好き

シヨゥ

第1話

「キスをしてもいい?」

「いいけど」

 ついばむ様なキス。

「もう一度」

 少し長めにキス。

「その気になっちゃうから」

 そう言って押し戻された。

「それじゃあ抱きしめていい?」

「いいけど」

 そっと抱きしめる。

「なにかあった?」

「こうしたいだけ」

「そう?」

「ごめん。嘘」

「そっか。でも理由があるんでしょ?」

「ちょっと不安」

「そっか」

「キスをして、抱きしめて、確かめたかったし、示したかった」

「なにを?」

「好きだってこと」

「どうだった?」

「まだ大好きだって確かめられた。伝わったかな?」

「十分」

「それは良かった」

 彼女からゆっくりと離れる。

「でももっと言葉にしてほしい」

 顔を赤くした彼女はそう言う。

「キスは嫌い?」

「好き」

「抱きしめられるのは嫌い?」

「好き。だけど、言葉も欲しいの。キスもなにもかも好きだからしているのかが分からくなるから」

「うん、分かった。僕は君が好きだ。でも言葉じゃ表せないほど君が好きだ。だからこれからもキスをしたり抱きしめたりするよ」

「それはいいよ」

「良かった……もう1つ質問、いいかい?」

「どうぞ」

「君は僕が好きかい?」

 そう問いかけると彼女が背を向けた。

「好き、だよ」

 その言い方がかわいくてつい抱きしめてしまう。

「なんで抱きしめるの?」

「顔を見られたくないだろうと思って」

 適当な理由。でもそれもまた本心。

「あり、がとう」

「泣いている?」

「泣いてない!」

「そっか。じゃあちょっとこのままでいていい?」

「うん」

 抱きしめても抱きしめたりない。キスしてもキスしたりない。好きすぎて好きすぎて不安を覚える。ああ僕はこの子が心の底から大好きなんだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

好き シヨゥ @Shiyoxu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る