桃本日記

桃本もも

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 わたしは今、人生の岐路に立たされている。

 いや、立とうとしている。

 まだ頭の中でごちゃごちゃ考えているだけで、何ひとつ行動に移していない。

 今の会社を辞めるということも、新しい仕事に就くための転職活動も、まだ想像の域を出ていない。

 人生最大の岐路になるんだろうな。

 そう感じていることだけは確かだ。


 転職ははじめてではない。

 新卒で入社した会社を辞め、今の職場は2つ目だ。

 前の会社を辞めたいと思いはじめたのも、冬のことだった。

 年の瀬の迫った、忙しいころ。

 腱鞘炎になって、仕事と睡眠と食事以外、何もできずに過ごしていた。

 ふと涙が出て止まらなくなったり、何のために生きているのか分からなくなったり、家にいるのに「帰りたい」とため息をついたり。

 あのころは今以上に心身ともにボロボロだった。

 辞めたいという意志を上司に伝えたものの引き止められ、「この話はなかったことにしよう」と言われ、うやむやにされた。

 結局、無理して働きつづけて限界がきてしまい、上司に「今日で辞める」と泣きながら電話をして退職という、あまりオーソドックスではない方法で辞めたのだった。


 今はまだ手は動くし、精神的にも冷静な状態だ。

 前回の転職はまさに行き当たりばったりだった。

 身体的にも精神的にも、とにかく休養が必要だった。次の仕事のことなど考えている余裕もなかった。

 今の会社に採用してもらえたときは、何とかなるものだ、と思ったけど、次もそう簡単に事が進むとは限らない。

 何しろ、あのころより歳を取ってしまった。四捨五入したら30。軽い気持ちで転職に挑むことはできない。

 わたしはある理由で、結婚はしないと決めている。

 今は実家暮らしだけど、いつまでも家族が元気で生きていてくれる訳ではない。いずれ、ひとりで生きていかなければならなくなる。

 そんな未来を想像して、漠然とした不安に襲われるような年齢に差しかかっているのだ。

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