「ねえ、今通りかかった人、めっちゃDiorの香りしなかった？」

　電車の中、三人組の女子大生の一人はそう言った。

「え、そうだった？　私、全然気づかなかった」

「うん、私も」

「えー、絶対Diorだよー。あれはさすがに香水つけすぎだって」

「でもよくDiorだってわかったね」

「そりゃあわかるよ。だってDiorの香水つけている人結構いるもん。良い香りだけど、あーまたDiorだーって思うんだよねー。私はシャネルかな。オシャレな香りするし。香水ならやっぱりシャネルだよねー」

「「そ、そうだねー」」

　対面に座っていた女子大生たちを見て僕はこう思った。

　鼻につく会話だなあ、と。

　香水だけに。

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