第Ⅰ章 第7話 ~白み始めた空~

~登場人物~


ノイシュ・ルンハイト……主人公。男性。ヴァルテ小隊の術戦士で、剣技と術を組み合わせた術剣の使い手


ミネア・ルンハイト……ノイシュの義妹。女性。ヴァルテ小隊の術戦士で、霊力を自在に操る等の支援術の使い手


マクミル・イゲル……ヴァルテ小隊の隊長。男性。ヴァル小隊の術戦士で、増強術という支援術の使い手


 ウォレン・ガストフ……ヴァルテ小隊の隊員で、戦士。男性。あらゆる術を無効化する術耐性の持ち主


 ノヴァ・パーレム……ヴァルテ小隊の隊員で、術士。女性。様々な攻撃術の使い手


 ビューレ・ユンク……ヴァルテ小隊の隊員であり、術士。また修道士でもある。女性。回復術の使い手









不意に身体が軽く、胸に心地よい感覚が湧き起こるとともに自我が目覚めた。視界の闇が少しずつ赤みを帯びていく。ノイシュがまぶたを開けると馴染みのある天井の木目が広がっていた。


――ミネア……

 ノイシュが視線を窓辺に動かすと、開け放たれた鎧戸よろいどからは白み始めた外光が差し、そこで景色を眺める少女の姿が眼に入った。戦士服を身にまとった彼女へと微風が吹き抜け、長い髪が仄かになびく。ノイシュが声を懸けようとした瞬間、遠くの稜線からまばゆい陽光が照らし出された。差し込む外光を受ける彼女のまなざしは、ただ遠くを見ていた――


「おはよう、ミネア」

 そう言ってノイシュが微笑むと、義妹が慌てて目元を拭った。そこで彼女が涙していた事に気づく――


「おはよう、ノイシュ」 

 ミネアが振り向いて眼を細めた。


「……ごめんね、昨夜は――」

 そこまで口に出し、一気に胸から熱い感情が湧き上がるのをノイシュは感じた。


「ううん」

 ミネアは首を横に振った。

「……一緒に、行こう。バーヒャルトへ」

――ミネア……ッ

 ノイシュは義妹を見つめ、そしてうなずいた。


「……分かった。一緒にいよう。これからも……」

 ミネアがゆっくりと微笑んだ。

「ありがとう……朝食の支度、すぐできるから着替えてて」

 ミネアがきびすを返し、部屋の奥へと姿を消していった。ノイシュは自分の胸を強くつかみ、そして眼をつむった。


――とうとう、僕達は戦場に行くんだな……

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