堕ちゆく少女のモノガタリ
雪川美冬
序章
魔法。それは物語にのみ存在する幻想的な力。
非現実的な力の象徴である魔法は憧れと羨望ともし使えたらという空想から若人を中心に夢見てきたもの。
実際に存在はせず非科学的でありもしない正しく幻想論者の作り上げた非現実な力。
そのはずだった。
2×××年。宇宙探索中に見つけた地球と同等の大きさを誇る惑星。太陽から遠く離れた場所に位置する氷に覆われた惑星。
そんな惑星に人間と近しい見た目の生命体が存在していた。
地球人と違う点といえば一つだけ、魔法というものが使える点だ。
地球人が憧れ羨望し夢見た力をその惑星の人々は持っていた。
氷に覆われた寒々しい惑星でも魔法があるおかげで何の苦も無く地球人と同じように何千年も生物の頂点に君臨していた。
その惑星の生物は皆等しく魔法を使う。
動物も植物も魚類も。
氷の中を泳ぐ魚たちを地球の魚と同等に捉えるのは良くないのかもしれないが。
そんな氷の覆われた惑星が見つかってから数日か数年か数千年か経った頃、その惑星が滅びを迎えた。
隕石によって粉々に散った惑星。その惑星のカケラの一つが地球に降り落ちた。
聳え立つ山々から湧き出る清流の川、そしてそれに支えられる広大な畑が一瞬にしてクレーターへと変わった。
そして一つの市を丸ごとクレーターへと変えた隕石の中には白銀の髪を持つ少女が埋められていた。
その少女の名はアーリ・ルーティリー。
アーリが地球にやってきたことで地球人にも魔法が使えるようになった。
ある日突然に魔素と呼ばれる気体が発見された。そしてアーリが地球に来てから半月後、アーリを中心として地球人の体内からも魔素が発見された。外とは濃度は違くとも、確かに存在していた。
地球人の体内から魔素が見つかった数年後今度は魔法を使える人物までもが現れた。
しかしその頃にはアーリは何処にいるのか消息が絶たれていた。
アーリという存在を研究し自分たちの体に宿った未知なる力をさらに強固にさらに多種な魔法を得ようとその日からアーリは狙われ続けた。
アーリが地球に来てから約三〇年後、魔法を扱えるものが急激に減っていった。ある日突然、パタリと使えなくなっていった。
各国の研究者たちはこぞって再び魔法という名の奇跡の力を得ようと力を注いだ。
その結果魔法が使えなくなった原因は魔素の減少だという事がわかった。
ならばなぜ、今まで地球に魔素が生み出されていたのか。その疑問の解消はあっさりと晴らされる。
アーリ・ルーティリーが地球に来た当時に一緒に落ちてきた隕石。あれがいつの間にやら魔素に全て変換されていた。そして、隕石として落ちてきた際に大気圏で焼けた隕石のカケラがそのまま魔素として降り注いでいた事がわかったのだ。
さらに、アーリ・ルーティリーが亡くなっていたことで彼女の体内から溢れ出ていた魔素が無くなったことも理由の一つだった。
魔素を生み出すために各国の研究者たちは擬似魔素というものを開発した。
魔法を使えた人間を殺し魔素をたっぷり含んだ水に漬けることで、その死体の水分が全て魔素へと変換するという代物だった。
一つの死体で作られる魔素は世界中の人間が半年間魔法を使っても尽きることのないほどの魔素量だった。
そうして再び魔法が使えるようになる。はずだった。
結果から言えば魔法は使えなかった。ただ一人を除いて。
夢咲まりや。彼女しか魔法は使えなかった。
彼女は白銀の髪を持った女子高校生だった。
そしてその少女の正体は、数年前に亡くなったとされるアーリ・ルーティリーの一人娘。
彼女は数多もの魔法を他者に分け与えることができた。
魔法が使えなくなってしまった地球で彼女の周りの人間のみが魔法を扱えるようになっていった。
たくさんの人たちが彼女の元へと押しかけ我こそはと魔法を強請った。
彼女のおかげでこの世界は今だに魔法を使えるものたちが世界人口の約半分ほど存在している。
そういことになっている。
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