ヤンキー君には知りたくないことがある
@ma-no
第1話 ヤンキー長瀬翔
とある河川敷にて、奥様方が大きな声でヒソヒソ話をしている姿があった。
「あら奥さん。あんなところでヤンキーがカポエイラなんかしているざますわよ」
「いやだわ奥さん。アレはブレイクダンスざますわよ」
「あらやだ奥さん。わたくし、てっきりマニアックな格闘技をしてるのかと思って通報するところだったですわよ」
「やだ奥さん。わたくしはヤンキーの時点で通報するところだったですわよ」
「「気が合いますこと。オホホホホ」」
この奥様方が話題にしてる逆立ちして足をバタバタしている人物こそ、この物語の主人公、長瀬
翔の人生は、実は不遇。普通の家庭に生まれたまではよかったのだが、優しい両親には似ずに目付きが悪く生まれた。
そのせいで同年代の子供達から番長だとか殺し屋だとか呼ばれて友達はゼロ。小学校に上がった頃には上級生に目を付けられてしまった。
翔はこのままではイジメられると思い、一念発起して空手を習う。そこでも歳上の者から目を付けられるが、翔には才能があったのか……というか、ひと睨みしただけで相手の体が強張るから、先手必勝でボコッて身を守っていた。
これが通じるのは今だけだと感じていた翔は慢心せずに鍛練に明け暮れ、見た目もオールバックでキメたヤンキーにチェンジ。
そのおかげで中学校では敵無し。しかし、ほぼ目だけで殺していたので、その拳や蹴りは人には使われなかった。
そんな翔は怖がられ、中学校では誰からも話し掛けられずに三年間を終える……
ほぼ皆勤賞で通った中学校の卒業式もボッチで終わり、さすがに荒れた翔は、帰り道でたまたま地面にあった空き缶を蹴飛ばした。
「なんかムニュッとした感触があったんだけど」
左足には空き缶とは違う感触。目の前には空き缶が転がり、その上にはバレーボールのような物体が浮いていたので首を傾げる。
「なんだアレ? ……空に飛んでった。目の錯覚かな?」
この時は気のせいだと思ったが、この日を境に翔の人生が変わる。
道にはボールが何個も落ちていて、それが翔に向かって転がって来たのだ。
「ちょっ! どっかいけ!!」
とりあえず翔は蹴飛ばしてみたらボールは空に昇って行ったので、昨日のことは夢では無かったと受け取る。
しかしそのボールは毎日現れては寄って来るので、翔は蹴飛ばしたり無視したり。
「なんか日に日に増えてね? 浮いてるのもあるし……てか、誰もこれに気付いてないのか?」
ここで翔はさすがにおかしいと思ったが、相談する相手がいない。親には友達がいない事を心配されていたので相談しづらい。
なので、親には秘密にして向かって来るボールを人知れず蹴飛ばしている。
冒頭のカポエイラもしくはブレイクダンスは、数日無視していたらボールが増えすぎたので、一気に蹴飛ばしているシーンだったのだ。
「君、ちょっといいかな?」
結局は通報されて、逆さになっているところを警察に呼び止められる翔であった。
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