伝説は虚無を見ている


 【あの伝説の魔女】が根城としている家の一室。菩薩もかくやと穏やかな表情をした少女ら3人が、真っ白なスクリーンを背景に写真を撮られていた。



「カワイイ!カワイイ!カワイイ!」


「すごく良く似合ってるよ!最高だ!!淀くん目線ちょうだい」


「……」


「チトちゃん、ハーちゃんもっとくっついて!」


「……」


「……」


「カワイイ!カワイイ!カワイイ!」


「素晴らしい!額に飾りたいくらいだ!」


「……」


「淀くん!笑って!」


「は…はは…」


「綺麗だ、とても綺麗だよ」


「「「……勘弁してくれ」」」



 穏やかな…だろうか。猫が部屋の片隅を見上げる様に、蜥蜴が地面を歩く途中で固まる様に、魚が不意に泳ぎだす様に、綿毛が風に漂う様に、赤子が虚空に手を伸ばす様に、おおよそ人の考察が及びつかない胡乱うろんな心情は、巡り巡って虚無を表情に映している。


 この場で楽しいのは、カメラを持って撮影している3人。この家の管理人兼生活指導講師であり2児のパパ、早乙女・スティール・貴虎たかとら。語彙力を紛失している人だ。それと海外留学から一時帰宅している長女の駒理こまり

 この父娘は、可愛いものが大好きなのだ。もっぱら最近のブームは、突如として早乙女家と関わることとなった見目麗しい3人の女の子達。どうやら“魔法少女”らしいが、そんな事はどうでもいい。わざわざ海外から帰ってきてまでしたい事。それは、この可愛らしい少女達を着せ替えて遊びたいからだ。


 ついでに、まだ出勤時間ではない刑部 はいるも参加している。見た目だけを気にするのであれば、はいるの価値観では淀が1番のお気に入りらしい。身だしなみを整えて喋らなければ、正当な美人だからだ。それにだ、淀が嫌がっているのだから尚更止められない。因果応報である。

 

 かれこれ数時間は着替えては写真を撮られ、撮られては着替え、また撮られてはまた着替え…



「ねぇ、そろそろ…」


「カワイイ!カワイイィああごめん、次の服は…」


「父さん!私の持ってきた服も!」


「それは絶対にヤダ!」



 徐ろに旅行カバンに手を伸ばす駒理だったが、淀が慌てて制止の声を上げた。現状着せられている、所謂ロリータと部類される服装が精神的限界点である。無論差異はあるだろう、人によって基準は違うからだ。

 さて今回、この駒理が持ってきた服は何か。まだ誰も見てはいないが、今まで何度もこのファッションショーを行っている。傾向としては、コイツの持ってくる服は尽く露出が多い。


 意外かと思うのも多いかも知れないが、淀は人前で肌を晒すことを特別嫌がっている。最初の数回は渋々着ていたのだが、それ以来はずっと拒否している。別に身体に傷があるわけでも、スタイルに不満があるわけでも無い。ただ単に、恥ずかしいから嫌なのだ。

 人前は勿論、身内ですら肌を見られたくない。普段着として渡されたオフショルダーのトップスは着たくない、ショートパンツだって好きじゃない。スカートも短いのは苦手だし、Tシャツ1枚では絶対に外へ出ない。見せる為の下着だと?そんなもの論外である。

 とんでもなく暑い日ではない限り、七分丈以上の長さは欲しいし、そんな日でも長袖を着ている姿が目に浮かぶ。


 駒理が持ってくる服は今まで、水着やランジェリー、際どいデザインのコスプレ衣装etc...

 世間一般的な普遍的感性を例とすれば、機会によっては着ることがあれど、好んで人に見せようとは思わないだろう。一時はタイツなりストッキングを身に着けていたのだが、引っ掛けて妖しい破れ方をしてからそれも敬遠しているらしい。



「淀さん、着てあげなよ」


「私も一緒ですから、ね?」


「イヤだ、絶対にヤダ!だったらまだ早乙女さんのフリフリ衣装のほうがマシだから、あと部屋着だけでも返しておくれ」


「ルゥ〜ルゥ〜ちゅゎ〜ん…私も『早乙女』だよぉ~…着てくれたら考えてあげる」



 そういえば、一度も話したことが無かったかも知れない。流々川るるかわが淀の苗字だ、淀よりも響きがカワイイ。そんな理由で駒理からはルルと呼ばれている。はねるの苗字は卯月うつきだし、千歳は千賀せんがと名乗っている。白饅頭が用意していたらしい。名前の由来は誰も知らないが、覚えやすいので割と満足しているらしい。


 これまたどうでも良い話になるが、駒理は昨晩よりこの家に訪れている。そして今朝、淀がリビングに現れた時の姿は変身後のメイド服。知らぬ間にクローゼットの中身を全て入れ替えられていたらしい。駒理は、趣味の部分に対してのみ異様に能力が高くなる。人の部屋に忍び込み、衣類全てを根こそぎ入れ替え、しかも眠る淀に気付かれずに運び出す事が出来る程度には。


 して何故、淀にだけ集中砲火が注がれるのか。セクシー系衣装を着せたいのであれば、千歳でも良いだろう。千歳の方が身長が高く目立たないが、身体の凹凸で言えばどちらも同じくらいだ。見た目の派手さのベクトルこそ違えど、充分に映える。



「駒理ちゃんの選んだ服は着たくない!」


「ルルちゃんが着るから楽しいの♪」



 確かに、見た目だけならそれでも良いだろう。しかし駒理だって淀とは既に家族同然、結構親しい仲である。それつまり、淀の性格も立ち振舞も知っているという事。


 あの淀が、恥ずかしがって頬を染め、嫌々でも自分の指定したポーズをとっているのだ。

 こんなにも愉快な事があるのだろうか。

 彼女をからかう絶好の機会、逃すはずもない。


 それは千歳、はねる、も同様である。さっきまでの不服も何処へやら、一致団結して淀を取り囲む。



「さあさあ淀さん!せっかく何でも似合う美人さんなんだから着てあげなよ~。駒理ちゃんはたまにしか帰ってこれないんだよ?こんな時ぐらいサービスしてあげても良いんじゃない?それに恥ずかしさでいったら変身したときだって似たりよったりだよ、ほら勇気出して」


「どうせ全部着ることになるんですよ…無駄な抵抗は止めましょう」


「ルルちゃんは可愛いなぁもー」


「…本当に嫌なら、断ってもいいんだよ」



 見た目幼女であるはねるだけは元気いっぱいだ、なにせ駒理の服を着ることがない。彼女の用意する服は大人の女性向けファッションてある事が殆ど、はねるに渡される物はせいぜい可愛い系のコスプレ衣装くらいだ。それなら、頻繁に着せられているフリフリのロリータと似たような物である。


 千歳は煽って薦めるというよりも、どうせ道連れだと足を引っ張っている様だ。淀ほどではないが千歳も着たくはない、だって恥ずかしいもの。ただ、別にそこまで嫌がる理由も無いのである。千歳は自身の容姿と精神年齢的に、駒理の持ってくるちょっと際どい衣装のほうがマシだと思っている。正直、スッキリしたドレス感のある物は良いとして、フリルやリボン、花や小物が多く付属している方がツラい。


 早乙女家の大黒柱、貴虎さんだけが、この場で唯一の良心であった。彼は、本当に人が嫌がる事はしないからだ。話せば分かる。でも少し押しに弱かった。



「おや…名残惜しいが時間だ、私は仕事に行ってくるよ」


「よし送ってあげ「結構だ」…よぅ」


「んふふ、存分に楽しむといい」



 共に逃げ出そうとする淀を颯爽と躱して部屋を出る。時間だ、後で写真を見せてもらう約束を残して職場へ。はいるの仕事は多いらしい。後ろでふんぞり返ってノウノウと座っているだけでも何とかはなるだろうが、それは彼女の美学が許さない。何より“魔法少女代表”などど大層な肩書のクセに、“怪物”と戦える程の力を持たないのだから、この程度の事はさせてほしい。


 帰りが楽しみだと、上機嫌で出ていく姿を見送った後。



「2人とも、ルルちゃんを宜しくね」


「任せて下さい」


「さあ淀さん、着替えようか」



 逃げ出そうと思えば逃げられない訳ではない。が、大人しくされるがままになった淀は千歳とはねるに連れられてパーテーションの奥へ。簡易更衣室である。


 さっさと着替えは済ませる淀と千歳。着替え自体はすぐに終わる。どうせ布切れ数枚しかないのだから。はねるの分は用意されていなかった、ラッキーだ。

 散歩拒否の犬の如く衝立ついたてから引っ張り出される淀は、珍しく頬を朱に染めて半泣きである。身を隠すように肩を抱く姿は珍しく弱々しい。



「こんなん…何処に売ってんだよ…」


「結構普通に売ってますよ?」


「マジかよ、コワ…」


「これくらいはまだ可愛い方ですよ」



 ケロリと対照的な千歳は、カメラから淀を隠す盾に使われている。縮こまっている淀とは違い、千歳は隠す事など無いとばかりに堂々としたものだ。

 2人が着ている物は、透き通ったレースが扇情的なベビードールである。千歳の基準では、まだマシな方らしい。実際、千歳が躊躇するような際どい衣装も用意されていた。それを着せるのは、流石に気が引けた様だ。


 さっきまで部屋に居た貴虎さんは、気を遣って姿を消している。下着姿の少女達を見るわけにはいかない、彼はクールに去っていた。どうせなら、一緒に連れて行ってくれと淀は思っている。



「アハー眼福」


「普段からそうしてれば、こんな下着着なくて済んだのにね」



 確かに、淀がこうも狙われているのは普段の行いによるものだ。常日頃から人をからかって笑っている彼女は、その仕返しとばかりに集中的に狙われるのは致し方ないだろう。


 それが嫌なら立ち振舞を省みるべきだ。


 まぁ、自ら進んで今の扱いを受けているといっても過言ではない。それなりの気安さの中に、簡単に自分を見捨てられる信用を得ている現状は、淀の狙い通りだった。けれども、それは“魔女”として気持ちのスイッチを切り替えている場合だ。オフの時くらいは安寧が欲しかった…


 そんな信用信頼を元に、淀は強く拒否することが出来ない。もししてしまえば、それが2人にとって自分のラインになってしまう。

 今までがどうかって?今日ほど駒理が強引ではなかったから逃れていただけだ、すぐに引き下がってくれていたのに…何故今日は食い下がるのか。



「サイコーの誕生日だよ」


「良かったですね」


「夕飯は気合い入れるから期待しててね」


「ハァ~…しゃーない」



 こんな訳である。

 先日、淀が『何でもしてあげる』と国と電話越しに口走ったが為に、今がある。吐いた言葉は戻らないのだ、何でもはマズい。

 自分の撒いた種でもある。自分は勿論、そこの2人もファッションモデルになりたい訳じゃない。やっちまった。


 時刻は午前6時になった頃、まだまだ終わりそうにない。むしろ始まったばかり、





 恥ずかしさが通り過ぎて、全てがどうでも良くなってきた頃。体感時間は5時間、過ぎた時間は30分ほど。

 


「さて、お腹空いた」


「よし終ろう」


「そうしましょう」



 ここからは早い。生気を取り戻した2人の息の合った連携で、気が付けば千歳は普段着に、普段着が盗られたままの淀は変身してメイド服になった。そしてあれよあれよと駒理をリビングへ連れ出して、はねるの朝ごはんを食べさせる。はねるはそのために、先にこのファッションショーから抜け出している。着る服が少なかったのも理由の1つだ、武士の情けで見るのは止めておいた。


 駒理が朝食を食べている間、せっかくのメイド服なのだからと家事を任された淀は見事にこき使われている。別に好きでメイド服になった訳ではないのに。



「ねぇハーちゃん。父さん、外に出れてる?」


「全然。出れても護衛がいるかな」


「そっかー…あの体質?運?も厄介ねぇ」


「本当にね」



 食べながらはねると話す駒理は少し困り顔だ、彼女の父親は不幸の星の下に産まれたと言える程に運に恵まれていない。街を歩けば鳥の糞が落ちてきて、道に出れば暴走した車が迫り来る。小さな不幸から命の危機まで、まるで呪われているかの様な日常が貴虎さんを襲う。極めつけは“怪物”だ、彼が外出すればほぼ確実に“怪物”と鉢合わせてしまうのだ。今の遭遇率は100%を超えている。家から出なければ大丈夫とはいえ、不便なのには変わりない。

 そのあまりにもな遭遇率と、必ず生き残る不幸なりの幸運を持ち合わせるが為に、“怪物”が出現してすぐの頃は彼が“怪物”を生み出しているのではないかと[魔法省]からマークされてしまうほどである。


 現在はそれが尋常ならざる不運の結果だと証明され、彼の良好な素行と温厚な性格、元は小学校の教師という経歴から生活指導講師の名目で保護されている。

 彼は幼少より続く不幸に打ち勝つため、相棒の筋肉と乗り越えてきたらしい。


 ちなみに、彼の妻の運は普通である。“怪物”が危険なため、別居を余儀なくされている。それに、はいるの幼馴染だったらしい。今は【あの魔女】達の秘密も知っている。問答無用で知らされたとも言う。

 ある意味では、彼は危険人物だ。流石に“魔法少女”達に任せるのも怖い。なら、最悪使い潰しても構わない“魔女”に預けられている。



「まぁでも元気そうじゃん?皆とも話せて良かったし」


「ん?どうしたの?」


「もうすぐ向こうに帰らないといけないから、明日も学校あるしね。語学留学で語学を疎かには出来ないものね」



 この駒理、語学留学でその目的をすっぽかしまくっている。まあ、目標は達成したようなものなのだが、見聞が悪いのは間違いない。それに、ホームステイ先の家族に帰国の旨を知らせていない。2日帰らないとは伝えたがそれだけだ、そろそろ心配する頃合いだろう。

 向こうの家族とはかなり良好な関係を築いているし、そこの息子とは恋仲になっているらしい。このことはまだ千歳しか知らない。いや、言っていないのに気付かれたのだ。ニヤニヤしながら根掘り葉掘り聞かれたのは記憶に新しい。



「ふふっ、向こうに早く会いたい人、でも居るんですかぁ?」


「ちょっと!やめてよ」


「そ~ですね〜、秘密ですもんね~」



 さっきまでとは形勢逆転だ。

 秘密を握られているのもそうだが、駒理はどうにも千歳に弱い。不仲ではないし、嫌いだの苦手だのとは少し違う。なんというか、コイツには勝てないと勝手に負けを認めてしまっている。

 しかし、この3人の中では千歳と共に居ることが多いのも事実だ。長女である駒理は、お姉ちゃんが欲しかったらしい。



「ところでハーちゃん?」


「駄目、無理、諦めて」



 はねるの拒否3連打。話を聞く前に否定を叩き付け、食器を回収して洗い物を始める。

 


「まだ何も言ってないよ」


「どうせ向こうまで送ってとか言うんでしょ?」


「まあね」


「豪華なご飯を用意しようと思ってたのになぁ〜」



 ややご機嫌が斜めなのは料理の出鼻を挫かれたから、ヤル気満々のところですぐに戻ると言うのだから困ったものだ。せめて昼までいてくれれば良かったのだが、既に乗る飛行機まで決めているのなら仕方がない。



「ごめんて。次、次帰ってくる時はちゃんと時間取るから、ね? それで向こうまでのショートカットは…?」


「空港までだよ。ちゃんと出国入国の手続きはしないと駄目だからね」


「えぇー、じゃあいいや」


「…まったく」



 空港までならショートカットは必要ない。そんなに近い訳でも無いが、遠い訳でも無い。わざわざ送ってもらう程の距離ではないのだ。むしろ空港での手続きの方がよっぽど面倒だし手間だ。だがその手間のおかげで保護や保証を受けられるのなら仕方のない事だろう。



「それじゃ、そろそろ行くとしますか」


「次は落着いた日程でね、行ってらっしゃい」


「行ってらっしゃい。身体に気を付けて」


「ありがと、ルルちゃんにもよろしく言っといて。行ってきます」



 駒理は少ない荷物を取り上げて、あっという間に去っていった。


 嵐のような時間が過ぎ、精神的に疲労した3人はウダウダと回復に努めてる。

 淀はまだ変身したままである。盗まれた普段着が、まだ返ってきていないのだ。何処に隠されたのかも分からない。しかも、駒理の見送りが出来なかったので少し不貞腐れていた。


 それはそれ、3人の気持ちなどお構いなしに連絡は舞い込んでくる。“怪物”も“魔女”も関係無い。取り敢えずで連絡を回されるのだ、そして大抵の場合は現地の“魔法少女”が対応している。どうしても明日手が足りなかったりした場合は、正式に連絡が入るのだ。

 今はそれがない。適当に流し見て、出張る必要はないなぁとボンヤリしている。



「淀さん、いつまで変身してるの?」


「服が見つかるまで。ちーちゃんが貸してくれないし」


「良いじゃないですか、減るものでもないですし」


「ほらね。協力もしてくれない」



 味方がいねぇとボヤく淀をほったらかして、はねるは包丁を研いでいる。日曜日の日課である。彼女は使う道具の手入れを欠かさない。常に最高の状態を保つ事を信条としているのだ。これは料理の師匠の教えらしく、はねるを形成する心の支柱である。


 が、しかし、はねるは包丁研ぎが苦手だった。



「千歳さーん」


「はーい」



 小さい身体で、大きな包丁を研ぐのは難しい。肉体性能自体は非常に高い為、重さはあまり関係無い。それでも、長いとどうしても上手く出来ないらしい。

 そして千歳。彼女は同じ動作の繰り返しが上手い。多少の応用なら充分に利くし、何より今暇そうだ。


 初めのうちこそ付きっきりで研ぎ指導をしていたが、今では充分に任せられる技量を揃えている。

 

 

「この子達を任せても良い?」


「良いですよ」



 三徳、牛刀、葉切、柳。よく使うこれらを任された千歳は黙々と作業を始めている。

 はねるの拘りなのか、最も活躍の頻度が高い出刃だけは絶対に自分で砥いでいる。他にもペティやパン切り、中華に骨切り、薄刃、蛸引、ふぐ引き、鰻裂きと多種多様にある包丁で、今週使った物を研いでいく。


 研ぐだけなら淀もはいるも出来るのだが、はねるは千歳にしか頼まない。淀とはいるには研がせないと決めている。

 淀に任せた時、2日ほどかけて柳刃包丁を研いでもらった結果、とんでもなく薄く、そして鋭くなっており、それは刃の上に優しく置いた半紙が自重で切れる程。切れ味は最高だが、時間がかかり過ぎるし慣れないと危ない。クビだ。

 はいるは不器用。それ以上の理由はいらない。


 シャッ…シャッ…と刃が滑る音をBGMに、淀は立ち上がる。


 服、返してくれ。


 なお、パクった衣類は全てここの住所宛に郵送されている。

 段ボールに積められた衣類を宅配業者の配達員が持ってくるまで、あと3日。

 

 そんなことは知らない淀は、諦めて服を買いに行きたい。困った事に、服を買いに行く服が無い。いや、服はある。あの露出の多い(当人比)恥ずかしい服が。

 苦悩な葛藤をした淀は、死んだ目で買い物に出かけた。





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