#12 告白

#12 告白



日曜日にしては早起きをして準備をする


颯太に可愛く思われたい。紗奈に選んでもらった服を着てお母さんに綺麗に編んでもらった髪に可愛いヘアピンをつけた。


可愛い私、ありのままの私、全てを知ってほしい。


「可愛いよ」


後ろからお母さんが言う


「ありがとう、自信ついた」


鏡に映る自分を見つめる。


「言える」


小さく呟いた。



待ち合わせよりも15分ほど早く着いた。少し早く来過ぎたかと思ったが遅れるよりは良いと思い直した。


心臓がドキドキする。颯太が来る前になんとかして落ち着かせなきゃと胸に手を当てる


鼓動が速い、でもそれが心地良くも感じる。


早く会いたいな


そう思った時


「おはよう深結、ごめん待たせちゃって」


「ううん気にしないで、私が早く来ちゃっただけだから」


予定よりも10分ほど早く集合した。


「じゃあ行こっか」


「うん」


上手く話せない、あんなに準備してきたのに。頑張れ私、頑張れ私


心の中で自分を励ます。


「成瀬君」


「ん?」


成瀬君がこっちを向く


「テスト勉強..なんの教科のお勉強するの?」


もっと他に良い話題はなかったのかと数秒前の自分に言いたい。


「社会系は基本暗記だから今日は数学とかやろうと思ってる」


「そっか、じゃあ私もそうしよっかな」


緊張してる割には上手く喋れたのではないかと心の中でガッツポーズをする



カフェに着くと昨日紗奈と座った席に座る


「あらら、深結さん今日は彼氏さんとですか。良いですね青春って感じがして」


席に着くやいなやお店の人が声をかけてきた。店長さんだった。このカフェには中学生の頃から紗奈とよく来ていたから今はすっかり常連さんだ。店長さんはダンディーな人で常連さんには時折サービスをしてくれたりする優しい人だ。


「えっ..えと..とも..友達です」


深結は顔を赤くして店長さんに言う


「これはこれは失礼致しました。でもお二人ともすごくお似合いだと思いますよ」


そう言うと店長さんはにこっと笑ってその場を去って行った


「良い人そうだね」


「うん、良い人だよ」


店長さんは深結が解離性遁走を患った時も紗奈と一緒に話を聞いてくれたりと助けになってくれた人だ。


「ご注文がお決まりしだいお呼びください」


女性の店員さんがそう言ってくれた


「いつもは何頼んでるの?」


「えーっとね、私はこのアイスカフェラテが好きかな」


深結はメニュー表のドリンクの欄の中を指差す


「美味しそうだね、それにしてみよっかな」


「私もそれにしよ」


深結が店員さんを呼ぼうとすると、それよりも早く成瀬君が店員さんを呼んでくれた


「このアイスカフェラテ二つお願いします」


先ほどの深結と同じようにメニュー表を指差す。



深結と颯太はカバンから参考書とルーズリーフを取り出した


深結はさっそくシャーペンを走らせた


「それ難しいやつじゃん、やっぱ深結はすごいね」


颯太が使っている参考書のは深結が使ってる物と同じシリーズの深結のより一つレベルが低いものだった


「ありがとう、でもこれ基礎的なやつも結構載ってるから最初からこれ使っても意外といけるよ」


「そうなんだ、ちょっと見せて」


颯太は深結の参考書を覗き込む


「これとか比較的簡単だよ」


深結はシャーペンで問題を一人差した


「ちょっとやってみる」


「うん」


深結は颯太が見やすいように参考書の向きを変えた


「ありがとう」


颯太はお礼を言って問題を見つめる


早々にルーズリーフに式を書いて、解き始める


途中でシャーペンの動きが止まった


「わからないとこあった?」


「うーん、ここまではできたんだけど...」


颯太のルーズリーフに視線を下ろす


「確かにここは初見だと難しいよね」

「えーっとね、ここをこんな感じで式を変形していくと、綺麗に約分できるようになるよ」


深結は実際に自分のルーズリーフに書きながら説明した


「そういうことか!ありがと、深結」


「う..うん」


緊張してる、反射的にそう感じた。


緊張と颯太と一緒にいられる嬉しさが混ざって不思議な感覚になる



「こちら、ご注文のアイスカフェラテお二つになります」


「ありがとうございます」

「ありがとうございます」


颯太はアイスカフェラテを受け取ると一つを深結の前に置いた


「おいしいね」


颯太は一口飲んでからそう言って微笑んだ


「良かった」


深結も微笑んだ。



お互いにわからないところを教え合ったりして、楽しい時間を過ごした。


気がつくと外が夕焼け色になっていた


「そろそろ帰ろっか?」


「そうだね」


二人は勉強道具を片付けて席を立つ


レジの前で深結がお財布を出すと


「僕が払うよ」


と、颯太は自分の財布から千円札と小銭を出した


「悪いよ、私も払うよ」


「たくさん勉強教えてもらったから、そのお礼」


颯太はそう言いながらお会計を終えた


「あ..ありがとう」


「こっちこそ、今日はありがとね」




二人は肩を並べて歩いている。少しして予定の場所に着いた


「成瀬君、ちょっと良いかな?」


「うん、どうしたの?」


深結が立ち止まって、数歩先で颯太も立ち止まって深結の方に振り返る


深結は一度深呼吸をしてから口を開く


「好きです、私と付き合ってください」


今までみたいに怯えずに、はっきりと颯太を見つめて言った


「私は人が怖かった。上手く喋れなくて、周りから浮いちゃうこともあった。でも颯太は私のことを受け入れてくれた、普通の友達として。私の気持ちに共感してくれた。全てが嬉しかった...もう..好きになっちゃうよ.....」


予定になかった言葉、自分でも止められなかった


微笑んで颯太をじっと見つめる


「こちらこそ、よろしくお願いします」


数秒の沈黙の後、颯太は答えた。


 

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