第2話 まだ10秒も経過していないぞ!!
ハゲ「ではこれから適性検査の冊子を配ります。受け取ったら横の人に渡してください」
ハゲ「開くと右上に説明があり、右下に練習問題があります。次のページを開くと本番の問題になります。
ハゲ「終わりの声をかけたら、手を止めてペンを置き、下敷きを左半分に置いて隠してください」
ハゲ「では始めます。あいうえお と あいうおえ という2つの間に下線があります。左右があっていれば〇、間違っていれば×を入れてください」
なんという低俗な問題であろうか。5歳の幼児でも答えられる問題を、なぜ今やらせるのか。
スーッ、カッカッ、カッカッ、スーッ、スーッ
ハゲ「はいここまで! 練習問題は順に〇、×、×、〇、×です。では本番に入ります。ではスタート!」
たた他愛もない。
青い冊子のページをめくると、練習問題と同じの間違い探しが大量にならんでいた。天界では意思が働くだけで即時に物質への干渉が行われる。人類は手足を使って黒鉛を刻む、面倒なことをする生物だ。
スーッ、カッカッ、スーッ、カッカッ…
ハゲ「はいそこまで。下敷きを右に置いたら、次は枠内に三角形△を連続で早く書いて下さい」
なんだと? 記号をただ書くだけを繰り返す。理解不能だ。
ハゲ「左から右、一段下げて左から右の順で書いてください。この順番は守ってください」
「人類も地に落ちたか…」
「織江さん、準備は大丈夫ですか。ではスタート!」
スッ、スッ、スッ。
人体の指先が慣れるまで苦労したが、天使ウリエルにできぬものなし。イデアの三角形に限りなく近い像を紙面に擦り付けていく。この美しさに文句は無かろう。
スッス「はいここまで!!」
「なっ!?」
△ /
「まだ10秒も経過していないぞ!!」
ハゲ「これは、繰り返し作業と集中力の適性を診断するテストなので、時間は短いです」
ハゲ「織江さんは…1個ですね。手を早く動かしてください。10代だと1行と半分が平均と言われています」
プチン…
全知全能の神の使いである天使ウリエルが、このような屈辱を受けるのは本日2度目だ。
脳容量と器用さだけで地球を制圧したホモサピエンス種に、天界の力を見せてやろう。
ハゲ「では本番を始めます。はい、スタート!」
「|高速化(アクセラレーション)!!」
カカカッカカカッカカカッカカカッカカカッ!
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∇∇三三三三∇∇三三三三∇∇三三三三
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時間感覚を人間界の5倍にし、スローモーションにすることで美しい三角形を正確に素早く刻むことができる。
カカカッカカカッカカカッカカカッカカカッ すぅーっ(行変更) カカカッカカカッカカカッ
ハゲ「はいそこまで! 書くのをやめて、下敷きを置いてください」
「見よ。これが我の力だ」 ペラリ
ハゲ「三角形が全ての枠で埋まっていますね。しかも正確に。10年ほど教習所で見てきましたが、最後まで書ききった方は初めてです」
「人類の10年なぞ、我の20億年には程遠いわ」
ハゲ「? では次に進みますね、上と下が付いてる〇以外に斜線を…」
天界の力を使った事で、かなり霊力を消費してしまった。高速化に人間の指先が耐えられず、人体破壊の激痛の副作用が起きた (指がつった)。人間とは脆いモノだ。
子供だましレベルの問題が続いた後、最後に人の精神面の問いが来た。天使の我には迷いや悩みはないため白紙で出そうとしたが、ハゲが必ず埋めろとしつこいので はい いいえ を適当に刻んだ。
「これで適性診断は以上になります。食事後、15:40から運転シミュレーション、16:40から実際に車に乗りますので、これからは各自で責任もって行動してください」
「遅刻した場合は、卒業予定日から2日ズレます。学科の日程は国に申請して行っていますので、指定した日時以外に受けられません。忘れないように」
我はその後、クルマという炭素の化学反応で車輪を動かす鉄の塊に乗ることになった。
指示された通り、待合室で初心者マークをもって待っていた。
「はい、織江さんですね。緑の教習手帳を出してください」
トゥンク…
それはヘーラーとも引けを取らない若く美しい女性であった。(カールヘアーで黒髪のメガネっ子)
合宿免許卒業まで、あと14日
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