第2話 14年前
了は中学1年生。真澄は高校1年生。
1学期が終わる頃。
学校が終わると、了は祖母が買い置きしてくれるアイスをふたつ持ち出して。誰も来ない神社の裏の森で。メロン形のカップアイスを、真澄とふたりで食べる。座るところがないから、立ったまま。
近所に住む、3つ年上の子、真澄。
「憂い」なんて言葉を知らない時分から、どこか憂いを帯びた真澄に惹かれていた。
真澄に見合う男になりたい。せめて、身長だけでも追いつきたい。真澄と同じ身長になったら自分の気持ちを伝えようと、了は決めていた。
今日が、そのタイミングだった。
「真澄ちゃんが、好きです」
アイスを食べ終え、了は告白した。
真澄は綺麗な形の眉をひそめ、了を見つめる。
了は息を飲み、真澄を見つめ返す。
気持ち悪いと思われても仕方がない。これで疎遠になっても、これで良かったんだと踏ん切りがつく。殴られたり罵倒されたり、傷つく覚悟はできている。
真澄は一度まばたきをして、了に近づいた。
了の背中が木の幹に触れても、靴先がぶつかっても、ボトムス越しに大腿部が触れ合っているのに、真澄はぴったりと体を寄せる。
了は体中が熱くなるのを感じた。薄いシャツ越しに、真っ平らな胸部も密着している。
大腿部どころか鼠径部も擦り合わせるかのようで、了は腰が抜けそうだった。それなのに、真澄は了の腰を抱いて逃がしてくれそうにない。
初めての抱擁。ずっと好きで憧れていた真澄と、こんな風に抱き合うなんて、夢にも思わなかった。
「俺こそ好きだよ、了のこと」
耳元でささやかれる。低い声で、溜息たっぷりに。
了は真澄を押し返し、視覚で確認してから、艶やかな唇に自分の唇を重ねた。汗だくで、唾液たっぷりに、汚らしい音をたてて、何度も何度も、口腔を侵す。
次第に腰に力を入れることができなくなり、了はずるずると地面に腰を下ろした。脚がおかしいことになっている。風邪をひいたわけではないのに体中がこんなに熱を持つのは、初めてだ。
もう、無理。そんな言葉ごと口を吸われ、舌を掬われる。脚を開かれ、体の密着を許し、熱を持った局部同士を押しつけ合い、声にならない声をいやらしく絡める。服を着ているとはいえ、普通ではない。苦しい。でも、嬉しい。ぞくぞくする気持ち良さに、体は正直だった。
やめて、とか、もっと、とか言ったかどうか、わからない。
相手が離れてくれた隙に、了はもつれそうな脚を無理矢理動かし、茂みに駆け込んだ。欲の処理に間に合ったことに安堵した。
地面に寝転がり、了は深く溜息をついた。
嬉しかった。誰かを好きになって気持ちを伝えたことも、好きになった人とキスをしたことも、その人に欲を感じたことも。年上の、男子高校生に好意を抱いたことを、後悔しない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます