第191話 交換条件を出されました

「俺は今、難問に直面している」


「…は、はぁ…そうなんですの?」


「お兄ちゃんは去年から色々と問題を起こしてたり巻き込まれたりしてるとは思うけど…」


 昨日、闘技大会の参加受付の締切が四日後で俺達が帝都に到着するのが六日後だと知らされた。


 打開策を探って色々と聞いて考えてみたのだが…結論として俺が単独で帝都に入るしかないとなった。


 参加受付は本人が行かねばならず代理不可。飛び入り参加等は認められていない。


 つまり何が何でも四日以内…いやもう三日以内に帝都に着かなければならないわけで。


 あ、因みに今は馬車で移動中だ。焦りのせいか皇女二人と護衛の近衛騎士団が加わったせいか昨日までよりも進みが遅い気がする。


「というわけで…どうすればいいと思う?」


「どうすればって…」


「てか、やっぱ闘技大会に参加するつもりだったんだな」


「そんな事だろうと思ってたけど~」


「参加したら怒られるに決まってる」


 ナンデヤネン。ええやんけ、誰でも参加出来る催しに参加するくらい。貴族でも平民でも参加出来るし外国の人間も参加出来るんだから。


「というわけでジェーン先生は何かアイディアない?年の功でもお祖母ちゃんの知恵袋でもなんでもいいから」


「わ、私はそんな歳でも無ければお祖母ちゃんでもないもん。アイディアなんて…ないわよ」


「ジェーン先生に期待した俺が間違ってたね。ごめん」


「むっき~!まーたバカにして!良いわよ、本気出して考えてあげるわよ!作戦会議よユウ!」


 そこで娘を頼る辺り…いや、本音言うと俺が一番期待したのはユウなんだけど。


 昨晩は寝る前にメーティスと相談したけれど…打開策が無かったんだよな。


「そんなのあんたが先に行ってパパっと済ませればいいだけでしょ。なんならあーしが運んであげよっか?」


 リヴァに運んでもらう…というのは俺も考えたけど却下。その場合、ドラゴンの姿に戻って貰う必要があるし帝都の近くに未知のドラゴンが現れたーとなると確実に騒ぎになる。


 何より勝手にそんな事したら確実に問題になるからな。なんちゃって侯爵とはいえ貴族だし。


 許可も貰えるとは思えないしなぁ。故にリヴァに運んでもらうのは却下だ。


 メーティスを先行させて帝都に着いたら空間転移で隙を見て登録…も考えたけどリスクが高い。色々とバレる可能性が高い。


 証拠不十分で押し通せるかもしれないが疑惑の眼が向けられるだろうし、何よりエロース様の使徒だと思われかねん。


 空間転移が出来るとか早々思いつかないだろうから、最終手段としてメーティスを先行させてるけども。


 出来れば使いたくはない。


「むぅ…むむむむむ…だめぇ、お母さんは思いつかない、何も浮かばない~ユウは?」


「お母さん、諦めるの早いよ…んとね、お兄ちゃん。皇女様は特別参加枠については何か言ってなかった?」


「特別参加枠?」


「大きな大会ならありそうだけど。ほら大物貴族の推薦枠で予選無で決勝トーナンメントに参加出来るとか、ありそうじゃない」


 …おお!確かにありそうだ!それなら色々な事がバレる危険を冒さずに済む!


「よし次の休憩でカサンドラ様かジェノバ様に話を―――おおう!?」


「御呼びでしょうか」


「うわぁ!何で入って来てるんだよ!」


 走行中の馬車に馬から飛び乗ってジェノバ様が入って来た。この人、俺達王国一行の護衛の為に来てるのに、それ放棄していいのか?


 いや、良いわけねーし。


「ええと…ジェノバ様?」


「はいなんでしょうか」


「…早口はやめてくださいね。何故、私達の馬車に?」


「呼ばれている気がしましたので」


「いや誰も呼んでねーし」


「何言ってるのこの人…」


「処す?」


「あの…この方は皇女殿下なのですから、もう少し言葉使いに気を使ってくださいまし」


 アム達は誰にでも同じ態度だからな…しかしまぁ折角だ。特別参加枠について聞くと…ん?


「クリスチーナ?何してんの」


「気にしないでいいよ。ささ、話を続けたまえ。フフン」


「ムム…」


 何故か俺と腕を組んでドヤ顔をジェノバ様に向けるクリスチーナ。


 昨日同類呼ばわりされて対抗意識でも持ったか?


「…ジェノバ様、闘技大会には特別参加枠とかありますか?参加受付をしなくてもいきなり決勝トーナンメントに参加出来るような」


「あります。大臣や宰相、皇帝からの推薦で参加出来る特別枠が。予選の一回戦を免除されるだけですが」


 ほほう。決勝トーナンメントにいきなり参加ではなく予選二回戦目からの参加か。それは俺にとっては好都合。


 出来る事なら最初から参加したいくらいだもの。


「昨日の様子からもしやと思ってましたがノワール侯爵様も闘技大会に参加したいのですか?…ムゥ」


「フッ」


 クリスチーナを見てるからか普通に話す事が出来てるジェノバ様。そのジェノバ様を挑発的に嗤うクリスチーナ…ジェノバ様だけじゃなくピオラも凄い眼で見てるの、気付いている?


「…ええ。出来るなら参加…いえ何としても参加したいのですが。私を推薦枠に入れてもらう事は可能でしょうか」


「可能か不可能かで言えば可能なのですが…姉さんと宰相以外の推薦枠が既に埋まっていた筈です」


「姉さんとは皇帝陛下の事ですよね。どうにか私を推薦してもらうように連絡してもらえませんか」


「わかりました。早馬を出して連絡します。推薦枠を空けておく事くらいは出来る筈です」


 おお!これで何とかなるかもしれん!締切前に結果を教えて欲しいが…もうメーティスも戻って来る頃だしな。


「ただし。自分からも一つお願いが」


「…御伺いします」


 やはりそう来るか。代わりに結婚してだったら断るしかないが――

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