第14話 俺、呼び出しを受ける

 遂に恐れていた事が起こった。

 上層部からの呼び出しだ。


 俺達3人は勲章をジャラジャラ着けた人達の前に出頭させられた。


「ふん、魔力を無限に供給か。ガセではないのかね」

「報告書を読んだんだろう。野戦病院での出来事が成果を示している」

「とにかく本人たちに直接聞かないとな。お前達の誰が魔力を供給する技術を持っている?」


 やや、高圧的な態度でそう聞かれた。


「なんの事でしょう」


 サマンサが惚ける手に出た。


「話にならんな。我々が舐められているのではないかね」


 机をバシンと手で叩いて、低いどすの利いた声でそう言われた。

 脅すつもりなんだろうけど、そうはいかない。


「舐めてません。一連の出来事は幸運の賜物です。私にも制御できるか怪しい力です」

「ふん、そういう類の力か。不安定で信頼性がないタイプか」


「あー、いいですか」


 俺は話に割って入った。


「小僧、黙ってろ」

「まあまあ、聞いてみましょうよ」

「簡潔に話せ」


「俺達の力は言うなれば、神が悪しきものから人間を守れと遣わした物です」

「何が言いたい」

「モンスターの討伐には協力できるが、盗賊の討伐、戦争、内紛の後始末には協力できない」

「そんな事は認められない」


「いいじゃないですか。モンスターの軍団を打ち破る手助けになれば。今回の窮地がどうにかならないと我々の首も危うい」

「使える物は何でも使うと言うのだな」

「よかろう、お前達3人は明日から前線だ。生き残りたければ、能力を存分に使うのだな」

「もう下がっていいぞ」


 ふう、なんとかなった。

 とりあえず待機しているように言われた部屋で作戦会議をする事にした。


「後戻りできなくなっているような気がするんだけど」


 サマンサが眉間に皺を寄せて言った。


「ごめん、怪我人を見捨てられなかったせいで、前線送りになっちゃって。二人の事は俺の命に代えても守るよ」

「自分の身は自分で守れるわ」

「あっしも自分の事はなんとかなりまさぁ。それに前線は刺激がありそうで」

「二人とも、ありがとう」


「こうなったら、力の言い訳をちゃんと作りましょう」

「幽霊が力を貸してくれているというのは少し外聞が悪い。幽霊でなく精霊にしよう」

「それですと神格化されちまいまさぁ。あっしは勘弁してほしいですぜ」


 俺とハデスはサマンサを見つめた。


「何よ二人して私を見て。やれば良いんでしょ。私は精霊に愛された女」

「ぷぷぷっ、似合わない」

「もう、二人がやれって目で見たんでしょう」


「笑って悪かったよ。サマンサが精霊から魔力を補給されて、他の人にも供給できるとするんだな」

「ええ、精霊さん」

「モンスターを殺すのも精霊がやったとするんだな」

「ええ、そうね」


「では、その方向で噂をばら撒いてきまさぁ」


 ハデスが消える。


「良かったのか?」

「良いも悪いも。仕方なかったのよ。怪我人を前にして何にもしなかったら悔いが残ったわ」

「そうだな。俺も同じ意見だ」


「でも、婿が駄目だったら、ううん良いわ。何でもない」

「顔が真っ赤だぞ。寝た方が良いんじゃないか。野戦病院は激務だったから、疲れが出たんだろう」


 サマンサを寝かしつける。

 寝かしつけたら更に顔が赤くなった気がした。


 サマンサのテントを出た所で調査官のジェムスに会った。

 たぶん、待っていたんだろうな。


「何か用か」

「お前達に同行する事になった。その挨拶にきた」

「お目付け役か?」

「そう考えてくれていい」


「ついて来るなと言っても無駄だろうから、よろしくな」

「お前とは腐れ縁になりそうだ。見かけは少年なのに大人を相手にしてる気がするな」

「そんな事ないだろ。もう、身元調査は終わっているんだろ」


「ああ、三人ともこれといった怪しい所はないな。ハデスはちょっと怪しいが、奴は根っからの犯罪者だ。金でスパイをしそうだが、犯罪の経歴を見るとそういう兆候はない」

「そうだな。ハデスは誰かの下についたり、命令されたりが嫌いなタイプだ。俺の下にいるのは負けたからだな」

「その件も調べた。どうやって隠蔽魔法を見破った?」

「企業秘密だ」


「商人みたいな事を言う。お前の経歴が一番の謎だな。田舎では誰もお前の事を話したがらない。口止めされているみたいだ」


 オークのスタンピードを解決した時の口止めがまだ有効なんだな。


「取り立てて話す事もないんだろ。魔欠者だからな」

「魔欠者として生きているが、卑屈さがないのが気に掛かる。なんでかは分からんが」

「魔法なんぞ使えなくったって、魔道具は使える。生活するには別に不自由はない」

「そんな事が言えるのはお前だけだ。普通、魔欠者はひっそりと生きて行く」

「俺もひっそりと生きていきたいよ」

「お前をどう考えたらいいのか、ゆっくり考える事にしよう。時間ならある」


 ほどほどにしておいて貰いたいものだ。

 手の内がばれたからと言って支障はないが、長年の研究成果を出せと言われるのは癪に障る。


 サマンサにも魔力循環の基礎を教えたが、どうやら10年は修行しないと駄目らしい。

 それにたぶん俺は小さい子供だったから、出来たような気がする。

 小さい子供の脳は何を覚えるのも呑み込みが早いからな。

 ある程度育った人には無理らしい。

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