桃本日記
桃本もも
1
わたしは今、人生の岐路に立たされている。
いや、立とうとしている。
まだ頭の中でごちゃごちゃ考えているだけで、何ひとつ行動に移していない。
今の会社を辞めるということも、新しい仕事に就くための転職活動も、まだ想像の域を出ていない。
人生最大の岐路になるんだろうな。
そう感じていることだけは確かだ。
転職ははじめてではない。
新卒で入社した会社を辞め、今の職場は2つ目だ。
前の会社を辞めたいと思いはじめたのも、冬のことだった。
年の瀬の迫った、忙しいころ。
腱鞘炎になって、仕事と睡眠と食事以外、何もできずに過ごしていた。
ふと涙が出て止まらなくなったり、何のために生きているのか分からなくなったり、家にいるのに「帰りたい」とため息をついたり。
あのころは今以上に心身ともにボロボロだった。
辞めたいという意志を上司に伝えたものの引き止められ、「この話はなかったことにしよう」と言われ、うやむやにされた。
結局、無理して働きつづけて限界がきてしまい、上司に「今日で辞める」と泣きながら電話をして退職という、あまりオーソドックスではない方法で辞めたのだった。
今はまだ手は動くし、精神的にも冷静な状態だ。
前回の転職はまさに行き当たりばったりだった。
身体的にも精神的にも、とにかく休養が必要だった。次の仕事のことなど考えている余裕もなかった。
今の会社に採用してもらえたときは、何とかなるものだ、と思ったけど、次もそう簡単に事が進むとは限らない。
何しろ、あのころより歳を取ってしまった。四捨五入したら30。軽い気持ちで転職に挑むことはできない。
わたしはある理由で、結婚はしないと決めている。
今は実家暮らしだけど、いつまでも家族が元気で生きていてくれる訳ではない。いずれ、ひとりで生きていかなければならなくなる。
そんな未来を想像して、漠然とした不安に襲われるような年齢に差しかかっているのだ。
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