第125回 レジェンドアニメ その2

 続きです。


 第三章の章題は「夜の底の太陽」です。


 ある団地に捨てられたネコの「ザクロ」を引き取ってくれた「メガネのお姉さん」、名前は出て来ませんでしたが斎藤監督です。これは第五章の「ハケンじゃないアニメ」で明らかになります。


 自分の正体は明かさずに、さりげなく「サウンドバック」を観る事を勧めています。



 第四章の章題は「執事とかぐや姫」です。


 中心となる女性と、その相方を比喩した題。ハケンアニメっぽいですね。


「執事」の逢里哲哉は、作品中の言葉を借りれば「フィギュアバカ」です。ある仕事で掲載する写真を間違えるというとんでもないミスをしでかしましたが、そのおかげ(?)ですごい人と知り合うきっかけが出来ました。


「かぐや姫」の鞠野まりのカエデ。業界最大手の老舗フィギュア会社「ザ・ワン」を辞めて、フリーになったカリスマ造形師です。


—―「部長、俺、話しかけてきてもいいですか」

「え? だけど面識とか」

「ないです! だけど、行ってきます」—―(レジェンドアニメ P.118)


 すごい行動力ですね。見習いたいところです。


 でも、残念ながらこの時はそっけない対応をされてしまいました。


 その後、2人は偶然出会い、いい感じになります(あくまでも仕事上で)。



 第五章の章題は「ハケンじゃないアニメ」です。


 七年目のプロデューサー、和山和人が担当している『お江戸のニイ太』は今年三十周年を迎える長寿アニメです。


 ある特定の期を意識せずに安定したヒットが見込まれる存在で、多くのアニメが『覇権』を目指してしのぎを削る中、いわばその外側にいる存在なのです。


—―「うち、子どもの頃、家があまり裕福じゃなくて、テレビを見る習慣がなかったんです。アニメを観るようになったのも大学時代からで、『ニイ太』のことはキャラクターとしてはもちろん知ってましたけど、このお話をいただいてから、ようやくちゃんと観たっていうか。実はロボットだったんだってことも、最近、初めて知りました」—―(レジェンドアニメ P.153)


 斎藤瞳監督がニイ太の担当になりました。でも、ニイ太への思い入れからこの仕事を受けたのではない様子です。


『お江戸のニイ太』は、江戸時代を舞台にした漫画を原作にしたアニメです。寺子屋の大賀先生が作った、ネコに見せかけたカラクリロボットという設定。


—―「大丈夫ですよ。私は確かに、『ニイ太』は観ていなかったし、愛はないかもですけど、私、そもそも『愛』で仕事する人のこと、苦手っていうか—―あんまり信用していないんですよね」

「え?」

「愛って、すごく、曖昧だから」—―(レジェンドアニメ P.171)


 今まで「覇権」を争うようなアニメを手掛けて来た瞳にとって、ニイ太のような仕事は物足りないのではないかと心配した和人への、瞳の答えです。


「愛で仕事する」ある作品への思い入れが強すぎると、思いどおりにならなかったり、上手くいかないとその反動もすごくてムキになったり、弊害もあるからです。


—―七神さんの、この現場の一番のやりがいは、自分が引退した後も、『ニイ太』がずっと回っていくチームを作ることですよ」—―(レジェンドアニメ P.196)


 七神昇平ななかみしょうへいは60歳になるベテランプロデューサーで、『お江戸のニイ太』の立ち上げの頃から支えていました。その七神が辞める事になったのです。


 和人達若手が十分に育って来たから、自分が再雇用を受けるよりも後輩達に後をまかせようと考えたからでした。


—―愛がないんじゃない。むしろ、愛に満ちてる。だけど、オレの大好きな人たちは、「愛を言い訳にしない」人たちなんだ。—―(レジェンドアニメ P.204)


 瞳は、『お江戸のニイ太』を徹底研究し、和人や昔からのファン達も唸るような良い仕事をしました。

 

◇◇◇◇◇◇



 読んでいただきありがとうございました。



 次の第126回も引き続き「レジェンドアニメ」です。お楽しみに。

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