第8話 俺、攻撃方法を考える

 サマンサが木刀を振っている。

 今は剣の授業だ。

 女子はさぼっている子もちらほら見える。


 まめなんかが出来るのが嫌なのだろう。

 それにひきかえ男子は真剣だ。

 戦場に行く事もあるのだから、真剣なのも頷ける。


 ゲイリック王子とスェインが対戦するらしい。


「お相手つかまつります」

「掛かって来い」

「参ります」


 スェインが王子に打ち込んだ。

 王子は苦しそうだ。

 何とか剣を払いのけた。


 次はゲイリック王子がスェインに打ち込んだ。

 軽々と受け止められ押されて、王子はたたらを踏んだ。


「くそう」


 今度はスェインが打ち込む。

 打ち込みはフェイントでがら空きになった胴が狙われた。

 王子が剣を返し受け止める。

 打ち合いが始まった。


 勝負はつきそうにない。


「なんか剣のレベルが低いような」

「馬鹿ね。実戦では魔法でバフを掛けるから技術なんて関係ないのよ」


 休憩に入ったサマンサが話し掛けてきた。


「じゃ、魔法の腕が優れている方が勝つのか?」

「それよりタオルと水を頂戴」


「はいよ」

「ぷはっ。まっ、総合力だけど、魔法の比重は大きいわね。二人は勇者を争っているのよ。剣の腕だけの称号なら、剣聖になるでしょう」

「接近戦と遠距離戦の方法を模索する必要があるかもな」

「何? 勇者に憧れてるの」

「いいや。何かと物騒だからな。手札は多い方が良い」


 ふと、クロフォードに目がとまった。

 クロフォードは女の子と会話しながら、王子たちの対戦をしっかり見ている。

 油断のならない奴だ。

 敵になると決まった訳ではないが、なんとなく気になる。


「ゲイリック様ー、しっかりー」


 ソフィア公女が王子を応援している。

 戦闘はスェインが勝った。


「ゲイリック様、また次があります」

「うるさい。なんで勝てない」


 王子はイライラしているようだ。


「王子は魔法でもスェインに負けてるのよ」

「偉い人は大変だな。余裕がない奴はたいがい負ける」

「あんた、余裕ね。確かにあんたなら、この訓練場にいる人間を瞬く間に殺せるわね」

「殺せるけど、俺は平穏な生活を送りたい。勇者ごっこなんかは勘弁だ」

「人前ではそんな事を言ったら駄目よ」

「分かっている」


 チャンバラは見ていても飽きるな。

 魔力循環を考えよう。

 高密度の魔力をらせん状に循環させて、遠くの距離の相手には、ばねの様に伸ばして攻撃。

 うん、良いんじゃないか。


 少し射程が伸びたな。

 待てよ。

 高濃度の魔力を大砲のように撃ち出せたら。

 小規模な大砲を魔力で作り木の人形に向かって撃ち出す。

 大砲は魔力で作ったポンプの応用だ。

 駄目だ、途中で霧散してしまう。

 撃ち出した瞬間に循環が止まるのが敗因か。

 ヨーヨーみたいに繋がっているのを弾にすればなんとかなるかも。


 さっそく、やってみた。

 おっ、届いた。

 更に射程が伸びた。


 遠距離はもういいな。

 近距離はどうだろう。

 高濃度の魔力で剣を作る。

 これで斬ったら死なないかな。

 一瞬じゃ無理か。

 人体実験するのはな。

 俺は殺人鬼じゃない。

 モンスター相手だと近距離に近づけさせるのは怖い。


「何、ニタニタしているのよ」

「遠距離攻撃がなんとかなりそうでな。近距離は追々だ」


「平穏を目指しておいて物騒な事を考えているのね」

「まあな。いざという時の為だ。明日から学園の演習だからな」


 ただのピクニックになって、何も起こらないと良いが。

 モンスターが集団になっている現象が気に掛かる。

 ギルドの発表では狂い咲きみたいな物だろうとなっている。

 モンスターが繁殖期を間違えていると。

 本当にそうだろうか。

 嫌な予感が拭えない。

 誰かの陰謀なんて簡単な答えなら良いのにな。

 それなら黒幕を皆殺しにすれば良いだけだからな。

 おっと、思考が物騒になった。

 英雄を気取るつもりはないが、掛かる火の粉は払うつもりだ。

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