開発中の新作ゲームをテストプレイしていたと思ったら、いつの間にか異世界を冒険していた

千人

第1話 プロローグ

 気がつくと、俺は不思議な空間に立っていた。


 プラネタリウムのように半球状に星々が散らばって見える場所だ。


「目を覚ましましたか、異世界の戦士よ。

 私は、この世界の女神です」


 目の前に女性がいた。


 銀色の長い髪に、均整の取れた体に白い布を巻きつけたようなデザインの服を着ている。


「突然のことで、驚いたかと思いますが……落ち着いてください。

 私はあなたの味方です」


 女性は紫色の瞳で俺のほうを見つめていた。


「異世界で亡くなったあなたの魂を、この世界に召喚させていただきました」


 まるで事務的な口調で女性は淡々と言葉を紡いでいく。


「あなたには、私の世界の救世主となってほしいのです。

 今、この世界は危機に瀕しています。

 それを救ってほしいのです。

 あなたには私の加護を授けます。

 必ずやあなたを助けてくれるでしょう。

 では、頼みましたよ」


「…………」


「……あの、なぜ黙っているのですか?」


 あ、『セリフ』はもう終わりか。


 俺は立ち上がると『女神』に近づいて……


 その頬を引っ張った。


「ひゃう……!?」


「女神の外見は、20歳くらいの想定だったか。

 うーん……若く見える女神だとちょっと威厳も薄くなるなー。

 無表情じゃなくて、笑顔のほうがよかったか……」


「ふぁにほ……」


 恥ずかしいのか、『女神』の顔が赤くなっている。


 いや、もしかして怒ってるのか?


 へぇ……『最新の技術』だと、ここまで感情表現が豊かなんだな。


「やめなさいっ!」


 女神が俺の手をはじいた。


 ちょっとつり目になっている。


 おっと……どうやら顔が赤かったのは、怒っているからだったみたいだ。


 ふむふむ……『プレイヤー』から不意に触られたときの反応も、ちゃんと設定されているようだな。


 イイ感じだ。


「私は女神ですよ!

 いくらあなたが救世主でも、侮辱することは許されません!」


「違う」


「何が違うのですか?

 あなたは私の頬をつまんでグニグニと……」


「これは、テストだ。

 それに俺は救世主じゃない」


「はい?」


「俺は……創造主のひとりだ。

 このゲームのな」

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