第16話活版印刷と原稿用紙の書き方
活版印刷って知ってます? グーテンベルクが発明したと歴史で習ったと思いますが、日本でも明治以降、昭和中期くらいまでは主流の印刷技術でした。
最近の印刷事情は良く知りませんが、近年では、名刺などを刷る時に使われるくらいらしいです。
何しろ人手も必要ですし、手間がかかりますから、デジタル化の波に呑まれて、廃れていく運命なのではないかと感じます。
私が第六話の「社長の道楽とカクヨムのスコップ運動」でお話しした、社長の出版社を手伝っていた頃は、パソコンの普及率も低く過渡期で、まだ活版印刷の本も多く作られていました。
私、結構好きなんですよ。活版印刷の本。
今見ると、古くさいと感じる人もいるかもしれませんが、古本屋さんなどでは、見かけるかもしれません。
明朝体の縦の線が細くて、くっきりシャープな印象。圧をかけて印刷するので、文字の部分の紙が少しへこんでいたりして。
できたての、新しい本を開くと、独特の匂いがあって、ゾクゾクしたものでした。
当時、東京下町にあった印刷所を見学させてもらったことがありました。
さほど広くない作業場に、何列もの棚が並べられていて、部屋一杯、どこもここも活字で埋まっていました。
それはそうでしょう、アルファベットだけの文章と違って、日本語は、ひらがな、カタカナ、漢字、そして各種記号などなど、無数とも思えるほど文字があります。
さらに、書体も色々、文字の大きさも何種類もありますから。
それを、すべて活字にして、どこに何があるのかわかるように整理しておかなくてはなりません。
職人さんは、原稿を基に、この棚から活字を一本一本拾って、「ステッキ」と呼ばれるものに並べて行きます。
活字を拾って並べることを「
小説一冊分、十万字だとすると、活字十万本、プラス、その他、本を構成する細かい活字を、職人さんが拾って行くわけです。
組み上がった版下を、試し刷りしたのが、いわゆる「ゲラ刷り」。または「校正刷り」です。
ゲラが上がったら、編集者は校正をします。最初の校正は「初稿」。著者に目を通してもらうのが「著者校」。
その後、「二校」「三校」と繰り返して、訂正箇所がなくなったら「校了」です。
この間は、印刷所の職人さんと編集者との間を、ゲラ刷りが行ったり来たりするわけです。
この他にも、装丁やイラスト写真の校正など、諸々あった後、印刷、製本過程を経て、ようやく本が完成するわけです。
ちょっと話がそれましたが、本が完成しても、職人さんの仕事は終わりません。
組んだ十万本以上の活字を、
ともかく、手間がかかる活版印刷は、熟練の職人さんによって支えられていたのですね。
で、これからが本題なのですが、私達が小説を書くときの決まり事。原稿用紙の書き方は、学校で習いますが、あれは、文部科学省が決めたわけではありません。法律で決まっているわけでもありません。
組版をする職人さんと、編集者、作家とのスムーズな意志疎通のために、慣習的にできあがったお約束なんですね。
そのため、キーボードで文章を書く今の時代には、なぜ? という疑問がわく場合もあります。
カクヨムの文章の書き方を説明した作品にも、「なぜそうするのか」は、なかなか答えがありません。
それは、組版をする時に、それが「やりやすかったから」または、「わかりやすかったから」「印刷した時に、見た目が良かったから」などの理由があげられるのではないかと考えます。
ですから、原稿は作者の好きに、どう書いても間違いではありません。
でも、将来書籍化を目指す場合や、印刷して本に残したいと考えた場合には、慣習に従っておた方が、なにかとスムーズに意志疎通ができると思います。
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