第7話 古着屋

「次はどこに行く?」

「古着屋だ」

「たしかに服がすぐに欲しいなら古着屋だな。分かっていると思うが、あつらえるのには時間が掛かる」


 新品の服は売ってないのだな。

 次はそこに行こうと思ってたのに。

 仕方ない古着だけで我慢しておこう。


 古着屋に到着した。

 軒先にこれでもかと服がぶら下がっている。


「ひっ、お化け」


 俺を見た店員が腰を抜かした。

 失礼な。

 魔道具屋では何も言われなかったぞ。

 こっちの方が普通の反応だと少し傷つくな。


「これでも人間だ」

「失礼しました」


 服を眺める。

 女性の物はワンピースが多いな。

 それと紐で縛るタイプの上着だ。

 ボタンの代わりに紐と金具がある。

 ボタンの服もあるが値札を確認したら紐のより高い。


「なんでボタンのは高いんだ?」

「ボタンは削って作るから手間が掛かるんだ」


 ロバートが答えをくれた。


「ボタンの服はお洒落なのよ」


 槍を持っているクラウがそう言った。

 異世界の事情が少し分かった。


「店主、店にある古着を全部頂こう」

「全部ですか?」

「ああ、全部だ」

「金貨33枚ほどになると思いますが」

「買った」

「まいど。お化けなんて言ってすみません。これからもごひいきに」


「さすが魔導金属をポンポンと出せる人は違うわね。私にも魔導金属一枚くれないかな」


 クラウがそう言ってきた。


「今回の護衛が終わったら、ボーナスとして出そう」

「やった」

「さすがにそれはやめてくれ。金銭感覚が狂っちまう」

「リーダーは堅いんだから」


「私は魔水がいいかな」


 とニッキ。


「俺は魔力のこもった魔木の盾が欲しい」


 とレオン。


 みんな遠慮がないな。

 ペットボトルの水も木の板も簡単手に入るが、チップとしては破格になりそうだ。

 金銭感覚を狂わせてもな。


「今、買った服を一着好きなのをやるぞ」

「そうだな。チップとしてはそれぐらいが妥当だ」

「仕方ないわね」


 古着を100着ぐらい手に入れた。

 チップとして極天のパーティに一着ずつプレゼントした。


「クラモト、そんなに服を買ってどうするんだ」

「秘密だ」


 別に明かしても良いが転売ヤーは嫌われると言われているからな。

 波風を立てる必要もないだろう。


 地球のプラスチックのボタンが売れればなぁ。

 魔力を抜く魔道具を作って貰えばいいのか。

 でもなぁ、価値を落として売るのも馬鹿らしい。


「魔力のこもったボタンとか糸とか売れる?」

「売れるぞ。魔道具に仕立てれば、貴族共は喜ぶだろう」

「なになに? 入手できるの?」

「できるけど欲しいのか」

「光って見える糸で刺繍したら、お洒落じゃない」


「お洒落かどうか分からないが、目立つだろうな」


 輸出品にボタンと糸を加えておこう。


「そんなのより、魔木の杖が欲しいわね」

「俺は魔木の板」


 二人はまだ諦めてないらしい。


「適性価格なら売ってやるぞ」

「仕方ないわね。貯金するしかないか」

「俺は死ぬ気で警護して、命の恩人になって、木の板を貰う」

「ボタンと糸をよろしく」

「それも適性価格で売ってやる」


「えー、けち」

「クラモトに無理を言うな。分かるよな」

「はい、リーダー。更地になったら困るからね」

「ええ。命あっての物種ですわ」

「分かった。何でも防御できるとは限らない」


 何か特別な頼み事をする事もあるだろう。

 その時のネタとして覚えておこう。

 輸出品を増やすのは追々でいいだろう。

 とうざは水と小銭で良い。

 次は武器が見たいな。

 地球で売るなら剣だな。

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