第3話 巨人族の王の首と魔法使い 呪われた神

次に見たその夢の光景とは

相変わらずの血まみれで 傷だらけの自分の鎧姿 

そうして、アーシュ、アーシュランは敵の兵士や自分自身の血にまみれていた


「ようやく、ようやくだ ついに、この長すぎた戦いが終わりを迎えようとしたが 

俺の一族を・・ほぼ全ての黒の王族を

俺と異母妹テイ、妹のテインタル以外は皆殺しにした お前たちに報復出来るぞ」

アーシュの深紅、赤い瞳が血に酔ったように輝く 

利き手の左手で剣を振るい、それから、空いたもう一つの右手で魔法を放つ


剣が打ち鋭い甲高く鳴らされている音が響く、幾度も剣を振るい戦う

傍には護衛の兵士達に王の弟の死体もあった

「王妃の娘、異母妹のテインタル 美しいテイに呪いの入れ墨を刻み、操り人形にした」


「ぎゃああ」巨人族の王の肩を剣で切り裂き、同じく足の肉も切り裂く

周りの白い壁やタペストリーに赤い血が辺りを深紅に染めるかの如く巻き散らかされた


苦痛と怒りに睨みつける巨人族の王を見ながら

「一度、俺の故国を滅ばした、また再び俺や民を苦しめた お前たちは滅ぼす」


巨人族の王の振り乱した赤い髪 睨みつける瞳や腕を刺し、次々と切り落とす

「ぎゃああ!」巨人族の王の悲鳴

そうやって、床に巨人族の王の首が転がり落ちた


次に、それから長年の宿敵だった あの敵の魔法使いの胸に剣を突き刺して

はあはあと荒い息をしながらアーシュは言う

「これで終わりだ、魔法使い お前が長い戦い、その元凶だ 黒幕の魔法使い!」


「これで、ようやく魔法の呪文の文様が織り込まれた

呪いの入れ墨は残るが、俺の異母妹テインタル王女は解放される

この長い、長すぎた戦いもようやく、ついには決着がつく」アーシュ、アーシュランが呟いた


「・・ふっ・・ふふ」自分の口元から血を流しながら魔法使いは笑う


それを怪訝に思う黒の王国の王、黒の王アーシュ、アーシュラン

「何がおかしい魔法使い?」怪訝な表情でアーシュは問う


がしっと、剣を刺しているアーシュの左手首を掴み 魔法使いはこう言う


「私は遥か遠い時代、長い時を生きてきた」

アーシュの顔を見ながら魔法使いは言葉を続けた


「私は追放された神の一人なのですよ ふふ」そう魔法使いはアーシュに告げた


「この二千年の戦乱、人々の嘆きに苦しみ 殺されてゆく者達の悲鳴は

とても愉快な見世物だった 私の楽しみ、素晴らしい娯楽でしたね」


「えっ!それは お前は一体、何を言って・・!」

アーシュはフードを深々と被り、顔を見せようとしない魔法使いを凝視した


「・・何故、この大陸に二千年もの間も続く戦(いくさ)が絶えなかったと思う?

「・・・・・・・・」その言葉に何も言えず魔法使いを凝視するアーシュ、アーシュラン


魔法使いはそんなアーシュの様子に構わず言葉を続けた

「私が歴代の王や白の宗主達に取り入り裏で操ってきたのですから」

絶大な魔力を全て、手にする為に 手に入れる為に風と土・・水の魔力・・」


「絶大な力を持った 先代達の黒の王達の力は すでに多くを我がものにした・・


「予知に過去見、時や心に干渉する事 支配する特別な力は 以前の王数人に

先の黒の王 片眼の黄金の王、貴方の父親アージェントに

貴方の祖父、父親の狂王ジェライアの死体から私は取り込んだ」


「白の王族に近い、これまた、素晴らしい黄金の魔法の力」


魔法使いは ローブから アーシュにその顔を覗かせる・・誰にもみせた事のない顔


・・四〇代前後の男の顔があった その魔王使いの瞳が様々な色に変化してゆく

歴代の幾世代もの黒の王達・・その魔法の力 属性は瞳に映して現れる・・


昔、昔々の水の魔法の世代を描き映しだしてゆく


水の王・・水の竜王の目の色 深い青・・揺れるように薄い青にも・・

土の魔法の世代・・薄茶から黒・・豊かな大地の色

風の魔法の世代の瞳の色・・銀と淡い黄緑色、空の青にも

最後に見せたのは黄金の金の色・・

それは先代 アーシュの父王アージェントと同じもの


「今・・この身、肉体は滅ぶが死にはしない そう、死なない!殺せるものか!」

「ずっと炎の世代、赤い火焔の世代、その火焔の王を私は待ち続けた」


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