「ナンバーセクシュアルというのはどういったものなんですか？」

　インタビュアーは物珍しそうにナンバーセクシュアルだという人間に問いかけた。

「簡単にいえば、特定の数字に対して性愛感情を抱くというものです。私の場合は４８という数字にそういった感情を持ちます」

「４８……ですか。差し支えなければお答えいただきたいのですが、この数字のどういったところにどのような性的興奮を感じるのですか」

「私の性別が７５なんですが、４８というと婚約数なんですね。こういった点ももちろん魅力ではあるのですが、４の鋭利な見た目と８の丸みを帯びたこの見た目こそがとても素敵だと感じます。不思議なことに４単体あるいは８単体、あるいは８４では何も感じないのに、４８に限って性愛感情を抱いてしまうのです」

「ナンバーセクシュアルはまだ世間で広く認知されていないと思いますが、理解されずに苦しい思いをしたことなどはありませんか？」

「自分がナンバーセクシュアルだと告げると、周囲の人間はただの数字好き、あるいは数学が好きな人だと勘違いされることです。確かにナンバーセクシュアルの人の中には数学が好きだという人がいるのは事実です。しかし、私のように別段数学が好きなわけでもなく得意なわけでもない人もいます。例えば仕事で表計算ソフトを使って、集計をしている際に４８という数字を見つけてしまって、仕事にならないなんてこともありました。その際に、上司に４８を扱う際にはほかの人に仕事を割り振ってもらえないかと相談したところ、何を馬鹿なことを言っているんだと一蹴されました」

「なるほど周囲の人になかなか理解されにくいということですね。ＬＧＢＴＱについては世間の理解がされつつありますが、まだまだ一般的に知られていないジェンダーであると理解されないこともありそうです。世の中には様々なジェンダーがあります。今回、番組でご紹介したナンバーセクシュアルはＮと略されますが、他にもＮと表記されるジェンダーは十三種類もあります。そして国が認定したジェンダーに新たにナンバーセクシュアルが加わり、これで五〇七種類となりました。数多くのジェンダーを知ることはより多くの人々を理解し、尊重することになるのではないでしょうか」

　インタビュアーの締めの言葉とともにエンディングの音楽が流れ始める。

　私はテレビを消してふと思う。

　何でもかんでも細かく分類すればいいというわけではないだろうに、と。