桃本日記

4

　派遣さん。

　今の会社にもたくさん来ている。

　そのほとんどが女性で、30代っぽい人からおばあちゃんという年齢の方まで、幅広い年齢層だ。

　長く来てくれている人は何でもできて、わたしが新人のころは派遣さんにも仕事を教わっていた。

　顔を見るとすぐ挨拶してくれる人、いつもにこやかでどんなに忙しくてもカリカリしない人、率先して雑用を引き受けてくれる人。

　正社員やパートの人より、よっぽど接しやすいし人間的にも尊敬できる人が多いという印象だ。

　派遣さんは残業なしだし、わたしがいやだと思っているような仕事も振られないし、煩わしい人間関係にも巻きこまれないし……。

　もちろん、派遣先の会社にもよるだろうけど、これはかなりわたしに向いている働き方なのではないか。

　身近な存在なのに、自分がなろうとは思い至らなかった。

　派遣さん、わたしにむいているかもしれない。

　もちろんデメリットもある。

　派遣の仕事がなければ収入がなくなる。実際、このコロナ禍で派遣さんゼロの月が何度かあった。

　35歳定年説というものがあるらしい。

　今はそんなことを言っていられないほどの人手不足だから過去のものだという情報もある。

　実際におばあちゃんほどの派遣さんもいるのだから大丈夫だろうと思いたいけど、35歳なんてすぐだから不安になる。

　それに、独身、30代、派遣社員ってどうなんだ。

　無理なく暮らしていけるのか？

　不安ばかりが募る。

　正社員として、ストレスと責任を抱えながらやりたくない仕事も無理やりやって、心身ともに削られながら働いていくのか。

　派遣さんになってある程度仕事のストレスからは逃れて、だけど生活に不安を抱えながら生きていくのか。

　実際に仲のいい派遣さんに聞いてみたいところだけど……まだ会社に辞める気配すら見せないように気をつけているのに、そんな迂闊なことはできないから、ネットで情報を集めるしかない。