第186話 ロウヒーへの確認
泣きだしたロウヒーが落ち着くのを待ってから、俺はメルクーリ家の異変について尋ねた。
「わ、わかりません……
気がついたら、家中の灯りが消えていて……」
メルクーリ家の灯りは、魔法によるものだ。
それがすべて消えたとなると、魔力的な障害が発生したと見ていいだろう。
「誰か家に来たりしなかった?」
「し、使用人に任せてたから、知らないです。
でも、お客さんは、来ていないと思います。
お父様が、出かけてから、誰も……」
リーゼに支えてもらいながら、ロウヒーはその質問に答えていた。
さらに言葉を続ける。
「そうなんです。
誰も来ていないはず……なのに、家の中がおかしいんです。
使用人を呼んでも、返事がなくて……」
「その人たちなら、1階で倒れていたわよ」
「……え?」
「たぶん、何者かに襲われたんじゃないかしら。
ロウヒー、本当に、誰も来ていないのよね?」
「え、えっと……もしかして、リーゼさん。
わたしが何かやったと思っていますか?」
ロウヒーはリーゼから離れようと身をよじる。
しかし、リーゼは服を力いっぱい掴んでいるせいか、逃げ出せないようだった。
ロウヒーの目に再び涙が溜まり始める。
けれど泣き出すよりも先にリーゼは首を横に振った。
「いいえ。
ロウヒーがそんなことしないのは知っているわ。
だから、犯人は別にいる。
ロウヒー、メルクーリ卿の研究室を見せて」
「え、え?
お父様の?
どうして、ですか?」
「ちょっと調べたいことがあるの。
話すと長くなるから、起こったことだけ伝えるけど……アンタの父親、ジルド・メルクーリが、ガブラスとペルサキスの当主を襲撃したのよ」
「え……」
ロウヒーが震える手でリーゼの肩を掴む。
「ほ、本当なんですか?
お、お父様が、リーゼさんとジュディさんのお父様を襲うなんて……」
「本当よ」
「そ、そんな……」
どうやらロウヒーは、ジルドが三貴族会談の場でやったことを知らなかったようだ。
ジルドは使用人を連れて行かなかったようだし、伝わっていなかったのだろう。
「今は、治安部隊が身柄を預かっているわ。
取り調べもそのうち始まるでしょう。
その前に、あたしたちで調べておきたことがあるの」
「そ、それで、お父様の罪は軽くなりますか……?」
「調べてみた結果次第ね」
ロウヒーはうつむいた。
ジルドの研究室は、娘であるロウヒーでも立ち入り禁止の設定だったはずなので、ためらっているのだろう。
だけど、
「わ、わかりました……
ご案内します」
ロウヒーは、意を決したようにうなずいてくれた。
「お願いね。
あ、灯りが必要?」
リーゼが「フレア」と唱えて、指先に小さな火をともした。
「あ、ありがとうございます。
こちらです」
ロウヒーはジルドの研究室へと案内してくれた。
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