第60話 次の攻略について

 アグハトの幼馴染であるミーリアと別れたあと、俺は『堕天の魔塔』を攻略するためのプランを考えていた。


 10階部分のモンスターは倒せるようになったので、攻略を進めていっても大丈夫だろう。


 ルナたちの疲労具合を見て、いつアタックするかを決めるか……


 そこへアイーダが、ルナたちとカフェへとやってきた。


「女どもを連れてきてやったのだ!

 飯を食べるのだ!」


 あ、そうだった。


 精霊と遊び終えて帰ってきたアイーダには、ルナたちの様子を見てくるように頼んでいたんだった。


 万が一に、ルナたちが起きていて、着替え中だったら気まずいからな。


 アイーダは俺のいるテーブルまでやってくる。


 フフン! と胸を張って褒めてほしそうにしていたので、その頭を撫でる。


 よしよし。


 ちゃんとお手伝いができてえらいぞ。


 その間に、ルナたちはテーブルのイスに腰掛けていた。


「ご迷惑をおかけしました。

 宿まで運んでいただいて……」


 ルナが頭を下げた。


 どうやら、宿に連れてきたことを朧気に覚えていたみたいだな。


「いや、俺が無理をさせてしまったからな。

 悪かった。

 もう少しペースを考えるべきだったな」


「いいえ。

 すべては私たちが未熟なせいです。

 ミツキは悪くありません!」


「そ、そうか……」


 正直、パーティメンバーとはいえ、ルナたちを前後不覚になるほど疲れさせたのは問題だと思うが……


「ルナの言うとおりね。

 冒険者たるもの、体調管理も仕事のうちだから」


 リーゼもルナに同意する。


「だからミツキが気にすることじゃないわ。

 運んでくれてありがとう」


 ……リーゼがそう言うなら構わないが。


「どういたしまして。

 それじゃあ、夕食にしよう」


「待っていたのだ!

 メニュー表の右から全部もってくるのだ!」


 アイーダは相変わらずカフェのメニューをすべていただくつもりらしい。


 まあ、ワイバーンを売った追加分の金が来たので大丈夫だろう。


 あとで、ルナとリーゼとマイアにも分けるつもりだが、それでも余裕はある。


「ふたりとも、食欲はあるか?」


「はい。

 私はいつも通りです」


「あたしもよ。

 マイアは……食欲よりも寝たいだけどね」


 到着するなりテーブルにうつ伏せになったマイアの頬を、リーゼはつついていた。


「すぅー、すぅー」と寝息を立てていて、起きる気配がまるでない。


 アイーダのすぐ後ろで魔塔のモンスターたちと殴り合っていたからな。


 肉体的な疲労は、パーティメンバーの中で1番かもしれない。


 これだけ疲れているなら、ベッドで寝かせておくべきだったな。


「マイアの分はあとで部屋に持っていこう。

 ふたりは好きなものを注文してくれ」


「わかりました」


「疲れた分、しっかり食べてやるわ!」


 ルナとマイアが注文する。


 俺も注文し、あとでマイアの分の作り置きも頼んでおく。


 アイーダにマイアをベッドに戻してきてもらっていると、料理はすぐに運ばれてきた。


 昨日に比べるととても早い。


 俺がミーリアと話していた頃から、食事もするだろうと予想して準備していたのかもしれない。


 アイーダは、運ばれてくる料理を貪り食い始め、ルナとリーゼも口をつけた。


 俺もやってきた肉を頬張る。


 ワイバーンの肉らしい。


 かぶりつく。


 ふむ……高級な鶏肉のような味がする。


 甘めのタレが使われていておいしいが、俺としてはもう少し辛いほうが好みだ。


 まあ、この肉はきっと俺たちが倒したやつだと思うので、店主マスターも初めて調理は初めてだったのだろう。


 次に食べたらおいしくなっているかもしれない。


 そうして食事が進み、落ち着いて来たところで、俺は『堕天の魔塔』の攻略についてルナとリーゼに切り出した。


 すると、


「そうですね。

 注意して進めば問題ないかと思います」


「魔力が回復したら問題ないわ。

 前よりも強くなったからね」


 ふたりとも乗り気のようだな。


 アイーダにも聞いてみたが、肉にかぶりつきながらうなずいていたので、問題ないだろう。


 マイアには、起きてから聞いておこう。


「それじゃあ、明日は攻略のための準備の日にしよう。

『堕天の魔塔』には明後日攻略に出かけるってことで」


「「異議なし!」」


 ルナとリーゼに合意をもらう。


 それから、俺たちは夕飯を楽しんだ。

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