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 わたしが今働いているのは、食品工場だ。

 洋生菓子を生産している。

 夜勤はないものの、年中無休フル稼働。

 消費期限の短いものだから、作り置きもできない。

 工場というよりは、ほとんどサービス業と同じ感覚だ。

 前職も、飲食関係。カフェのキッチンで調理をやっていた。

 もともと料理やお菓子作りは趣味程度にやっていたから、どちらの会社でもできなくて困ったことはなかった。


 作業自体はとても楽しい。

 カフェのお昼どきは忙しいが、スタッフ同士息があった立ち回りができると充実感があった。

 自分が開発した新商品が予約されていたり、他のスタッフに可愛いと褒められると嬉しいしやりがいを感じた。

 だけど、これ以上サービス業で働くのは辛すぎる。


 6年間、飲食関係のサービス業で働いてきて、やっと分かったことがある。

 カレンダー通りの休みの、いわゆる普通の人とは幸福度が広がるばかりなのだと。

 ゴールデンウィーク、お盆、年末年始、そして祝日があれば3連休。

 楽しいときは要所要所でやってくる。

 そんな楽しいときが、サービス業にとっては書き入れ時。

 とはいえ、従業員の給料は変わらない。

 ただ単に忙しいだけの日々を過ごすことになる。


 今の会社はリフレッシュ休暇として年に2回、5連休を取れるところが救いだ。

 前の会社では月に1度2連休があればいい方で、3連休は4年も働いてたった1回しか取れなかった。

 これでもまだいい方なんだと思う。

 そりゃあ人生の充実度、満足度が違うよなぁと思わざるを得ない。

 こんなことに気づくのに6年もかかるなんて、我ながらぼんやりしすぎだと思うけど。


 とにかく、もうサービス業の正社員はこりごりだ。

 わたしもカレンダー通りに働いてみたい。

 年末年始に暇を持て余してみたい。

 料理もお菓子作りも、嫌いにならなかったのだけは幸いだったと思う。

 お菓子作りは特に、仕事のおかげで腕前が上がったから、むしろラッキー。

 そう思えるくらいだから、まだ余裕があるな、わたし。

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