第36話 結局はこうなりました

 ソフィアさんの説明をまとめると、こうだ。


 この場にいる全員で協力して俺を護る。


 見返りに俺と結婚する。白薔薇騎士団千人含め。


 いやいや…いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいや!


 いくらなんでも千人て!この世界の結婚事情は知ってはいるけど千人て!


 せめて一つ桁下げろや!


『えー999人やったらええん?』


 そういうこっちゃねぇんだよ!


『まぁまぁ。ええやん、妻千人。エロース様がマスターをこの世界に送った目的に沿ってるし。こんだけモテたら男冥利に尽きるやろ。よっ!モテ男!』


 うっせぇわ!


「…まぁまぁ。ジュン、落ち着きたまえよ」


「ジュンが怒るのも無理はないと、あたしも…いや、私も思う。だがね…」


「ジュン君が狙われるのは確実。でも私達は渡したくない…だから護る。でも、無償で護り続けろって言うのも、辛いじゃない?」


「私達は結婚適齢期ギリギリですしね」


「そういう事言わないでクライネ!」


 ああ、うん…それもあって焦ってると。


 護るにあたって見返りが欲しいのも理解は出来る。


 しかし全員と結婚って。いくら一夫多妻が普通の世の中とはいえ、千人て。


 流石に前代未聞だろ。


「籍は入れなくてもいいから子種だけ欲しいって団員もいますね」


「むしろ子供もいらないからひたすら抱きたい、抱いて欲しいって意見もあったわね」


 そんな奴はエロース教に入っちゃえばいいじゃん…それはまた違う?


 そっスか…


「それでね、ジュンお兄ちゃん。お兄ちゃんはどうしたいのか聞きたいの」


「どうしたいって……ん?今、なんて?」


「だから、お兄ちゃんに何か希望はある?冒険者になりたいのはわかってるけど、この中の誰かなら結婚してもいいとか、逆にこの人とは結婚したくない、とか」


「いやいや、そうじゃなくて。お兄ちゃん?え?ユウも俺が男だって知ってるの?」


「あ…そう言えば…何故知ってるの?」


「えー…今更?そんなの今、此処に居る時点で知ってるに決まってるじゃん」


 いや、そりゃそうなんだろうけど…なんでや?


 院長先生もユウが知ってるとは思わなかったみたいだ。


 となると…


「お、お姉ちゃんじゃないよ?」


 ピオラじゃないとなると、容疑者は一人しかいない。


「因みにお母さんでも無いから。ま、それはまた今度説明するから。兎に角、何か無い?」


「ん、ん~…冒険者になるのは絶対。あと自由に動きたい。一人で何処にも行けない生活は嫌だな。あと、今は結婚とか考えてない」


「だよねー…まぁ予想通り。でね、提案なんだけど…私達にもチャンスが欲しいの」


「…ん?」


「お兄ちゃんが冒険者をやりたいのはわかってる。お兄ちゃんが望むように冒険者活動が出来るように此処に居る全員でサポートする。だから将来的には私達との結婚を前向きに考えて欲しいの。あと、誘惑もさせて」


「……んんっ?」


 いや……え?なに、それ…つまりユウも俺が好きだと?


 いや、この場に居る全員が?えー…


『いや、今更何を言うとるんや。そんなんわかりきってたやん』


 いや俺が男だってバレてるの知ったの今日だから!


 だから今日までの皆の好意は女同士の友情的なものだとばかり!


 大体院長先生と司祭様まで含むの?この場に居る全員なんでしょ!?


『あぁ、うん、なるほど。それもそうやな。院長先生と司祭様は…確認したら?』


 ええ…確認しづらいな…


「えっと…その全員って…院長先生と司祭様も入ってる…?」


「え?…あぁ、私達は結婚なんて考えてないわよ?ただジュンの思うように生きて欲しいだけ」


「私は求められたら構わないけれどね。ウフ」


「だから五十代の年増が十五歳の少年に色気付くんじゃないわよ…」


「だから同い年なんだから私が年増なら貴女も年増…って、この話題は止めましょう。お互いに傷付くだけよ」


 院長先生と司祭様、同い年なのか。随分仲良さそうだな。


「あと…ユウはまだ十一歳でしょ?なのに誘惑とか…」


「普通だよ?」


「…普通?」


「そう、普通。良い男が居たら子供だって捕まえに行くのが普通。お兄ちゃんほどの男なら幼女から熟女までそうするのが普通」


 …普通ってなんだっけ。


『この場合、普通を常識に置き換えたらユウが言う事はこの世界の常識やで?せやからマスターは今日まで女として生きて来たんやし』


 Oh No…ちゃんと男らしい格好で街を歩いたら幼女から熟女まで言い寄って来ると?


 それじゃまともな冒険者活動は…


『送られへんな。まぁ服装は気にならんやろし、今迄通りに一人称は私。髪も長いままで行けばええやろ。でもやで?それもこれも此処に居る人らの協力があってこそやで?』


 つまり…誰も知らない土地に行ってやり直すのは…


『オススメせぇへん。面倒が増えるだけやわな。まぁいつかは離れなあかんねんけど…今直ぐはマスターかて嫌やろ?』


 ぐぅ…だが、だがしかし…この場に居る全員、更に白薔薇騎士団千人との結婚を前向きにと言われてもだな…!


『そもそもな話。それってマスターにとってマイナスなん?だってマスターに与えられた使命は子作り。出来るだけ沢山の子供を作らなあかんねんで?それが向こうから千人も来てるんやから願ったり叶ったりやろ』


 ド正論!確かにそうだけどさぁ!?


『それにユウの提案なら猶予があるやろ。取り敢えず了承するんが正解やと思うでぇ』


 それしか無いと言うのか、相棒…


『無いな』


 ぐぅ…く、くぅぅぅ…


「わ、わかった…結婚を前向きに考えるから、俺が冒険者として活動出来るように協力して欲しい…」


「任せろ!ジュンの為ならローエングリーン伯爵家が全力を持ってあたろう!」


「お母様…お母様とは結婚させませんからね」


 ローエングリーン伯爵は本気なんだろうか?流石にカタリナの母親とそういう関係になるのは…


「仕方ないか…どちらにせよ、私達だけじゃ厳しいのは確か。ならジュンの為に利用させてもらうさ」


「チッ…まあいい。ジュンが冒険者になるなら現役冒険者のあたいらが有利!」


「冒険者なら遠出して外泊とか普通にあるしね!」


「野外プレイもばっちこーい」


 クリスチーナ達も一応は納得したようだけど…ファウさんや?野外プレイって何さ……あ、言わなくていいです。


「はぁぁぁ…此処まで上手く運んでいたのに…」


「最後の最後でつまずいてしましましたね…ですが、完全な敗北ではありません」


「そ、そうね。まだ決めなきゃいけない事があるものねっ」


 まだ何かあるの…?


「役割分担よ。私達がジュン君を確保した以上、ジュン君を護る為に必要な事の大部分は私達でやるつもりだった。でも…」


「協力体制を取るのであればもう少し分担してもいいはずです」


 その中で有利な条件を勝ち取ろうって?転んでもタダでは起きないってか…


「と、言うわけで!ジュン君は結婚するまではこのまま此処で暮らす事になりました!」


「やりましたね、団長!」


「「「くうっ…」」」


 喧々諤々な長い話し合いの末。なんとかまとまった結果はそういう事らしい。


 ただし、此処に自由に出入りする権利は全員が獲得していたが。


 その条件なら何処に住んでも同じじゃね?と、思わなくもない。


 しかし白薔薇騎士団だけじゃなく、ローエングリーン家とエチゴヤ商会、エロース教ノイス支部が協力する事で俺が冒険者として活動出来るようにする為の根回しの時間を短縮出来るらしい。


 それでも三ヶ月はかかるらしいが…三ヶ月何して過ごせばいいのやら。




―――――――――――――――――――――――――――――――――


あとがき


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