第136回 正欲 その1
「正欲」は、朝井リョウの小説です。第34回 柴田錬三郎賞、第5回 未来屋小説大賞、第3回 読者による文学賞を受賞しています。
更に第38回 織田作之助賞の最終候補となり、2022年の本屋大賞にノミネートされました。
作者の作家生活10周年記念作品でもあります。
※今のところ実写化等はされていません。でも、この方の著作「桐島、部活やめるってよ」は俳優の神木隆之介主演で映画化され、「チア男子!」は漫画化・アニメ化されています。「正欲」も期待したいところです。
※2023年に映画化が決定しました。
引きこもりで、youtuberに憧れる息子を持つ検事と、寝具店の販売員を勤める異常性癖を持つ女性とその中学校の同級生、今まで男女交際の経験のない大学生の女子と、想う人。
人知れず生きづらさを抱える彼らの人生が、ある事件を軸にして重なりあいます。
セクシャルマイノリティである私の心にずしんと来る物語でした。もちろんそうでない方でも、少しでも「自分は普通の人とちょっと違う」と感じた事のある方達にぜひ読んで欲しいです。
—―■児童ポルノ摘発、小学校の非常勤講師や大企業の社員、大学で有名な準ミスターイケメンも 自然豊かな公園で開催されていた小児性愛者たちの“パーティ”—―(正欲 P.9)
児童ポルノ摘発という衝撃的な事件から物語ははじまります。
その後、一見関係なさそうな登場人物のそれぞれの日常が淡々と進んでいきます。
—―「学校だけが全てじゃないって言葉に、あの子は励まされたんだと思うの。時代的にも、学校に行って就職してっていうのとは違う形で生きていける社会になりつつあるのかもしれないし」—―(正欲 P.24)
検事という社会的地位からか、息子が引きこもってドロップアウトした事を相当遺憾な事だと感じています。
でも、妻の由美は息子がyoutuberに憧れるようになってから元気になった事を喜んでいました。
—―「桐生さんってなんっにも話さんよね。私は何もかも話しとるのに」—―(正欲 P.34)
同じイオンモールの向いの店舗の販売員、
でも夏月は沙保里と同じテンションで返す事が出来ません。普通とは違う特殊性癖を持っているからです。
私には夏月の気持ちが良く分かります。普通の人達とはどうも話が合わないのです。
—―八重子は彼氏がいたことがない。家族以外の異性に触れたことも、触れられたこともない。—―(正欲 P.37)
それどころか、男性恐怖症に近いです。
—―八重子は、脚の間に挟んだ毛布が、ぎゅうと潰れ、ねじれていくのを感じる。
いつか、よし香が言っていた「ジュウォン様は子宮にくる」と。初めて聞いたとき、八重子は、その言葉の意味がわからなかった。だけど周囲の友人たちは「マジでそれ」「それでしかない」等とひたすら同意しており、大きな疎外感を抱いたものだ。
大也の写真を見ているときだけは、なんとなく、その意味がわかるような気がする。口でも心臓でもないのに、呼吸によって伸縮する場所がもうひとつあるような気がする。—―(正欲 P.51)
よし香は八重子の友人で、同じ金沢八景大学に通い、二人は学祭の実行委員です。
「ジュウォン様」というKPOPアイドル推しで、「現実の彼氏はいらない」と言う程のアイドルオタクです。
そして
今まで男が怖くて仕方なかった八重子が、初めて怖くないと感じた人なのです。
それどころか、性欲(ここではこちらでしょう)を感じたようですね。
◇◇◇◇◇◇
読んでいただきありがとうございました。
次の第137回も引き続き「正欲」です。お楽しみに。
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