第35回 長編小説の仕上げ方 その3
みなさんは、長編小説と言うとどれくらいのボリュームをイメージしますか?
私は、当初かなりのボリュームをイメージしていました。具体的にはページ数にして200ページから300ページくらい。文字数にすると12万字以上くらいをイメージしていました。
でも、そんなになくても大丈夫です。
カクヨムコンの長編も10万字ですし、一般の作品にはもっと短いのもあります。
既に紹介した作品ですと、まず「蛇にピアス」があります。
この作品は、内容的に「こういう話を書きたい」と思っただけではありません。
変な話ですが、「これくらいのボリュームでも書籍化されるのか」と思ったのです。
蛇にピアスは文庫版で解説を除くと114ページ。文字数だと7万字に満たないボリュームです。
もっと少ない作品もあります。まずは「インストール」です。
これは172ページですからそれなりのボリュームに感じますが、まず一ページ当たりのボリュームが少なく、400字くらいです。他の作品、例えば蛇にピアスの3分の2程度です。
それだけではありません。「インストール」は2つの作品が収録されています。もう一つの作品は「You can keep it.」という短編です。
「インストール」のみだと134ページです。文字数だと6万字に満たないです。
続いて「人のセックスを笑うな」これも一ページ当たりのボリュームが少なく、400字くらい。
そして2作品が収録されています。もう一つは「虫歯と優しさ」という短編です。
「人のセックスを笑うな」のみだと120ページ。5万字強ですね。
他にもあります。松浦理恵子著「奇貨」。この物語は少し変わった百合ものです。レズビアンの七島と、ルームシェアしている中年男・本田の物語です。本田が七島を盗聴する事により、レズビアンの人達の悲哀を上手く表現しています。カラミがなくちょっと物足りないですが。
全体で201ページで、やはりもう一作品短編を収録しています。「変態月」です。
「奇貨」だけですと125ページ。5万字くらいです。
このように、短編と組み合わせる事により、思ったよりもずっと少ないボリュームでも十分長編小説として書籍化する事も可能です。
「なんクリ」こと「なんとなくクリスタル」は田中康夫のデビュー作です。第17回文藝賞受賞作品で、第84回芥川賞の候補になりました。ミリオンセラーをマークし、流行語にもなっています。女優のかとうかず子主演で映画化されています。
この小説は、東京で恋人と高級マンションで同棲しながらファッションモデルをする女子大生、由利の生活を中心に、1980年当時の流行や風俗を描いています。けっこうエロい描写もあるのでいずれ詳しく取り扱いたい作品です。
かとうかず子と言えば、東国原英夫の元奥さんだった事は有名ですね。近年は助演ですがコンスタントに色々なドラマや映画に出演しています。
この小説は225ページでそれなりにボリュームがありそうに見えますが、大部分が注釈で、物語そのものは半分くらいです。
一般の人が良く知らない用語の多い小説、例えば専門性の高い職業について取り扱った小説等であればこういう方法も使えるのではないでしょうか。
YOASOBIの「ハルカ」の原作小説を絵本にした「ハルカと月の王子さま」は80ページです。
放送作家・脚本家の鈴木おさむ著です。原作の「月王子」に大幅加筆し、新たなエピソードが加えられています。
文字はごくわずかです。絵本向きの作品ならば短編でも一冊の本にすることも可能ですね。
このような具体例を知れば、ずいぶん気が楽になるのではないでしょうか。
◇◇◇◇◇◇
読んでいただきありがとうございました。
次の第36回は引き続き「長編小説の仕上げ方」です。
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