第80話 ギルドで確認
アグハトとミーリアの婚約をお祝いしたあと、俺たちは家を出た。
あれ以上いても、ふたりの設定……ではなく、馴れ初めなどを延々とループして聞くことになりそうだったからな。
ちなみにだが、ルナはふたりの話を聞きながら熱心にメモを取っていた。
ただ、少し見えた箇所には「弱っているところに迫る」とか「頷くしかない状況を作り出す」とか、そんなことが書いてあったけど、大丈夫かな?
拷問のメモ書きじゃないよな?
……ルナを信じよう。
さて、アグハトの家を出て、次に向かったのはバーラの冒険者ギルドだ。
建物に入ると、そこには冒険者がたくさん……いないな。
ひとりもいない。
昨日、街に入ったモンスターの群れとの激戦があったから、休んでいるのかもしれない。
もしくは、街の復興のために動いているか。
建物の奥にいたギルド職員にたずねてみると、どうやらそうらしかった。
「ケガをされた方は療養されていて、それ以外の方は瓦礫などの撤去作業に当たっています」
ギルド職員からそう説明を受けた。
「冒険者ギルドに寄せられた街の被害状況ですが、建物への損害は軽微、冒険者を含む住民の中にはケガをした者もいますが、命に別状はありません。
ただ、街中にモンスターの群れがあらわれたため、交易には多少の影響が出ています。
しばらくは、商人や旅人の流入数は減少するでしょう。
また、アンダイン大浴場は入り口部分がかなり破損しているので、数日は営業できないのが、街としては痛手ですね」
なるほど、街への直接的な被害は抑えられたが、その他の面で問題が出てきているわけか。
しかし、俺の力ではどうしようもないな。
少しだけど寄付でもしていくか。
「いけません!
ミツキ様にお金を出させるなんて、そんな……!」
お金を預けようとしたら、ギルド職員に拒絶された。
なんで?
「ミツキ様……いえ、『グレイスウインド』の方々はバーラの英雄です。
街を救っていただいた方々に金銭まで援助を受けるなど……
むしろ、我々が金銭を支払う側です!」
「あー、そういうことか」
納得。
確かに街から見れば、そうなるのか。
「じゃあこうしよう。
俺たちはもう少ししたら旅に出るから、それまでの間にもう一度アンダイン大浴場を利用したい。
これは俺のわがままだ。
だから、そのための急ぎの修繕費として使ってくれ」
我ながら、強引すぎる理屈だ。
当然、ギルドの職員は難色を示していたが、ごり押しで置いていくことにした。
これでよし。
お金は少なくなったが、『堕天の魔塔』のモンスターの素材を売った分もそろそろ現金化して戻ってくるはずなので問題なし。
いや、むしろその素材の分のお金を自由にするように伝えておくべきだったか?
ま、それは手元に来てから考えよう。
そのあと、エンプサを捕えていた牢屋の様子を見せてもらった。
ここで、シトリーがエンプサとバーラの冒険者を操って、騒動を広げていったという話だ。
確かに、元『魔王軍』の幹部であるシトリーなら、簡単に突破できてしまう造りだな。
仕方ない。
ギルド職員は、「すみません、すみません!」と頭を下げ続けていたが、気にしないように伝えておく。
うん、そもそも一職員じゃあ本当にどうしようもないからな。
ひと通り情報を教えてもらい、すぐに対応すべきものはないと判断した俺たちはギルドを出て、宿に戻ることにした。
歩き回ってしまったが、俺もルナも魔力の消費が激しい。
アイーダも、いつも以上に食べ物をほしがっていたので、実は疲れているのだろう。
あまり動き回るのはよくない。
そうして宿に戻ると、リーゼとマイアが廊下でおにぎりを頬張っていた。
俺が宿を出る前に喫茶店のマスターに頼んでおいた料理だな。
けど、廊下でそのまま食べるって、そんなにお腹が空いていたのだろうか?
それなら、おにぎりだけでは足りないだろう。
俺はリーゼとマイアも誘って、昼食を取ることにした。
いろいろあったが、今日くらいはゆっくり過ごすとしよう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます