第9話 殺す価値のない少年たちの話 中編
「ガハハハハ!この程度で俺様が負けるわけねぇだろ!!」
高らかに笑い声を上げながらも口から血を吐き出します。先程『凶殺の道化師』に腹を蹴られた
「
「弱虫に心配されるほど俺様は弱くねぇ!」
短刀を帯刀し代わりに腰から黒く手の甲がナックルのようにゴツくなっている手袋をはめると両手の拳を突き合わせてやる気を表します。
「そうか、頼りになるな」
合流した青少年は帯刀している剣を抜き構えながら『凶殺の道化師』の背を見据えます。
おそらくこの青少年が電気を纏わせる青少年の言っていた
「俺様だからな!」
自信たっぷりに笑う
「待ちやがれぇええ殺人鬼ぃいいい!!」
その言葉にピタッと『凶殺の道化師』は立ち止まります。そして進行方向を変えて
立ち尽くす殺人鬼を目の前にすると圧倒的な恐怖感と隙のなさ、そして自分の死を錯覚させるほどの殺気に二人して身体が膠着しました。
「……うごっ…けねぇ……し…ぬ…?」
「……っ!!」
喉から搾り出すように声を出す
声すらも出ずに喉を詰まらせる
「……うん、
『凶殺の道化師』は満足したかのように独りごちります。
「やっぱりあの電気男はおかしい」
震えてはいたものの平然と動き普通に対峙していた電気を纏わせる青少年が『凶殺の道化師』の脳内に浮かぶ上がります。
「殺す意味はない。けど、これからも邪魔するなら手に負えなくなる前に
先程『凶殺の道化師』が電気を纏わせる青少年と戦っていた廃ビルににんまりとした笑顔の道化師の仮面を向けて物騒な一言を溢しました。
その言葉と同時に殺気の圧が強くなり、恐怖感が増していきながらも
『凶殺の道化師』はざりっと足音を立てながら足を前に踏み締めます。
その些細な何の意味もない行動にすらも翻弄されて、まるで『凶殺の道化師』が電気を纏わせる青少年の元へと向かったかのような目線の動かし方をしました。
その錯乱具合に『凶殺の道化師』は面白そうに仮面の下で笑みを浮かべます。
「っていったら、どうする?」
「……っえ?」
急に解かれる殺気と試すような物言いに、
「やっと動けるぜっ!俺様が殺してやる殺人鬼!!」
自由に動けるようになった途端、嬉々として襲いかかる
魔導武器とは魔力を流すことによって変動する武器のことです。例えば継ぎ接ぎの見た目をした剣に魔力を注ぐことで蛇腹剣に変わったり、メイス型の武器に魔力を注ぐことで無尽蔵に鎖が伸びるフレイル型の武器に変わったりする武器のことです。
単純で真っ直ぐな駆け引きを知らない戦い方をする
呆けていた
「俺様を斬んじゃねぇ!下手くそ!!」
「す、すまない」
手足をばたつかせながら叫ぶ
「安心して、ほしい。殺す価値ないから見逃してあげる」
「…どういう、意味だ?」
「そのままの意味」
『凶殺の道化師』の言葉に
「それに殺す価値ない人を殺すほど暇じゃない」
瞳孔が開き、悔しそうに顔を顰めて、下唇を噛み締めます。額には青筋が浮かび、冷静さを欠いていました。
「……るなっ」
「それに、まだ、死にたくない……よね?」
「ふざけるなぁっ!!」
怒号をあげながら『凶殺の道化師』に向かって斬り掛かる
「殺す価値がないだと?俺を中途半端に生かして地獄に叩き落としておいて!!一生もののトラウマを植え付けておいて!!」
『凶殺の道化師』はまるで何のことを言っているかわからないと言いた気に首を傾げます。
「死にたいなら今殺してあげるけど……?」
その人の気持ちを何一つ理解しようとしない態度が気に食わないようです。
「
「……?」
ただ荒々しく振るわれる剣撃を避けながら、なぜそんなに辛そうな苦悶の表情を浮かべているのかを疑問に思うばかりです。
「初対面のはず、だけど?」
口籠もりながら呟かれた一言は
その言葉を聞き、
「くっそぉおおおおおっ!!!」
力任せにぞんざいに振られ続ける剣を『凶殺の道化師』は軽くナイフで払いました。するとキーンという激しく金属がぶつかる音が暗闇の中響き渡ります。
ツーっと生暖かい液体首から垂れると共にチクリとした微かな痛みを感じました。視線をゆっくり下げれば、『凶殺の道化師』が持つナイフの先が
いつでも殺せるぞという『凶殺の道化師』の意思表示にも取れる行動に頭に上っていた血の気が一気に引きました。
一歩二歩とゆっくり足を後ろに動かし、ドサっとその場に座り込みます。
そこでようやく正気と冷静さを取り戻したところで初めて気づきました。
「
うつ伏せの状態で倒れていた
静かに、そして呆気なく近くにいた気配すら感じ取れずに意識を刈り取られてしまいました。
堕ちゆく少女のモノガタリ 雪川美冬 @mifuyu3614
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