第123回 徴産制 その4

 続きです。


 第四章は「キミユキの場合」です。キミユキは妻子がいるにもかかわらず、産役男に志願します。元々はお金のためでしたが……


—―父を起こし、着替えの介助をする。その最中、父がキミユキの胸をさわった。

「な、何すんだよ!」両手で胸を覆い、体をよじった。

「固いな。そのおっぱいにせもんか?」

「パッド入りのブラジャーだよ……Aカップだから」—―(徴産制 P.164)


 キミユキの親父はとんでもないエロおやじでした。なんと女になった息子にセクハラをします。


 さらにこの後、着替えを覗いたりお尻を触ったりとやりたい放題です。


—―「え、したいの? 女の体見てムラムラすんの?」

 アカネがあけすけに聞く。

(中略)

「でも、それって女同士でセックスしようってことだよね。あたしだったらムリ。死んでもムリ」

(中略)

「でもちんちんはない」とアカネがぴしゃり。—―(徴産制 P.174、P.175)


 キミユキは保育園のママ友達とあっけらかんと夜の生活の話をしていました。こういうの面白いですね。


—―ペニャ先生は子供たちに次のように語ったという。

「人間は、オトコのコとオンナのコの二つに分かれてるんじゃなくて、ひとりの人間のなかにオトコのコとオンナのコの両方がいるんです。そのどっちが多いかは人によっても違うし、どっちを多くしたいかは自分で決めればいい。みんなもそのときの気持ちにあわせて好きな恰好をしてください」—―(徴産制 P.194)


 ペニャ先生はタイ移民二世の保育士です。


 いいですね~ペニャ先生。幼い子供達にもこれならわかりやすいでしょう。


—―サクラが、ウェアラブルPCを操作し、ワッカナイ大学再生医科学研究所のHPの画像を見せた。女性へ性転換する男性に比べると男性へ性転換する女性が圧倒的に少ないため、その費用の九割を大学が負担しますのでモニターになりませんか、という募集告知であった。—―(徴産制 P.195)


 キミユキは女になってから妻のサクラとぎくしゃくしていましたが、ひょんな事から解決します。


 結局女になったキミユキと、男になろうとしたサクラの夫婦は無事、仲直りしました。めでたしめでたし。



 第五章は最終章。「イズミの場合」です。イズミはテーマパーク「スミダリバーランド」を運営するセンリンという会社の副社長です。


—―「女とセックスしたいという欲求はとりあえず置いといて、単純に、生身の若い女の子を眺めて楽しんだり癒されたい男だっていると思う。十年前の日本のように、若い女性が当たり前に歩いていたり働いていたりする日常の風景を見たい、そんなごく普通のことを望んでいる男性は多いはずだよ。そういう風景を復活させたテーマパーク、そこに行けば若い女性に必ず会える場所が、今必要なんだよ!」—―(徴産制 P.204)


 これはまさにそのとおりではないかと思います。かくいう私もそういう機会は絶対に必要と思います。


 このテーマパークが「スミダリバーランド」です。


—―「もうこれ以上、日本の若い女性を絶望させてはいけない。だから、若い女性が働ける場所、仲間を作れる場所、ほっとできる場所が早急に必要なのです。そして家に引きこもっていたり、好きな服を着て歩けなかったりする産役男や女性たちに、青い空の下で自由にふるまえる空間を提供したいんです。最終的に私が作りたいのは全女性のためのテーマパーク。そのテーマは『男のいない国』です」—―(徴産制 P.214)


 中高一貫校でイズミと同級生だったマルオは、スミダリバーランドについてイズミとは全く異なるコンセプトのテーマパークにするような案を出してきました。


 イズミの案が男のためのテーマパークなら、マルオの案は女のためのテーマパークです。


 マルオがそこまで女性のためを思うのは、女性には産役男のような国からの支援が無い等、不利な条件が多い状況にあり、その事に絶望した女性を多く見て来たからです。


 結局、最終的には双方の案を取り入れました。


—―イズミは、性別を容易に変えられる状況になって気づいたことがあった。たとえ自分が男のままで整形して美男子になったとしても、女性と話すのは下手だし、好きな相手が自分を好きになってくれる自信はまったくない。ならばいっそ、自分が好みの美女になればいい。

 そして美しい女の顔と体を手に入れたイズミは、自分自身に恋をした。ギリシア神話のナルキッソスのように、鏡にうつる女にキスをし、欲情した。

(以下自粛)—―(徴産制 P.224、P.225)


 このあとイズミは激しくひとりエッチします。とても引用出来ません。


 イズミは男だった頃はいじめられたり、見た目に自信がありませんでした。イズミが産役に志願したのもそんな事情が関係しています。


—―イズミは今でも自分の顔と体を愛している。それに勝る女はあらわれず、男にも興味がなく、自慰を続ける処女のままである。—―(徴産制 P.243)


 スミダリバーランドの運営会社「センリン」の社長、林と不倫関係にあるという噂がネット上で流れ、役員会で問題にされました。でも、マルオの活躍でイズミの役員解任動議は否決されます。


 ビジネスの話のほかは、イズミは林に裸を見せていただけでした。


—―マルオは、大学入学直前に産役の招集令嬢を受け取ったとき、ひそかに心に抱いていたことがあったという。

「男である自分の精子と女になった自分の卵子とを受精させてみたい」

 倫理よりも医学的研究心が勝った。そして、自分の精子を採取して凍結保存、性転換して女になると自分の膣にその精液を注入し、妊娠、出産した。—―(徴産制 P.247)


 なんと、マルオの娘はこうして生まれたのでした。


 後日、イズミと再会した時に、「他人から見たら私達は変態だ」と言っています。


—―「この前、内閣府が行った調査を読んだんだよ。それによると、十八歳から三十歳までの男性の半数以上が徴産制賛成で、その理由の第一位は『国から金がもらえるから』。反対する理由の第一位は『女になりたくない』からではなく『産事教練や赴任先での共同生活が嫌』なんだそうだ。徴産制はとうに、性別を選ぶ自由の問題じゃなくなっている」—―(徴産制 P.250)


 林がイズミとマルオに言ったセリフです。


 性別を自由に選べる世の中になったら、こんな結果になるのでしょうかね。


 自分がもしこういう世界にいたらどうするだろうかと、色々考えさせられるお話でした。


◇◇◇◇◇◇



 読んでいただきありがとうございました。


 もし、なる程と感じる所がありましたら、ぜひ★評価や♡評価とフォローをお願いします。


 よろしければ、私の代表作「妻の代わりに僕が赤ちゃん産みますっっ!! ~妊娠中の妻と旦那の体が入れ替わってしまったら?  例え命を落としても、この人の子を産みたい」もお読みいただけると嬉しいです。

https://kakuyomu.jp/works/16816927860596649713


 次の第124回は「レジェンドアニメ」です。お楽しみに。

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