皇族や貴族として生まれたなら避け難い事では?」
「というかですね…ツヴァイドルフ家の女には選ぶ権利が殆ど無いと言いますか…母と姉のやらかしのせいで」
「あるとすれば皇帝であるサーラ姉さんと男児のエジェオだけです」
「ノワール侯爵様に見捨てられたら生涯独身か不細工な中年に嫁ぐかの二択しかないんです」
「……ああ、そう。大変ね…」
またしても情に訴えて来たか。そりゃ俺だってフランの父親みたいな中年にジェノバ様達が嫁ぐ事になったら気の毒だと思うけどさぁ。
「ですので。ノワール侯爵様に娶って貰う事に反対、拒否を示す妹なんて居ません」
「少なくとも、挨拶の時には嫌がった様子は無かったでしょう?」
「でも全員じゃないですよね。あと一人…写真を見た限り赤毛の妹さんがいらっしゃいますよね」
「「うっ」」
痛い所を突かれた。二人はそんな顔をして目を逸らした。
どうやら赤毛の妹さんは乗り気じゃない?
「赤毛の妹…ミネルヴァの事ですね」
「あの子は自分と並ぶ、ツヴァイドルフ家で最も美しい姫だと言われてはいるのですが…少々問題が…」
「で、でも大丈夫です!ミネルヴァもノワール侯爵様と会えば必ず納得しますから!会えば!」
「会う気になるかが問題ですが…今日もパーティーに出席してませんし」
「そこはアタシらでなんとかするんだよ!今からでも連れて来るぞ!」
「そうね。ミネルヴァも納得したら結婚してくださいね、ノワール侯爵様」
「いや姉妹全員の総意なら受け入れるという話でもないんで」
必死みたいですけど、そこは勘違いしないで欲しい……お?
「来たよ、ジュン」
『来たみたいやで、マスター』
誰が来たのか。それは今回、最も警戒すべき人物。
何かと余計なちょっかいをかけてくれた親玉だ。
「初めまして、皆さん。私もお話しに混ぜてもらえますか」
ドライデン連合王国国王エスカロンの登場だ。
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