「初恋の人ってどんなだった？」

　何の気なしに訊ねてみたところ、彼女は特に考えることなくすぐさま口を開いた。

「とても優しい人でね、

　迷子になっている子どもを見つけた時も一緒に話をしながら親を探してあげて、

　映画好きで、感動モノを見た時は涙をぽろぽろ流すくらい感傷的で、

　時には頑固で一度自分が決めたことについてはなかなか考えを変えなくて、

　私が海外で仕事があるから別居することになった時も、

　わざわざ何年も続けてきた会社を辞めてまで私についてきてくれて、

　そうかと思えば私のいびきがうるさいからと言って

　寝室を別にしようと提案してくるようなこともあって、

　私の誕生日には、いつもお店には出さないくらい高い具材を使った、

　お手製のケーキを用意してくれて、

　私が困ったときにそばにいていつも助けてくれる、

　ときおり見せる笑顔がとても素敵な人」

「ほんと、それって誰のことだろうね」

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