伝説と新規入会キャンペーン


 【あの伝説】と『魔法少女代表』の4人が、のんびりと夕飯を食べている。

 そこでふと箸を止め、思い出した要件を告げる。どうせ身内なので形式じみたやり取りはいらない、何時もの雑談と同じ流れである。



「君達、能登辺りで厄介な“魔女”が現れたよ。どうにも[魔法省]との接触を避けているみたいでね、誰か様子を見てきてくれないか?」


「私が行きましょう。久し振りのツーリングに行ってきます」


「いってらー」


「てらー」



 “怪物”と戦うのが“魔法少女”なのだとしたら、“魔女”は何と戦っているのだろうか。同じく“怪物”か、それとも“魔法少女”か、己の自由の為に力を振るうのか、はたまた人間か。

 それに答えは無く、“魔女”の思想など考慮に値しない。何故なら、等しく人間社会の害悪なのだから。

 しかし、人に善悪があるように、悪人の美談があるように、“魔女”にも確固たる信念を持つ子も居る。

 [魔女会]のトップである【あの魔女】達、そしてそれに所属する“魔女”の多くはその信念を貫き通す為、大衆的な正義を捨てている。


 最近では、“怪物”vs[魔法省]vs[魔女会]vs野生の“魔女”、の構図が出来上がりつつある。この4つの勢力がそれぞれ敵対しているのは間違いない。問題は“怪物”と野生の“魔女”、無関係の一般人を巻き込む2つの勢力だ。更に悩むべきはその厄介な“魔女”と、比較的穏やかに活動する[魔女会]を識別することが出来ない所にある。


 依然“魔女”である事には変わりなく、ひとえに犯罪者予備軍として扱われるのは至極当然の事であろう。一々気にしている程の余裕など、今の[魔法省]には存在しない。が、東京の『蓮華協会』と北海道の『ブレイブシスターズ』は特例である。この2つの魔女組織は[魔法院]設立以前から活動しており、活動内容が現在の“魔法少女”と同様である。[魔法院]との合併を拒否し、“魔女”の部類に入れられてしまった組織だ。

 既に地域に根を張っている事、地元住民からの支持も厚い事、スポンサーの確保が出来ている事などの理由から、無理に[魔法院]と合併させるより自由にさせた方が良いと判断されている。


 何故この2つだけ許されているのか。とかは長くなるので別の機会にしよう。



「いつ頃に向えば良いんですか?」


「早いに越したことはない」


「なら明日の早朝に向かいます。一か二泊くらいしてくるのでご飯は用意しなくて大丈夫です」


「おっけー」




 こうした組織分けがされた中で、もっとも不明瞭なグループが[魔女会]である。まず第一に、見た目だけで[魔女会]かそうでないかの判断が出来ない事だ。暴れ散らかした“魔女”を捕えてみれば、自称[魔女会]だと言う者も多々いる。何せ確認の術がないのだからどうしようもない。


 ただ、何となくの目星は付けられている。例えば魔女の粛清や、“怪物”を先に倒していたりと、義賊じみた活動をする“魔女”が居る。そうした子を長く追っていれば、1度や2度は【あの伝説の魔女】のどれかと遭遇するものだ。偶然なのか狙っているのかは知らないが、確かに[魔女会]との関わりを匂わせる。


 はてさてどうでもいい話を切り捨てて、新しい“魔女”とやらの顔を拝んで来ようじゃないか。ツーリングなんて何年ぶりでしょうね〜、と話している千歳は最近納車されたバイクを走らせたいらしい。

 

 落ち着いた雰囲気で内向的な印象を与えやすい千歳だが、こう見てかなりのアウトドア派である。夏はサーフィンにダイビングやカヤック、冬にはスキーやスノーボードにアイススケート等、季節恒例のレジャーは欠かさない。さらに年中を通して、登山やキャンプ、ドライブを楽しんでいる。

 最近は自動二輪免許の再取得に成功しており、バイクにも手を伸ばし始めている。なお、面白そうだと言う理由で淀とはいるも免許取得に挑戦しており近々試験を受けてくる予定だ。


 はねる?

 この容姿だ、無理に決まっている。

 それに興味がない。免許や資格は必要なら取りに行くが、好き好んで増やす必要もないと考えている。どれだけ選択肢が有ったとしても、自分の体は1つしかないのだから。全然羨ましくも悔しくない、ないったらないのだ。



「目的地詳細は分かりますか?」


「ちょっと待ってなさい。ほら、送ったぞ」


 

 若く見られがちな“魔法少女”ではあるが、ぼちぼち年齢制限のある各種免許取得が可能になる子も増え始めた昨今。そろそろ自分等の移動手段を増やしても目立たないだろうとの判断で解禁したみたいだ。

 それまでは早乙女さんに送ってもらったり、はねるの魔法でショートカットをしたり。多いのは公共交通機関の使用だが、千歳は人の多い場所が嫌いだ。それに、確かに若いが少女と言うより女性と呼ぶ方が自然な容姿をしているし、車やバイクの運転をしていても不自然にはならないだろう。



「ふむ…あ、キャンプ場が近いですね。見てくださいイカですよイカ。ごちそうさまでした。荷物の準備してきます」



 ちょうど食べ終えた千歳は、さっさと自分の部屋へ行ってしまった。持っていく荷物を発掘するのだろう。多趣味かつ蒐集家の気がある彼女の部屋には物が多い、それでいて散らかっておらずきちんと整理されているのは素晴らしい。ただ奥に仕舞った物を取り出すのには手間がかかる。


 リビングで見送った2人が淀に視線を移す。



「淀。後で荷物を確認してあげなさい」


「淀さん、持ち物のチェックリストを作って渡してあげてよ」


「それくらい別に良いけどさ…ちーちゃんはそこまで馬鹿じゃないよ?」



 口を揃えての忘れ物チェック。そのあまりにもな評価に思わずフォローを入れる淀だったが、続けざまに飛んでくる日頃の行いに顔をしかめてしまう。


 

「買い物行くのに財布忘れる人だよ?」


「うっかりで本音と建前を間違える奴だが?」


「確かに、服の表裏に気付かないよね。ちーちゃんは詰めが甘いんだよなぁ…」



 思い返せば脳裏に浮かぶ、千歳のうっかりの数々。やるべきことはしっかりと出来るのたが、多少なり気が緩んでいるとすぐにうっかりミスを連発する。特にこうしたプライベートで、ミスしたところで大した迷惑にもならない様な事ではほぼ確実にうっかりミスをする。


 淀の言うとおり、千歳は詰めが甘い。

 そんな彼女が心配な2人だが、淀はあまり心配はしていない。ポンコツには激しく同意するが、その後の行動できちんと帳尻を合わせられているからである。そもそも、本人も多少失敗することを見越して事前に余裕を持った準備が出来ている。


 何より、彼女だって良い大人である。

 そんなに心配しなくても大丈夫だと信じている。


 その後しばらくして、千歳の荷物準備が落ち着くのを見計らい様子を見に行った淀は、小綺麗に纏められた荷物を見てバイクに積載するための道具が無い事を指摘した。

 千歳の買ったバイクには積載用の装備が付いていない。



「そうでした!ロープ買ってきます」



 家を飛び出して近所のホームセンターへ行ってしまった。

 何か用意していた気がして淀は、駐車場に停めてあるバイクの所までやって来た。



「あぁやっぱり、ちゃんと買ってあるじゃん」



 淀が発見したのは開封された段ボール箱。その中には忘れられていたバイク用のキャリア一式が、悲しげに収められていた。

 それを取り出して見比べる。おおよその目測ではあるが、特別な加工の必要もなく取り付けが可能だと判断した淀は、勝手に作業に取り掛かる。


 シートやカウル等の簡単に外せるパーツをどかし、手早くキャリアを装着させる。



「そ~いえば〜ドラレコもあったはず〜♪」



 工作が好きな淀は割とご機嫌である。途中でドライブレコーダーもあったことに気付き、千歳の部屋へ向う。

 何故そんなことを知っているのかと言えば、千歳とはねるの2人は買い物に淀を連れて行く事が多く、今回であれば千歳のバイク納車手続きから追加パーツの購入、ヘルメットやジャケット等装備品の選択全てに参加しているからだ。


 普段チャランポランで通している淀だが、物事への関心が広く様々な知識を持っている。しかも、それらを実現可能なアイデアにして具体的に提案することが出来る有能な人材でもある。本人のスペックも高いため、やらせれば大抵の事はそつなくこなす。決して日頃の行いが良いとは言えないけれど、困ったときに確実に頼りにできるのは、淀をおいて他にいない。


 頼めばやってくれるし、やれば出来る子。

 それが彼女達の共通認識である。


 千歳の部屋で勝手に収納を物色し、お目当てのドライブレコーダーを発掘した。勝手に開封して説明書を流し読み、これも勝手にバイクに取り付けてしまった。

 そして外したパーツを元に戻し、出した工具を片付ける。


 改めて見てみるが、キャリアの大きさの割に積載荷物の量も大きさも釣り合っていないと思う。本当にこれだけで良いのか、実際に確認したことが無い淀は少し不安になっていた。



「本当にこれで荷物が載るんかねぇ?」


「荷物が『載る』じゃないんですよ、気合で『載せる』んです。ライダーの常識ですよ。ただいま戻りました」


「そんな常識は聞いた事が無いねぇ、おかえり」



 ぬぅ…と背後に立つ千歳は大きな荷物を抱えている。ロープを買いに行ったのでは無かったのだろうか。

 どうやら、買い物の途中でキャリアの存在を思い出したらしい。ロープも買うが、同時に積載用のケースも買ってきたみたいだ。ただそれは専用品ではなく、ホームセンターに置いてあるようなコンテナBOXである。



「淀さん、これもお願いします」


「ん、付かんが?」



 そのケースを受け取って形状を見ると、固定出来る形状をしていない。このままでは付かないではないか、何か方法を考えなければ。



「底に穴を開けてボルトを通せば付きませんか?」


「ケースの強度が心配だね。バンドのシメラーとかで締め付けての固定じゃダメ?持ってるでしょ」


「蓋が開けにくいんですよ、それ」



 あーだこーだ言いながら、1時間も掛からずに取り受けを完了させた。見栄えは良くないが、今回だけの即席であれば充分だろう。クオリティに納得のいかない淀は、後日作り直すと心に誓った。なお使用する本人は、実用性のみを追求したこの見た目を気に入っているらしい。価値観の違いである。


 なんとか出発までに準備が完了し、次の日の早朝に千歳はツーリングに行ってしまった。“魔女”を探して接触することが目的だったはずなのだが、いつの間にか目的と手段が入れ替わっている。

 

 順調に走っているようで、道中の写真が時々送られてくる。はねるは出掛けてしまったし、はいるは仕事中。淀はその写真から現在地とルートを特定して遊んでいた。







「ふぅ~、これで一段落っと」


 

 時刻は昼過ぎ、千歳が出発してから7時間ほど経過したところで目的地のキャンプ場へ到着、テントの設営が終わったようだ。


 

「それにしても、まるで疲労を感じないとは人間モドキも悪くないですね」



 休憩を何度か挟んだとはいえ、長時間の運転をしている割に疲れていない。それなりに鍛えているが、そもそもの肉体性能に感心していた。これならこのまま往復したとしても楽勝だろう。


 大きなキャンプ用の荷物をテントに放り込むと、防犯用の鍵とブザーを仕掛けて軽くなったバイクに跨り再び走り出す。


 何故なら、“魔女”を探しに行かなければならないからだ。大丈夫、ちゃんと覚えている。


 ナビ代わりのタブレット端末に目撃地点を表示して、そこへ向う。どれも人口の多い土地から少し離れた場所が多い。

 人や人工物を攻撃する“怪物”は人口密集地によく出現するが、それが産まれるのは少し離れた人気のない場所が殆どである。性質上、心核コアが最初に生成されるのだが、その心核が最大の弱点であるため、生成中に破壊されるリスクを減らす事が目的だろう。

 この事から、“怪物”は街の外側からやって来る事が多く、必然的に都心から少し離れた場所での戦闘が多くなる。ただ、稀にその防御網を突破したり、上空や地下から現れる事がある。防御網を突破出来る強個体は勿論、上空や地下に適応した能力を持った“怪物”は一筋縄ではいかない事が多い。

 そういった場合に備えて、能力の高い“魔法少女”は都心部や人口密集地の真ん中に配置されている。


 そして今回探す“魔女”は、その人口密集地の外周を添うように目撃情報が寄せられている。その情報の中身も“怪物”との戦闘が多く、犯罪行為によるものでは無い。


 

「この辺りで良いでしょう」



 この情報通り“怪物”を倒すのが活動目的なのだとしたら、それはとても探しやすい。

 一面が砂利になっている開けた河原にやって来た千歳は焚き火を始め、ある程度火が強くなった所で使い捨てのガスボンベを焚き火に入れた。


 非常に危険な行為である。

 絶対に真似をしてはいけない。


 ガスボンベの温度がみるみる高くなり内部圧力が上昇、缶は膨らみに耐えきれず破裂して飛び出した可燃性ガスに引火。大きな爆発音と共に火柱を上げる。



「こほん、スゥ〜…キャァァァアアア!」



 大きく息を吸い込んで、悲鳴も上げておく。あとは目的の“魔女”がやって来るか、誰かが通報するか様子を見に来るまで待機だ。足りなければもう一度やる。大声を出してなかなかスッキリした。


 淀やはねるであれば自前の魔法で大音響を発生させることが出来るのだが、防御とカウンターに特化している千歳ことグーフアップでは不可能だ。仕方なくガスボンベを爆発させるといった危険な方法で大きな音を作っている。


 使えるものなら爆弾なりスタングレネードなりを使いたいのだが、日本では玩具みたいな物しか手に入らない。自作するのも考えたが、千歳は自ら進んで法律を破る事に抵抗があった。何を今更言っているのだろうか、と思わなくもない。

 2度、3度と追い悲鳴を上げていく。


 自分は何をやっているのだろう…と、だんだんと虚しくなってきた。爆発させるためにガスボンベを買うのには少しワクワクしていたが、いざ爆発させてみれば煩いし勿体ない。余らせているガスボンベに思いを馳せる。多分もうやらないだろう。


 手早く消火を済ませると、焦げた石を残して身を潜める。近場に誰か居たのなら、そろそろやって来てもいい頃合いだ。目当ての“魔女”なら兎も角、“魔法少女”や警察が来たら直ぐに逃げるつもりでいる。気分は忍者だ。

 

 どれくらい待っただろうか、1時間は経っていないはず。暇すぎて手持ちのタブレットPCで映画を鑑賞している。ふざけた低クオリティCGのサメ映画だ。何も面白くない物語は山場を迎えている。



 ――――ガサガサッ!



 と、明らかに自然では無い草木の揺れる音がする。これでもそれなりに気を張っていた千歳は気配を殺して様子を伺う。ちゃんと荷物は隠してある。やるべきことはキチンと出来る、そして今はやるべき時だ。



「悲鳴が聞こえたのはこの辺りのハズ」


「最近増えたわね」



 ハズレだ、“魔法少女”じゃねぇか。

 静かに逃げ出そうとしたが、千歳は思い直す。何故なら彼女は自分のやらかし具合に自覚がある。此処で動けば間違いなく音を立てるか躓くだろう、ならば今は動かない事が正解だ。



「そこの人、隠れてないで出てきなよ!」



 なんと!感の鋭いこと鋭いこと、白いスーツに金色のグローブを身に着けた男装の“魔法少女”が千歳が隠れている方向を指差して一喝した。その隣の秘書風な“魔法少女”もつられてそちらに目を向ける。


 素早く思考する。

 どうすべきか、何も知らない一般人を装うべきか。しかしこの場で一般人のなりきりは無理がある、なんでずっと隠れる必要があるのかと、言い訳ならいくらでも出来るが真実味に欠ける。

 ならば“魔法少女”を名乗るか。無理だそれこそ隠れる理由が無い。“魔女”ムーブをかますか。悩ましい所だ。ここに居る事がバレている以上、逃げ出せば要らぬ警戒をさせてしまうのは間違いない。そうなれば騒ぎは広がり、お目当ての“魔女”が出てこなくなる可能性が高くなる。


 千歳は、静かに変身して“魔法少女”達に姿を見せる事にした。

 


「レオ、貴女いつもそれやってるわね」


「だってカッコよくない?」


「よく気付き――えぇ…」


「「ホントにいた!?」」



 違ったらしい。ただの当てずっぽう、それどころか恒例のネタになっている様だ。

 それを知らないコイツは、見事なまでに出鼻を挫かれた。


 

「いいえ私は通りすがりの一般人。ではごきげんよう」


「それは無理があるでしょう!」



 少しずつ後退するグーフアップだが、秘書風な“魔法少女”のノリのいいツッコミが届いて足を止めた。

 暫しの静寂が3人を包み込む。全員が全員想定外の出来事だ、どうすべきかと考えている。


 真っ先に行動を開始したのはグーフアップ。思考速度もさることながら、非常事態を乗り越えてきた数が違うのだ。取り敢えず、今は逃げる!騒ぎが広がる?黙れ、もう既に走り出している。



「縁があればまた会いましょう」


「シルト!追うよ!」



 追いかけっこが始まった。

 大盾を背負い逃げ出したグーフアップは、美しい闇落ち風ドレスを揺らして走る。重量感のある装備の割に音もなく滑るように風を切っている。

 

 その後ろを追うのはビジネススーツをそのまま着ている様な装いの“魔法少女”だ、胸元にあるやや大きめな羽根のブローチが揺れている。時折リームレスのメガネの位置を直しながら走っている。



「取った!」



 上空から白い影。握りしめた金色のメタルグローブをグーフアップの脳天に叩き落とした。相手が“魔女”とはいえ無為に傷付ける趣味はないが、しばらく動けない程度には力を込めてある。

 グーフアップは体勢を崩し、そのままマウントを取られて大地に寝かされた。


 

「レオ!大丈夫?」


「ああ、この子は大丈夫じゃないかも知れないけどね」


「ご心配なく、頑丈さには定評がありますので」


「うあっととと」


 うつ伏せのまま片手を上げ返事をし、付いた土埃を払い落としながら立ち上がる。乗っかった白い“魔法少女”は転ばない様に乗せたままだ。


 グーフアップは逃げるのを辞めた。

 面倒臭くなった訳ではない。気付いた事があるのだ。



「さて、察しているとは思いますが…私は一般人です。完璧な無関係者ですね」


「嘘だ!」


「勿論、冗談ですよ」



 頭上からすかさず声が掛かった。今は肩車になっている“魔法少女”がポスポスと頭を小突いている。そんな中で穏やかに微笑む“魔女”は白い“魔法少女”を下ろして改めて2人に向き合う。

 それに対峙している白黒の2人は気が抜けてしまって仕方がない。その闇落ちしていそうな見た目の癖に優しさに溢れた柔らかい空気を纏い、静かに撫でる様な沁み入る声音を前にして毒気を抜かれてしまった。

 警戒などまるで意に介さず、柔らかく笑う“魔女”はみんなのお姉さんだ。



「お二人に聞きたいことがあるんですよ。最近、この辺りに出没する“魔女”についてなんですけど…何か知ってますか?」


「知っているさ。教えてはあげられないけどね」


「なるほどなるほど元同僚ですか。ふむ、仲違いといったところでしょうか、音楽性の違いって感じですね。ほぉ~ほぉ~、割と仲良しさんだったんですねぇ。な〜んで“魔法少女”辞めちゃったんでしょうねぇ?」



 【塔壁の魔女】グーフアップ、特技は読心手品メンタルマジック。勿論、種も仕掛けも存在している。

 何も調べていないとでも思ったか?

 そんな訳無いだろう、【あの伝説の魔女】達3人と[魔法院]トップは関係者である。そこに集まる情報は右から左へ、何なら精査されより鮮明になった情報が何1つ隠すことなくリークされるのだ。

 

 今探している“魔女”だって、よく調べてみれば元“魔法少女”ではないか。付近の地域を中心に活動していた、それなりに真面目な子である。ちなみに、本名も住所も割れているが、現在は行方不明となり捜索願いが出されているらしい。


 おやおや、彼女ら2人をよく見てみれば、当時の仲間達ではないか。こんなところに関係者、これはこれは良い巡り合せである、ちょっとお話を聞かせてくれないかな?



「あわわわわシルトォ…」


「レオ貴女…最悪と言っても良いリアクションだわ、百点よ。やってくれたわね」


「ごめんって、でもだってさ」



 そして始まった叱る叱られる2人の漫才を、これっぽっちも急いでいないグーフアップは暖かく見守っていた。

 ただし、敵前だ。ならばショートコントだ。


 しらを切っての捕縛を続けるのが難しいと判断した秘書風の“魔法少女”シルトは、いったん矛を収めて“魔女”に向き直る。


 あれ、この“魔女”見覚えがあるな、だいぶヤバい“魔女”と鉢合わせたな、と心臓をバクバクさせつつも冷静さは手放さない。

 “魔女”への警戒を緩めたりはしないが、どうも戦闘の意思は無いと見える。出来るだけ“魔女”との戦闘は避けたいものだ、対話で済むのならそれほど楽なことはない。この様子ならリスクもそう高くはないハズだと判断した。



「貴女は【塔壁の魔女】グーフアップで合っていますか?」


「はい。合っています。気軽にグーちゃんと呼んでも良いですよ」


「……貴女がここに来た目的はなんですか?」


「君達と同じですよ。まあ様子しだいでは、うちの[魔女会]に新規入会してもらおうかなと。どうです?一緒に来ます?」



 柔らかな見た目の割に、嘘や冗談の多いグーフアップの適当な戯言だったが、“魔法少女”2人の様子がおかしい。

 もっと秒でリアクションが返ってくると思っていた。目の前の2人は何故か言い争っていた。

 


「正直な所、それも悪くないかなと思ってる」


「はぁ!?レオあんた何言って――」



 おおっと、収めたはずの矛が再び顔を覗かせた。喧嘩と呼ぶほどの勢いは無いが、ただの言い合いにしては熱の籠もるレスバの火蓋が切られた。



「シルト、キミだってそうだろう。ミツバを見付けてどうするつもりだったんだい?」


「それは…」


「僕は、いや僕達はミツバと合流した後、多少無理矢理にでもキミを連れて3人で逃げるつもりでいる」



 むむっ!気になる言葉が流れ出した。

 そっと聞き耳立てるグーフアップは、気配を消して楽な姿勢に直す。完全に傍観を決め込むつもりだ。

 


「貴女達は何時も何時も、どうして何も相談してくれないのかしら?優しくて心の広い私じゃなければ手が出てるわよ」


「イタッ、痛い!蹴ってる、足出てる!」


「大方、私が何してたかを見たか聞いたんでしょ?」


「下衆共を、ぶっ潰す」



 一方で、“魔女”を置いてけぼりにしてヒートアップしていく2人。コメディチックなやり取りの中で、真剣な内容の話はまだ続く。



「気持ちは嬉しいんだけど、それをしたところで何かメリットでもあるわけ?」


「少なくとも僕達の気は晴れるし、シルトやシルトと同じ子の尊厳は守られる。賛同してくれた“魔法少女”は多い」


「それだけよね。根本的な解決にはならないわ。どうせ今回も、私達が自棄を起こしたとして内々に揉み消されるでしょうね」


「行動は残るさ。人の目には映るはずだ。記録は消せても記憶は消せないだろう?」



 ホステス風な白いスーツの“魔法少女”は得意げに語るが、それを聞いて頭を抱えるシンプルなビジネススーツ風の“魔法少女”。互いのリアクションが対極にあり、見ている分には非常に面白い。



「本当に、その気持ちは嬉しいのよ。タイミングとやり方が悪すぎるだけで…。あのね、私達だって何の対策も無く好き放題させてる訳じゃないのよ?言い逃れさせない証拠を揃えて、然るべき時に、然るべき場所で告発する準備を進めているの。貴女達にそれを伝えなかった…伝えられなかったが正解なのだけど、それを共有しなかったのは…はぁ、間違いなく失敗ね」


「シルト。それじゃあ誰かが被害にあってしまうだろ?」


「承知なんてしたくはないけど、みんな承知の上よ。悲劇のヒロインの言葉には、それなりに耳を傾けてくれるでしょう」


「それを、僕達に黙って見ていろって言いたいのかい?」


「上手く隠してたつもりだったのよ。貴女こそ、なんで今の今まで黙ってたのよ。相談くらいあっても良かったじゃない」


「君がそれを言うのかい!?」



 グーフアップは大凡の話の流れを把握した。後はこの2人がもう少し落ち着くのを待っている。ただ、まだ熱は冷めそうにない。むしろ、あちこちに飛び火してい延燃しているような気がしてならない。

 普段であれば仲裁に入っている。そうせずに居るのは、この場の3人以外の気配を感じたからだ。少し離れた位置に何かが居る事に気付いたグーフアップだったが、その何かが特定出来ないのだ。この“魔女”に、索敵能力は無いと言っても良い。念の為、いつでも攻撃を防げるようにだけ意識を傾けている。


 いい加減待ち惚けにも飽きてきた。盗まれて困る物は無いとはいえ、キャンプ場の置いてきた荷物も心配ではある。それにそろそろ、晩ごはん用の食材を買いに行きたい。喉も乾いてきた。そう言えばお昼ごはんもまだ食べていない。

 思考が脇道に逸れ始めたグーフアップは、まぁいいか、の精神で傍観者を続けることにした。


 

「止ーめんのかーい!」


「うぉっ!」


「ミツバ!?」



 モゾモゾしていたグーフアップが、動きを止めてまた座り込んだ時、大きな声が響き渡る。先程からこちらを伺う気配の主が、堪えきれなくなって声を上げたのだろう。


 薄紫のマントを翻して登場した、手品師よりも道化師が似合う格好の少女は静止した“魔法少女”達の間に入ってプリプリしている。大型犬にキレる小型犬みたいだ。

 


「レオニア!」


「なんだい?」


「脳ミソ空っぽなんだから黙ってて!そして、シルト!」


「何かしら?」


「めっ〜ちゃ心配したんだからね!」


「私もよ」


「そこの“魔女”!」


「私ですか?」


「面白いのは分かるけどさ、止めてよ!」


「それは無理です」


「なんでさ!?」



 キャンキャン吠える“魔法少女”は探し人。これは好都合だと、グーフアップの表情は変わらない。あいも変わらず、内面が読めない穏やかな笑みを浮かべたままだ。


 3人になった“魔法少女”達がお開きムードを醸し出し、グーフアップを見逃してあげようとか囁き合い始めたところで、ここからが目的になるグーフアップは手を叩いて注目を集めた。



「はいはーい!御三方、注目してください。貴女達にいくつか提案があるので、私の話を聞いてくださいな」



 さあ、元気出して活きましょう。

 グーフアップの戦いはこれからだ。基本的に[魔女会]は人が足りていない。手こそ集めたが、そもそもの人が足りていないのだ。増やせるチャンスは、確実に手にしたい。


 ここからは、新人勧誘の時間だ。



「んっん゛んー、新規入会キャンペーンの時間だぁぁ!わたくしグーフアップがパーソナリティを務めさせていただきます。ぜひぜひ御一考をお願い申し上げます」


「何事!?」

 

 

 \(≧▼≦)/

 こんな感じで喋りだしたグーフアップは、まだまだこんなものではない。伊達にハジケていない彼女は、喋りだすと止まらない。それが半ば巫山戯ていれば尚更止まらない。

 


「只今[魔女会]は新規会員を募集しております。会員になるには、推薦と勧誘の2通りのルートがあり、今回は勧誘になりますね。会員支援の内容に大きな差はありませんが、勧誘であればそれなりの優遇措置を取ることもやぶさかではありません。そうですね…貴女達の憂いを断つ為に一肌脱きましょうか。問題の支部を教えていただけますか?」


「それは…」


「まぁ知ってますけどね、少々お待ちを……もしもし?私です、件の“魔女”と接触しました。詳細は追って説明しますが、取り敢えず長野支部を洗って下さい。えぇ、それもお願いします。では頼みましたよ」


「あの、何して?」


「これは失礼。取り敢えず、貴女達の所属している支部の正常化を図りますので、その連絡をしてました。あと2〜3日で膿を出し切れると思いますよ」 



 事も無げにのたまう“魔女”に、ただ立ち尽くす3人は言葉を失っていた。一体何をしているのだろう。何処かへ電話したかと思えば、まるで自分達の問題が解決したかの様な態度を取っている。



「では改めまして、貴女達3人を[魔女会]にスカウトします。入会するしない関わらず、このまま帰るのは難しいのでしょう?支部の問題は対応しておきましたので、数日したら帰って確認しておいてくださいね。これはサービスです」


「わ、わかったよ」


「それで話は戻しますが、[魔女会]に入りませんか?貴女達ほどの実力なら、支援があれば[魔法省]に拘る必要もないでしょう。今なら望む地区へ拠点を用意しましょう。今まで通りとは行きませんが、普通に日常生活を送ることができるだけの補償もいたします。勿論、家具家電は最新の物です。拠点の外観は兎も角、快適な生活環境を整えましょう。さらに!今なら[魔女会]専用回線と端末も用意しましょう。上位のアクセス権限を持つ特別仕様ですよ。出来る優遇措置は可能な限り取りましょう!どうですか、お得ですよ! 君も、“魔女”にならないか?」 



 怪しげな壺やら良く切れそうな包丁を売り込みそうな文句に、鬼の誘いを思わせる仕草で話す彼女の口車が温まってきた。

 楽しくなってきたぞ、スゴイ異物を見る目を向けられているのだって気にしない。だって今更だもの。



「さあさあ今ならまだまだ特典付きですよ。選べる特典はティッシュペーパーからヘリコプターまで、なんだってありますよ。楽○もP○yP○yもWA○Nポイントはありませんが、[魔女会]で使えるポイントも付けちゃいましょう!新生活応援ということで、なんと!1人10万pポイントずつ差し上げましょう!あ、1p=1円で使えますよ。端末にインストールされているカタログアプリから注文出来ますから、入会した際には是非使って見てくださいね」


「いくつか聞きたいんだけど良いかしら?」


「答えられるものなら、何だって答えますよ。ちなみに、ポイントはMP魔女ポイントって呼ばれてます」


「それは聞いてないわ」



 結構聞く気になっている“魔法少女”達の質問に答える事にする。不安を残したままの契約なんて不幸にしかならないからね、キチンと聞いて確り答えなければ。


 冷静に考えれば訳の分からない事が多すぎる。主にシルトが質問し、ミツバが考え、レオニアは目を瞑っている。


 

「ふぅ、こんな所かしらね。あんた達はまだ聞いとく事ある?」


「フッ…僕の集中力はもう切れてるのさ…」


「わたしはもう帰れないからなぁ」


「では1週間後、長野駅で待っています。入会の意思があれば来てください。ミツバさんはどうしますか?」



 その場の全員に目線を向けられた薄紫の道化師風“魔法少女”…ではなく元“魔法少女”のミツバ。しばし考え込むと、真剣な表情でグーフアップに歩み寄る。

 この子はもう、引き返すことが出来ない場所まで来てしまっている。大きな犯罪行為をしていないのだから大丈夫、とは言えないのが“魔法少女”の厳しい所である。

 

 どれだけの事情があろうと、決まりは決まり。守らなければ意味が無い。“魔法少女”は信用が無ければ活動は難しい。現存の重火器設備を凌ぐ火力を個人で扱い、見た目には何も変わらない小回りと隠密性を持っているのだから警戒されて当然である。そんな危険人物を安全だと保証しているのが他でもない[魔法院]であり、正規に雇い身元を担保しているのが国立防衛機関の[外敵対策課]である。

 この2つの組織を纏めて[魔法省]と呼び、ここに所属することで、一般に呼ばれる“魔法少女”としての活動が許可されるのだ。無免許の自動車が公道を走ってはいけないのと同じだ。危険なモノにはルールを設け、それを守らなければ使えないようにされている。


 それらを無視して活動するのが“魔女”であり、それは積み上げた“魔法少女”の信用を崩しかねない存在なのだ。魔法の暴虐が無関係な一般人に向けられてはいけないのは当然だが、活動する“魔法少女”の信用を守るためにも“魔女”の存在は許してはいけないのである。


 それらを理解しているからこそ、一度ルールを破ったミツバは帰還を望まない。


 

「わたしに選択肢なんて無いわけで、良ければ今から連れて行ってくれないかな?」 


「私は今日キャンプに来てるんですが、迎えを呼びましょうか?」


「え、じゃあお願いしてもいい?」


「了解です」



 これにて一度解散となり、白スーツのレオニアと黒スーツのシルトは拠点へ戻る。後ろ姿を見送った“魔女”と元“魔法少女”は、あの2人にはまだ話せない今後の話の続きを始める。

 現時点で[魔女会]に新規入会が決まったのは、このミツバだけである。


 

「さてとミツバさん。[魔女会]へようこそ、歓迎しますよ」


「そう、ありがと。で、何をすれば良いの?わたしに用があって来たんでしょ」


「話が早くて助かります。貴女に任せたいのは野良の“魔女”への粛清ですね、最近“魔女”が増えてきたのは知っていますよね。流石に手が足りなくなってきたんです」


「…ふーん、わたし達が“魔女”担当だってのも調べてあるんだ。良いよ、やってあげるよ」



 事前調査が完璧なグーフアップに、隠すことなく表情を引きつらせるミツバだが、深く考えるのを辞めたのか大きく息を吐くと顔を上げる。

 元々覚悟は決まっていた。同様に逃げ出した元“魔法少女”を集めて、小さな組織を組もうかと思っていたくらいだ。最悪は本当に“魔女”として活動することだって視野に入れていた。保険が無い訳でもないが、限界ギリギリの綱渡りの真っ最中だったのだ。

 この現状、渡りに船と言っても過言ではない。

 


「ありがとうございます。詳細は…あの2人が決断してからにしましょう。それまではゆっくりと身体を休めて下さい。野宿ばかりで、疲れも取れていないでしょう」


「うん、ホントに助かるよ。ところでさ……――」



 ミツバは言い淀む。グーフアップの持ってきた勧誘も、それに付随する特典も、どれも今自分達が欲しいモノばかり。本当か、出来るかどうかは分からないがこうなった原因の排除にも動いてもらっている。

 


「貴女達と同じ様な境遇の“魔法少女”の保護、ですよね。[魔女会]は“魔法少女”の為の組織ですから、貴方達に声を掛けたのもその一環ですよ」


「う、あっありがとう…ございます…」



 まさに追加して頼みたかった内容を、呆気らかんと言うグーフアップは、愛おしそうにミツバを抱き締めて頭を撫でる。有り難いやら申し訳無いやら、今まで見ないふりをしていた不安に張り詰めていた緊張が解されてしまったミツバは、声を押し殺して涙を流していた。


 撫で続けていたグーフアップの水面の様な瞳が、怒りに揺れていた事をミツバは知らない。


 落ち着いたミツバは、ばつが悪そうに目を伏せている。他人の、しかも今日初対面の相手の腕の中で号泣してしまうとは、今度は羞恥に頬を染めていた。

 


「ミツバさん。そろそろ迎えが来ますよ」



 そう言って上空を見上げるグーフアップにつられて目線の先を追えば、水色の人影が迫るくる。

 

 

「あ、ちょっ!」


「ナイスキャッチ!迎えにきたよ」



 今日はよく女の子が降ってくる。危な気無く小柄な少女をキャッチしたグーフアップは、ミツバにその子を紹介する。



「ミツバさん。この子は私と同じ[魔女会]のメンバーの、クライペイントさんです。【色飾の魔女】といえば聞き覚えがあるでしょう、今日はこの子の案内に従って下さい。クライさん、ミツバさんをお願いしますね」


「やぁどうも、ボクが【色飾の魔女】クライペイントだよ。なんにも聞かされてないけど、取り敢えずボク達の拠点へ行こうか。グーさん、それで良いかい?」


「ええ、疲れているでしょうから、ゆっくり休ませてあげて下さい」


「おっけー」



 その場で黄色の円を描いたクライペイントは、ミツバが何か言うよりも速く手を取った。



「私は予定通り、キャンプとツーリングを楽しでから帰りますね」


「りょーかーい。楽しんでおいでね」


「えっ?あの、どうゆう?」



 困惑したままのミツバを引っ張って、クライペイントと共に黄色の円を潜って姿を消した。

 あの家に居るであろう面子なら、悪い様にならないだろう。


 それはそれ、これはこれ。


 グーフアップは変身を解いて歩き出す。お昼は完全に食べ逃した、少し早いが晩ごはんの支度をしよう。

 支部も“魔法少女”も気になるが、今はキャンツーに来ているのだから楽しまなくては。食材を買い込み、近くの温泉に入ってリフレッシュした千歳は、そのまま2泊してから帰ったらしい。



 







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