第105回 ドクター・ホワイト 神の診断 その2

 続きです。


――「病院内で調べたところ、Rh因子がすべてネガティヴだった。この情報を将貴に託した兄の意図がちょっとわからなくなってきて、それで改めてしかるべき公的機関に『Rh null』の保有者情報の紹介をかけてみたの。そうしたら先日結果が出てきて……」

(中略)

 そこには、日本中のほとんど誰もが、名前を聞いただけで顔がイメージできる有名な起業家の名前がプリントアウトされていた。

 海江田誠かいえだまこと

 25歳で通信システムの開発ベンチャーを企業し、32歳で上場。その後、多くのIT企業を吸収しながら事業を拡大していき、日本最大のインターネット企業に育て上げた実業家だ。

 総資産1兆円を超えると言われているこの人物が、日本人では白夜を含めてもたった七人しか把握されていない、このレアブラッドタイプの保有者だったのである。――(ドクター・ホワイト 神の診断 文庫版 P.132、P.133)


 Rh nullとは血液型の一つです。パートⅠのラストで出てきました。赤血球の表面には最大342種類の抗原があって、これで血液型が決まります。血液型はいわゆる「A・B・O・AB」型や「Rh+・Rh-」以外にもありますが、この「Rh null」は抗原を一切持たないのです。そのため、この型の血液は誰にでも輸血する事が出来、黄金の血と呼ばれています。


――「いい度胸をしているね、君は」

 なんの前触れもなく、彼は言った。

「この海江田を甘くみているわけでもなさそうだが」

 一瞬、どういう意味だかわからなかった。

 あっけにとられている将貴に向って、海江田はわずかに顔を近づける。

「命がおしくないのか」――(ドクター・ホワイト 神の診断 文庫版 P.189)


 完全に脅迫罪ですね。


――カンナの病状は、余命宣告を受けるレベルだということにほかならなかった。

――(ドクター・ホワイト 神の診断 文庫版 P.193)


 カンナは卵巣妊娠していましたが、更にもう一つの卵巣には癌が出来ていました。しかもその卵巣癌は原発ではなく、大腸癌の転移です。それだけではなくその大腸癌は低分化と呼ばれるたちの悪いタイプのものです。通常ならば手の施しようがない状態といってもいいでしょう。


――「俺は、白夜を守る。あんたたちから、ぜったいに守ってみせる。彼女を二度と、白い壁の中に連れ戻させたりはしない」――(ドクター・ホワイト 神の診断 文庫版 P.199)


 将貴カッコいいですね~。しかし……


――声を上げる間もなく、口を男の大きな手で塞がれた。ツンと鼻をつく刺激臭。声を出そうと思わず息を吸い込む。

 その瞬間、抵抗する間もなく目の前が真っ暗になる。

 遠のく意識の向こうで、何人かの男たちの話す声がした……。――(ドクター・ホワイト 神の診断 文庫版 P.231)


 将貴は海江田にケンカを売り(?)、逆鱗に触れたようです。妹が拉致されてしまいました。でも間一髪の所で救い出されます。良かった。


――「その知名度を利用して、『クラウドファンディング』でお金を集めるのよ」

――(ドクター・ホワイト 神の診断 文庫版 P.264)


 カンナを救う治療法は画期的でしたが、とてもお金がかかります。そこでクラウドファンディングを利用します。


 クラウドファンディングとは、群衆という意味の言葉である「Crowdクラウド」と「資金調達(Funding)」という言葉を組み合わせた造語です。インターネット上で不特定多数の人に資金提供を呼びかけ、サービスや商品の趣旨・個人の想いに賛同した人から資金を集める方法です。


 資金を集めたい人は起案者と呼ばれ、クラウドファンディングのサイトに自身のアイデアやサービスを掲載してプロジェクトを開始します。


 そして、資金提供する人は支援者と呼ばれ、自分の気に入ったプロジェクトを見つけて、サイトを通じて起案者に資金を提供する仕組みです。


 例えば、日本での成功事例として有名なのが片渕須直監督のアニメーション映画「この世界の片隅に」です。


 なんと約3,900万円を集めて制作、公開まで達成しました。



――彼女を見て、あらためて将貴は確信した。

 間違いない。

 白夜は、海江田朝絵のクローンとして誕生した人間なのだ。――(ドクター・ホワイト 神の診断 文庫版 P.290)


 朝絵は、ドラマ版では白夜を演じた浜辺美波が一人二役で演じました。


――今回の手術のリーダーである勇気によって、術式の説明がされている。手術プランの設計は勇気と白夜が行った。大腿部だいたいぶから管を挿入して、その中をマイクロ・カテーテルという非常に細い管を通し、慎重に脳動脈りゅうの患部に到達させていく。そのうえで、患部の動脈瘤をまたぐ形で、網状のステントというものを血管内に設置して、この網目を通してプラチナ製のコイルを送り込み、動脈瘤を満たしていく治療法だ。――(ドクター・ホワイト 神の診断 文庫版 P.305、P.306)


 将貴の妹、晴汝は脳動脈瘤を患っていました。放置すればクモ膜下出血等を引き起こします。


 でも、晴汝の場合には動脈瘤の手術が困難な状態にありました。しかし、麻里亜の兄、勇気の手によって命を救われます。


――「でも、たぶん将貴さんは誤解してると思います。私はショックなんか受けてません。だって、知ってたから」

「なに?」

「私、知ってたんです。自分が誰かのクローンで、いずれはドナーとして体を使われることになるって」――(ドクター・ホワイト 神の診断 文庫版 P.312、P.313)


 なんと、白夜は自分がクローンである事を知っていたのです。


――晴汝を救い勇気がまた失踪しっそうしてから三ヵ月近く経った頃、滝カンナは男の子を出産した。

(中略)

「そうです。三大療法のうち、手術では、臓器やリンパ節を取り去りますが、それが人間の癌と闘う力を弱めている可能性は否定できません。抗がん剤ははっきりと発がん性があり、なおかつ細胞毒でもあります。放射線はそもそも、癌を作るものとして知られています。でも、私が使った代替医療は、どれをとっても人間の本来の免疫機能を毀損きそんしません。つまり、ちゃんとコーディネイトしてやれば、矛盾せず全ての療法が相互補完的に働いてくれる可能性があるということなんです」――(ドクター・ホワイト 神の診断 文庫版 P.321、P.322)


 白夜の考案した治療法で、カンナはまたしても命を救われました。


――ここは白夜を育んだ子宮なのだと思った。

 居心地がいいわけでもなく、ぬくもりがあるわけでもない胎内。

 でも大丈夫。

 もう彼女はここに戻ることはない。

 白夜は人間として生を受けたのだ。――(ドクター・ホワイト 神の診断 文庫版 P.326)


 ここで言う「子宮」とは、白夜が育てられた研究施設の事です。将貴と白夜はここを訪れました。

 普通の人にとっては居心地がいいはずの子宮。白夜にとっては違うのですね。


 ドクター・ホワイトシリーズ、まだまだ続きます。


◇◇◇◇◇◇



 読んでいただきありがとうございました。



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 よろしければ、私の代表作「妻の代わりに僕が赤ちゃん産みますっっ!! ~妊娠中の妻と旦那の体が入れ替わってしまったら?  例え命を落としても、この人の子を産みたい」もお読みいただけると嬉しいです。

https://kakuyomu.jp/works/16816927860596649713



 次の第106回は「この素晴らしい世界に祝福を!」の秘密に迫ります。お楽しみに。

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