傍話 倒せ、キモい芋虫



「私の名前はゼン。まぁまぁ古株の“魔法少女”だ」



 隣でいきなり謎の自己紹介を始めたのは、腐れ縁で相棒。名乗った通り、ゼンと言う名前の女の子で、頭の中が常春な女騎士モドキ。何かしらのゲームから出てきたみたいな魔法と戦闘スタイルで、ただのポンコツだ。

 普段から意味不明な言動が目立つ、関わり合いになりたくないタイプの人間だな。近寄らないでくれ。



「私の名前はゼン!まぁまぁ古株の“魔法少女”だ!」



 こっち見て言うな。

 ツッコまないからな。

 これから戦闘なんだから、もうちょっと気持ちを引き締めないと。


 

「私の、名前は、ゼン!!古株の!“魔法少女”だ!」


「聞こえとるわ!何回自己紹介するつもりだよ鬱陶しい!」



 だから、こっち見て言うな。

 いい加減にしろ面倒くさいなもう!



「ああ良かった。ワンドぜんぜん返事してくれないんだもん。耳失くしたかと思った」



 しまった、反応してしまった。

 1回リアクションを返すと手間なんだよなぁ…


 だいたい耳失くしたってなんだよ、失くすなら鼓膜だろ。それも破れるだろ。

 そもそもずっと一緒に居ただろうが、何処でそんな鼓膜破れるイベントがあったんだ。そんなの見たのか?無かったろ。



「はぁ…で?何なの?死ぬの?」


「こっちは相棒のエーレルワンド!ワンドとは名ばかりで、ゴリゴリの棍棒とスチームパンクな武装だよ、名前詐欺だね」


「聞けよ、何なんだよいきなり」


「私達は、これからなんかスゴいデカいキモい芋虫退治に行くことになったの。たくさんの“魔法少女”達と一緒になんとしてでもアイツを倒すんだって!わー、私達、無事に帰れるのかなー!?」



 怪電波拾ってんじゃねぇよ、どこに向かって喋ってんだ。

 せっかくこっちが聞き耳持ってやったのになんで無碍にするんだ。

 だったら初めから独りでやっててくれ、巻き込むな。



「あの〜、どうかしたんですか?」



 ホラ見ろ、後輩の子が心配して声掛けに来てくれたよ。

 しかもコッチに!お前じゃなくてな!



「心配いらないよ。コイツの頭は元からトチ狂ってるからね。君は自分の持ち場へ向かってくれるかな」


「そうですか?…分かりました。気を付けて下さいね」


「ありがと。君も怪我しない程度に頑張ってね」



 こうしてる間にも、隣ではまだブツブツ言ってる。もう本当にヤバい奴だよ?


 やっべ〜マジで縁切りたい。

 なんでこんなのとコンビ組んでんだろうなぁ…


 さてと、そろそろ時間だ。



「ゼン、ゼン!」


「んぁ?どうしたの、大声出して」


「……」 



 質問に答えろ。

 いや答えなくて良い。


 怪電波が途切れたか?

 もう一生黙ってろ。



「…時間だ、行くよ」


「オッケーオッケー、キモい芋虫退治に行ってみよー!」


「先ずは集合ね、メンバー覚えてる?」



 一々リアクションがデカいんだよ、声もデカいし、視覚的にも聴覚的にも煩い。

 そして狼狽えるな、忘れてやるなよ懐かしのメンバーだっただろうが。残ってる同期達の名前があっただろ見とけよ。


 もっと静かで、穏やか人とコンビ組めば良かったな…本当に。具体的には、ハイドとかメグルとか…



「ヤッホー!ひさしぶり〜!」



 さっきまで忘れてたのを忘れたみたいに話しかけに行くのがアイツクオリティ。メンタル無敵かよ、罪悪感とかないんですか?



「ワンちゃん、おっひさー」


「ハイド。久しぶり」



 ぬぅぅ…って背後から浮かび上がるのがお決まりの挨拶。ノリ自体はゼンと似てるんだよな、コイツ。決定的に違うのは、煩くなくて空気が読める。そんでもってちっちゃくてカワイイんだよね。見た目が良いだけで全て許せる。

 なんかこう、妹枠って感じ?

 

 そしてハイドが居るなら近くに…いたいた。



「メグルも、久しぶりだね」


「…」


「メグル?」



 おおっと無視か?

 確かにメグルとは数年ぶりだし…えっ、もしかして忘れられてる?

 それはちょっといくらなんでも酷くない?



「お~いメグル〜?」


「きゃっ…ワンド?あぁごめんなさいね、少し考え事をしていたの。直接会うのは久しぶりね、こんな状況でなければ再会を喜ぶところなのだけれど…」


「こんな状況でも会えて嬉しいんたけどなぁ」


「フフ、そうね。私もよ」



 どう見ても小中学生ぐらいで、しかもめっちゃフリフリのカワイイ衣装なのに、中身は大人。

 同期達のお母さん。ママみが強い、オギャりたい。


 正直なところ、メグルとは特別仲が良いとは言えない。コッチが一方的に懐いてる感は否めない。だってメグル、皆におんなじ態度だから。強いて言うならハイドが少し特別扱いされてるかもね。メグルにとって命の恩人だし。


 いやぁ〜それにしても、ハイドとメグルが並んでると癒やされるなぁ〜。ちっちゃくてカワイイもんなぁ~。

 ギュッてしたいギュッて。それか抱き締めて欲しい。挟まれたい欲と挟まるのは罪だという意識が殴り合ってる。


 2人とも、見た目は正統派のカワイイ系なのに、言動はダウナー系で少し影があるのが良いギャップになってるんだよなぁ。


 日頃、あのなんちゃって女騎士と居るから、フワフワでカワイイのが本っっ当に癒やしになる。これであと3日は戦える。



「ところでゼンは居ないのかしら?いつもワンドと一緒に居るでしょう」


「好きで一緒な訳じゃないんだけど…まあゼンならあっちだよ。カガリ達を見付けて走ってった」


「これは、随分と賑やかになりそうね」



 視線を向けると、ゼンとカガリがコッチに歩いてるのが分かる。後ろにはコダマちゃんとショットレモンとヒットライム炎上コンビが居る。

 後輩が育っていくのは嬉しいけど、ちょっと悔しいってのも間違いないね。コダマちゃんに至ってはもう、上司みたいなものだし。

 いつの間にそんな強くなったのって話よ。いや噂は知ってたし、活躍も知ってたし、何度も直接話したけどさ、どんだけ頑張ってんだって思うわけさ。生きてるから良いけど、死んだら終わりなんだよ。


 

「よっ、久しぶりだな」


「レアキャラ発見!おかえり〜」


「おおハイド、相変わらずリアルとネットで差があるな。お前らも久しぶりだな」


「どうも皆さん、お久しぶりです」



 なんでコダマちゃんみたいな良い子が、カガリみたいな粗暴な奴に懐くんだろうか。そりゃ恩人ってのはあるだろうけど、あのダメ人間筆頭のカガリだぞ?同期の中じゃ1番戦闘力高いし、良い奴ではあるけど。人間的にはダメ人間だぞ?

 噂じゃ、刑部さんどころかハックルベリーまでも近くに居るらしいじゃん。うちのところには似非女騎士しか居ないのに?不公平じゃね?



「んんー、ワンドォ…。どうしたのかな?大丈夫大丈夫、私が居るさ!」


「ゼン。頼むから大人しくしてくれ…お前が1番の悩みの種なんだ」


「そんな私が1番なんて…恥ずかしいよ、ワンド…」


「……うっざ…」



 いけない。

 つい心の声が漏れ出てしまった。

 やめろ、しなだれかかるな鬱陶しい。

 そんな趣味は無い。


 おいバカ変なトコ触るな!



「お前らも見てないで助けてくれ!カガリ!こいつとコダマちゃんを交換してくれ、頼む!貰ってくれ」


「それは無理だな。だってワンドとゼンは、その、そーゆう関係なんだろ?部外者が立ち入ったら駄目だって、なんかドラマで見たぞ」


「そーだそーだ、ゼンとワンちゃんは2人1つだ〜」


恋人相棒なのでしょう?そんな風に言っては可哀想よ」


「違うからっ!そんな恐ろしい事ありえないから!コイツとは腐れ縁なだけだから!そんな目で見るなぁぁ!」



 何時からだ、何時からそんな馬鹿げたイメージを付けられた?

 納得いかない。とても納得出来ない!


 誰が発端だ…いや、考える間でもない。

 ゼンてめぇ、許さねぇからな…!



「ちがっ――」


「さて、皆さん!まもなく時間です。改めて私達8人が、ピンクの芋虫討伐の人員になります。道中の露払いは私とショットレモンとヒットライムの3人が行い、先輩方が戦闘を始めたのを確認し次第増援に向かいます。また、刑部代表からの伝言で、多少の被害には目を瞑る代わりに“怪物”の情報が欲しいそうです。まあ命令ではありませんし、努力目標です。可能であれば様子見からの討伐をお願いします。…作戦内容というか、進め方ですが『あの時と同じ』で、通じますか?刑部さんがそう言っていたのですが…」


「ええ、問題ないわ。貴女達3人を露払いに使えるのなら、とても楽に向かえそうね」


「人数もコダマちゃん達を入れれば、おんなじだしね~」



 …時間か、時間ならしょうがない。

 言いたい事はすっごいあるし、仕事外で物凄い納得いかないけど、今はそれ言ってる場合じゃないのは分かってる。


 隣にはいつも通りのゼンが、また何か怪電波を受信していた。



「行くよ、ゼン」


「…」



 なんでコッチの言葉は無視するんだ、聞けよ。

 ほらみんな移動を始めたよ、置いてかれるよ。



「さぁワンド、行こうか」


「…はいはい」



 もうね、いや分かってるってか何時もの事なんだけどね。まぁ〜腹立つよね。

 でも毎回怒ってても仕方ないし、終わらないし、疲れるし、手間だし、何も言う事はないさ。言う気にもならない、ならなくなった。


 空飛べる組は飛んで行ったけど、飛べない組はどうしようか。

 まあ行くんだけどね、空を行けなくても水上を行けばいいだけの話だし。


 で、その水上も行けないのがハイド。



「ワンちゃ〜ん。足場ほしいなぁ~」


「はいよ」



 出しましょう、足場。


 それに今回は味方の足場兼防御シェルターとしてここに居る訳だしね。

 勿論戦いはするんだけど、あの子達が怪我した時の避難場所として水上に居ないといけない。



「かっくいぃ〜」



 私の背負う四角い箱が、カシャンカシャンガコンガコン、と音を立てて変形する。毎回思うけど、どこにその質量が有ったんだ明らかに私より体積デカイだろ。箱より重くなってるぞ、なんでだ謎だ。

 けどまあ便利だから良いけど。


 用意したのは小型船。クルーザーなんて言えるほど乗り心地の良いものじゃないけど、戦闘性能は折り紙付き。

 問題は、私自身がエンジンだから降りられないって事ぐらいかな。だから足場兼シェルター役なんだけど。しかも視界確保のために私用の防御は殆ど無いからね、両手で武器振って気合防御するしかない。


 

「ハイド、私の足元近くは触らない方が良いよ?」


「了解」



 私の魔法は水が無いと動かない。ただただ熱いだけの発熱機。どれだけ音を立てようと、ひたすら続く歯車は回らない。

 変身してからそろそろ10分か、暖まりきった頃だろう。


 船に乗り込んだハイドを確認して、靴を湖に浸ける。



「景気いい音だね〜」

 

「そうだね」



 真っ白な水蒸気が立ち昇って、私に取り付いてる歯車が動き出した。背中の箱が有った場所に水を吸い上げ、私のゴツいブーツへ送り込んでは蒸発していく。

 1人蒸気機関。熱量水蒸気量に応じて魔法が変化する。似た“魔法少女”の居ない私だけのスタイル。


 前方上空を行く同期達を追っかけていくと、出るわ出るわワラワラ湧いてくる“怪物”の群れ群れよ。


 ポツポツとは見かけたけど、前方を塞ぐように出てこられると面倒な訳で。

 轢くか、その方が楽だし。



「ワンド先輩!そのまま進んで下さい」



 後輩達3人の誰かの声が聞えると同時に、目の前の“怪物”達が沈んでいく。良く見れば黄色の羽根が突き刺さってるじゃないか。ぜんぜん気付かなかったよ。



「おおレモン、やるねぇ〜」



 ハイドが喜んでる。

 うん、確かに凄いよね。

 あの2人もいろんな所でよく見るけど、どれも戦闘の絡まないメディア露出ばっかりだから。いざ一緒に戦ってみると、想像以上に強い。


 炎上コンビとか思っててゴメン。

 それに炎上したのって、[魔法院]が出来る前の1回だけだし。

 まぁでもその印象が強過ぎるんだよなぁ。

 前も後も、ネット上でやらかした“魔法少女”はあの子達だけだから。やらかしたっても、実際は言葉が足りなかっただけだったし。


 どうにも私の船にはショットレモンが付いているみたいだ。進む先の“怪物”が、黄色の羽根貫かれてどんどん溶けていく。実に快適。

 

 そしてとうとう、ピンクのデカい芋虫を間合いに捉えたんだけど…



「デカすぎんだろう…」


「分かってたとはいえ、直で見ると違うね」



 確か高さ20mで幅45m、長さが100m程度。だっけか、近くで見るともうただの壁にしか見えない。

 普段戦ってる“怪物”が1〜5mぐらいだから、コイツは規格外もいいところだな。


 そりゃ全国から“魔法少女”集められるわ。

 

 初めから見えてはいたし、覚悟はしてきてる。

 ただ、どうしても心配な事があるんだよね。



「ねぇハイド、私達の攻撃…効くと思う?」


「ワンちゃんが本気なら効くんじゃない?少なくとも、わたしは自信無い。そもそも直接攻撃強くない」



 ですよねー…。


 私も防御を捨てて全力の攻撃なら通る気がするけど、それ以外はせいぜい掠り傷程度のダメージだろうし。

 最近の“怪物”は心核コアを破壊しないとダメージがすぐに回復するし、本当に大丈夫なの?

 それに心核って大体体内の中心部にあるから、そこまで芋虫の身体を削るか抉るか、最悪潜って行かなくてはいけない。後者にはならない事を祈っておくか。


 

『ワンド、ハイド。聞こえてるかしら?』


「聞こえてるよ」



 と、無線越しにメグルの声がする。

 上では準備が整ったみたいだ。


 あの時と同じなら、開幕ブッパが始まるだろうね。



『これからカガリが突っ込むんだけど、回収をお願いできる?ほらあの子、泳げないから』


「突っ込むったってもうちょい考えればいいのに…」


『コダマちゃんが一緒だから、張り切ってるのよ』



 回収ね、オッケー回収するよ。

 カガリって大体後の事を考えないよね全くさ。


 コダマちゃん、“怪物”の掃討に出てて居ないけど。

 ほらもうあんな高く昇っちゃってさ、このサイズを両断する気かよ…


 …えっ、出来んの!?



「ちょいメグルちゃんや!カガリの奴何するか詳しく!」


『ぶった斬って心核探して叩き壊す!ですって』



 わお、シンプル。

 知らない間に火力伸び過ぎじゃない?


 ああ、ゼンか。

 アイツの補助があればいけるか、いけるか?

 確かにアイツのバフは強いけど、そんな出来るの?

 

 知らんまに、カガリがバケモンになってやがる。



『先にスロットが埋まったゼンを下ろすわね。変身し直したら教えて』


「分かった」


「はいドォーン!ゼンちゃん登場!ついでだしワンドにもバフあげるね、[炎よ、力を!]よしオッケー解除…からの変身クエストスタート!」


「…ありがとさん。メグル、何時でもいいよ」


『了解。ワンドは回収、ハイドは水中に落ちたカガリをよろしく頼むわね』



 なんか色々やってたけど、やっと開戦か。


 ゼンは様子見、ハイドは水中へ潜った。私はカガリ達が見える位置へ。

 上空ではメグルが全体を見渡してるかな。


 カガリは…、かなり血ぃ出てるな。

 てか、自傷バフも使ったのかよ。それとダメージはカガリ持ちだから転写も使ってんな。そりゃスロット埋まるわ。フルコンボじゃねぇか。

 カガリの負担ヤバいな、回収してすぐ戦えんのか?



「ワンド!衝撃くるよ!」


「ゼンもどっか捕まってろよ!」





 ヒャアアァァ!


 ヤバッ、スッゴい揺れる!

 ヤバいヤバい転覆する、私今船とくっついてるから!直ぐには離れられないから!ひっくり返ったらワンチャン死ぬ!


 

「アッハハハ!」



 くっそ楽しそうだなオイ!

 こちとら必死こいてバランス取ってるってのによ!




 何とか持ち堪えることには成功した。

 いろんな所の排出口から、蒸気を吐き出しまくってバランス取りきった。例えるなら、転ばないようにバランスボールの上では飛び跳ねるぐらい神経使ったよ…

 この魔法特有の感覚は、多分誰にも分からないだろうね。こんな変わった魔法なら尚更だ。


 正直、さっきゼンに貰った火力バフが無かったら蒸気量足りなくて転覆してた事は言わない。


 そんで、芋虫を見てみればもう最悪。

 見事に一刀両断された芋虫だけど、流れ出る粘度の高いピンク色の体液がキモい。いやキモいんだけど、それどころじゃない。水面を浮かぶその体液から、ゾロゾロと“怪物”が湧き出てくる。キモい!


 

『貴女達、聞こえてるわよね?1度引くわよ、作戦を練り直しましょ』



 メグルが言うなら、そうしよう。

 実際、あれだけ大量の“怪物”を相手にするのは骨が折れそうだから。 


 ていうか、“怪物”って水に浮くんだ。

 初めて知った。



『おーい、アイツの心核斬ったぞ』


「は、マジ!?」


 

 水音でノイズ塗れなカガリの言葉が無線に流れる。

 そして私は思った。

 カガリ、ヤバいな…


 違う、そうじゃない。

 無線越しに皆がワーワー言ってるのが分かる。スクランブル通信だからね、全員が全員に聞えるし話せる。



『心核を斬ったですって?まだ残ってるじゃない。まぁいいわ。全員、一旦ワンドの船に集合して』



 てな訳で皆集合。

 溺れてずぶ濡れのカガリと、それをサルベージしてきたハイドに温風を当てながら作戦会議。


 後輩組には溢れ出る“怪物”の相手を頼んでる。

 あんなの垂れ流したら大変な事になるから、うち漏らしは仕方ないにして、少しでも数を減らせるように動いてもらってる。



「で、カガリ。貴女心核を斬ったんですって?」


「ああ間違いない。1つ・・は斬った」



 なるほど、複数持ちかぁ〜

 いつか出るとは思ってたけど、ここで来るか。


 

「これもう様子見とか言ってる場合じゃないし、速攻で終わらせに掛かった方が良くない?」


「そうしたい所だけど、残りの心核の場所が分からないんじゃ手が出せないわよ。1つ目にしても、運が良かっただけだもの」



 …何で皆、私を見るの?

 いやいやいやいや、嫌!


 この船を潜水艇にして芋虫に潜れって言うんでしょ!?やだやだあんなの触りたくない!

 


「ねぇワンド、貴女なら出来るわ」


「ほ、ほらもう一回さ、もう一回カガリが斬れば良いんだよ。輪切りにしていけばその内見つかるよ?」


「悪い。そう何度も使える魔法じゃない。傷もまだ塞がってないし、同じレベルでは使えない」


「じゃあハイドの偵察なら!」


「ゴメン、もうやってみた。偵察用の蛇がやられちゃったよ。プチッと」


「メグルゥ…」


「なに?言っとくけど私もやるのよ?貴女と違って生身で、あの中に。…上半身と下半身、選ばせてあげるから覚悟決めなさい」



 あっ、ダメな奴だ。

 メグルがやるなら、私がやらないとは言えないし…


 司令塔のメグルがやらなくても、ゼンがやれば良いような気もするけど、何かあったらゼンに頼るしかないからなぁ。

 緊急時には多分、カガリとゼンでもう一回やってもらうだろうし。



「…分かった。私1人分の装甲なら足りてるから、この船は残して行くよ。直進しか出来ないけど、2〜3回は動ける。ゼン、もう一回火を焚べてくれる?」


「ん、[炎よ、力を!]」


「ありがと。それじゃ頭の方に行くね」


「なら私は下半身ね」



 やたら厳重な船と靴のロックを外して、全身を茶色の鋼鉄で覆っていく。見た目は、機械兵ってのがしっくりくるかな。そんな感じ。


 メグルは全身を薄いピンクの膜で覆ってる。

 綺麗、カワイイ。


 私の魔法とは世界観が違う。

 ちょっと羨ましい。



「よし、行くわよ!」


「うん!」



 私は、デカいキモい芋虫の体内へ乗り込んだ。

 



 

 

 

 

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