第188話、第一の町
セッテの町。ラーメ領西部に位置する玄関町。
強固な外壁に守られ、石造りの建物が立ち並ぶ。いや、木造の建物は燃え落ち、残骸と化している。残っている建物もその壁は焼け焦げ、可燃物はすでに炭と化している。
俺たちリベルタは、セッテの町にダークバードで乗りつけた。
「とりあえず、町にいる敵の数を減らす!」
今回の目的、占領されている町にいる敵戦力を弱らせる。上空偵察で見たところ、スケルトンやゾンビなどのアンデッド系が確認されている。
「おそらくこの町の住人や、討伐軍に参加した王国兵や冒険者かもしれない」
あまり口にしたくはないが、言っておく。
「アンデッドである以上、倒さないといけない。装備や服装に騙されるな。襲ってくるなら排除しろ!」
「はい!」
「了解だ!」
ルカとシィラが率先して返事した。今回、リベルタメンバー勢揃いで挑む。
聖剣スカーレットハートを持つヴィオ・マルテディや、メイド服の上にサタンアーマー素材防具を身につけたセラータも含まれている。
破壊された外壁。セッテの町の入り口門を入ったすぐに、俺たちは布陣する。ラーメ領を東西に走る街道が、町の中央を通っているので、町中でも東西に真っ直ぐ大通りが形成されていた。
見晴らしがよく、大通りを徘徊しているアンデッドたちの姿がよく見えた。まず動いたのはエルフの姫巫女ファウナ。
「……地に留まりし、戦士の亡者よ。いまここに集い、その怨念を燃やせ」
亡霊戦士を召喚。青き霊体の戦士たちは大通りを進み、近くの敵に襲いかかった。
「これで音につられて町の敵が出てくるかな?」
俺は右手に魔剣、左手に神聖剣を手に、亡霊戦士とスケルトンやゾンビの戦闘を眺める。
両方とも同じアンデッドなのだが、スケルトンやゾンビは実体がある。対して亡霊戦士はふだんは霊体、攻撃の時だけ実体化する。
これはゴースト系もそうだから、別に亡霊戦士が特別強いわけではないが、スケルトンやゾンビのような考えなし相手には、圧倒的に強かったりする。
「僕たちは行かないのかい、ヴィゴ?」
ヴィオが、いつでも戦えるとウズウズしているようだった。これはシィラやネムもそうだった。
ルカは弓、マルモはガガンをいつでも構えられるように周囲に気を配っている。イラはメイド服で戦場にいるが、背中に擲弾筒を背負い、長銃を保持していた。
「今は待機だ」
先は長い。
「どうせ、そのうち嫌ってほど出てくるから」
町中にいるだろう敵性アンデッド。生者がいれば、放っておいてもやってくる。
「ダイ様、どうだ?」
『うーん、まあ、ボチボチ反応しておるようだ』
空に飛ばしたダークバードの視覚情報を受け取り、魔剣は言った。上から闇鳥がセッテの町を見下ろし、敵の動きを見張っているのだ。
『大通りの敵は動いているが、それ以外の連中はいまいちだな……。たぶん一定範囲内に何かしらの反応がないと、向かってこないのだろう』
「町中をひとつひとつ探っていくのは、時間が掛かるし、人手も掛かる」
俺は首を傾げる。大通りで戦闘の音がすれば、勝手に集まってくると思ったが。
『主様よ。音を立てればよいなら、わらわが雷を落としてやってもよいぞ?』
オラクルセイバーが提案してきた。七つの聖剣の力を秘めた神聖剣である。雷属性の聖剣の力も持っているから、可能といえば可能だ。
「自然の音だと、あんまり動かないんじゃないかな?」
雨が降ったら踊り出すとか、雷が落ちたら動かなくなるとか聞いたことないし。
「人工の音が欲しいな……あ、そうだ。マルモ」
俺はドワーフ少女を呼んだ。
「妖精の籠の中に、邪甲装甲のゴーレムがあっただろ? あれ出せよ」
ゴムが胴体の上に乗って操っているように見えた邪甲装甲製のゴーレム。
「わっかりましたー! ゴムちゃん!」
マルモが一度、妖精の籠内へと入って行った。アウラが言う。
「大きいのが出てくるから、みんなー、妖精の籠から離れて」
出てきたゴーレムで潰されてもしらないよって。待つことしばし、ずんぐりした四角い胴体に、がっちり無骨な手足を持つゴーレムが現れた。前回同様、黒スライムがゴーレムの頭のように乗っている。そしてマルモは邪甲獣ゴーレムの肩に乗っていた。
「ヴィゴさん、持ってきました!」
「よし、じゃあ、その辺でゴーレムを歩かせてくれ。でかい足音を聞けば、さすがに鈍いアンデッドでも気づくだろ」
そしてわらわらと集まってきたところを、俺たちがやっつけると。さあこい、アンデッドども!
・ ・ ・
ゴーレムを歩かせたら、想像どおり、町中のスケルトンやゾンビが大通りへと出てきた。亡霊戦士と戦っている一団のほか、音につられてゴーレムへと向かってくる。
「お待たせ!」
やっつけろ!
「くれぐれも、大通りから離れすぎるなよ!」
建物が入り組んだ場所や狭い路地は、ひとまず無視。迂闊に入って包囲されましたってのが一番よくない。
「迸れ! ファイアーランス!」
ニニヤが5連炎の槍の魔法を放射。アウラは手の先に魔力を集めて――
「燃えよ、火竜!」
炎の蛇竜を思わせる火炎放射を放って、ゾンビどもを焼却する。俺の頭の上でリーリエが叫んだ。
「汚いものは、焼却だーっ!」
「何を言ってるんだお前は」
左手の神聖剣から光弾と雷弾。そして右手の魔剣は――
『我の新技だ! エクスプロージョンっ!』
ダイ様が吼えて、魔剣ダーク・インフェルノが火の玉を放った。それは敵スケルトン、ゾンビ集団に飛び込むと爆発を起こして火球に飲み込んだ。
「灰も残らねぇ……」
『なんじゃ、新技というから、わらわはもっと凄いのを期待したのに……』
オラクルが皮肉げに言う。
『案外しょぼいのぅ』
『何だと!?』
ダイ様がと喚いた。……確かに46シーなどと比べると、威力も効果範囲も全然及ばない。だがあの大技と違って、小回りが利きそうで使い勝手はいいと思うな。
『油断するな!』
カイジン師匠のベスティア2号が前へ出た。
『敵は次々に来るぞ!』
大通りに出た敵アンデッドの数が、みるみる増えてきた。いよいよ敵の物量のお出ましだった。
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