d semicolon
K助
第1話 プロローグ
もしかしたら、あの日の出来事は、およそ二十万年にわたる人類史において、もっとも崇高な秩序を持つ終焉を、人々に明確に意識させるに足る十分な力をもっていたのかもしれない。
終焉、それは世界の終わりなどという荒唐無稽な概念ではなく、もっとリアルに、少なくとも僕の、この僕のかすかな意識を苛むほど、重くのしかかり浸潤してゆくものだったんだ。
僕の名前は東条ダオ。現在、高校三年生。
僕は今、崩れ落ちた超高層ビルの、ヘリポートの残骸で小高く盛り上がった場所に居る。
そう、あの日、あの事件が起きたときも、確かこの辺りに僕らは居たんだ。
夕焼けに映える橙色の薄明かりが、崩壊した首都の街並みの陰影を、終わろうとしない不吉さを、さらに色濃くする。
あの日までの僕は、自分が何者かなんて考えたことはなかった。
あぁ。
人々は、今の姿の僕をこう呼ぶ。
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