第83話 ある解説者の視点
「さあ、やってまいりました! 本日のメインイベント、スーパー・サモン・シスターズ vs SMCオールスターズのエキシビションマッチです!」
コロッセオをぐるり取り囲んだ観客から歓声が上がる。
「本日の実況はわたくし茶々丸、解説は日本サモナーズ協会の理事を務め、あのランダムダンジョンのオーナーでもある八乙女さんにお願いしております!」
「八乙女です。よろしくお願いします」
打ち合わせ通りのタイミングで話を振られ、そっけなく返す。会場のテンションにちょっとついていけないわ。この依頼、受けるべきではなかったかしら。
「今回のエキシビションマッチはライブ配信しております! 随時コメントも確認していきますので、皆さんよろしくお願いします!!」
コメント:うおおおお!!始まるー!!
コメント:キタ──!!
コメント:めちゃくちゃ楽しみ
コメント:八乙女さん、美人!!
コメント:茶々丸ってゲーム実況の人?
コメント:そうだよ
凄い数のコメントが勢いよく流れていく。サモナーズ・フィールドがお金をかけて宣伝した効果ね。
「では早速、選手の入場です! 先ずは、SMCオールスターズの3人です!」
会場の照明が落ち、ある一角に光が集まる。そして派手な音楽と共に青色のカラースモークが焚かれ、その中から人の姿が浮かび上がった。鮒田、段田娘、そして水野君。
「なんとふてぶてしい! 鮒田選手が会場の全てを敵に回すかのように周囲を威嚇します!!」
コメント:鮒田www
コメント:態度悪すぎで草
コメント:鮒田ヒール似合いすぎ。本人もオークだし
コメント:ナンナちゃんかわいいー!!
コメント:ナンナちゃん、緊張してる
コメント:M氏は落ち着いてるな。流石だ
コメント:水野氏は歴戦だから
「続いては、スーパー・サモン・シスターズの3人の入場です!!」
大歓声に迎えられ、ピンクのカラースモークの中から現れる女の子達。サイバーパンクなファッションに身を包み、妖しい美貌を振り撒く。一番背の高い子──ヘム?──がカメラに向かって首を掻き切るジェスチャーをすると、ひと際大きな声が上がった。下品な子ね。
コメント:ヘムwww
コメント:鮒田に対抗してんなーヘムwww
コメント:ヘムちゃん、いい!!
コメント:maーをアップで映して!!
コメント:maーちゃん、大きい……
コメント:凛ちゃん最高!!
コメント:凛ちゃんクール
「今回のエキシビションマッチですが、通常の対戦とは大きく異なります! 相手を倒すのではなく、ポイントを奪い合うのが試合のコンセプトです! 皆さん、コロッセオを見てください!! 森林をイメージした横長なコロッセオ。その両端には魔石が輝く石碑が見えるとおもいます。相手陣地の石碑から魔石をゲットすれば100ポイント。また、各召喚モンスターの首にも魔石のついたネックレスをつけてもらいます。そのネックレスを奪ったら50ポイントゲットです。奪われた側は退場となります」
「つまり合計250ポイントを奪い合い、試合終了時により多くポイントを稼いだ方が勝者になるということですね」
「八乙女さんのご説明の通りです! 制限時間は20分! 一体どのような戦いになるのでしょうか? 各選手、召喚モンスターを召喚します!!」
2メートルを超える横長なコロッセオを二つの陣地にわけ、石碑を中心にプロジェクターから魔法陣が映し出される。そして、召喚されたモンスター達が魔法陣を目掛けて召喚者の手から飛び降りた。会場のモニターには召喚モンスター達がアップで大写しにされている。
コメント:おおお、オルトロスだ!!かっけー!!
コメント:武蔵、ふてぶてしい……。まんま鮒田じゃん
コメント:あれ、今回は武器なし?
コメント:だね。武器禁止。
コメント:ゴジロウだ!!
コメント:最速!ゴジロウ!!
コメント:うほーヴァンプCOOL!!!!
コメント:ヴァンパイアレディだー!!羨ましい!!
コメント:ラミア、眼が怖い……
コメント:こえええ
コメント:ハーピー、胸でか!!
コメント:ラミアもそこそこデカいがハーピーには負ける
コメント:ヴァンプ、胸小さくて蚊帳の外
「皆さんお気付きの通り、今回は武器の使用が禁止となっております! 八乙女さん。これはどのような意図があるのでしょう?」
「今回のエキシビションマッチはモンスターの特性を前面に押し出すことが目的だと聞いています。単純に強い弱いではなく、召喚者とモンスターがその特徴を生かしてポイントを奪い合う。今までにない戦いの提案。私はそう捉えています」
「なるほど。召喚モンスターに対する評価が変わる一戦になるかもしれませんね。さあ、コロッセオに注目していきましょう! 各モンスターの首に魔石のついたネックレスが掛けられます! 自分の魔石を守るのか!? 積極的に相手の石碑の魔石を奪いに行くのか!? 間もなく試合開始です!!」
実況がそう言うと、立会人がコロッセオの近くに現れた。そして、モンスター達を様子を確認して合図を出す。カンッ! と乾いたゴングの音で、エキシビションマッチの火蓋が切られた。
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